忍者さん忍者さん




お礼を言わないといけないなぁ。うーん、と私はこないだ降ってきた分厚い布を見つめながら、ソファーの上で首を傾げた。

さて、どうやってお礼を言えばいいのだろう。命を助けていただきありがとうございました……と言うヘビーな内容を頭の中で述べて、ンンー、と考えてみる。そうだ贈り物だ、プレゼントだ。それを渡すというものはどうだろう。いやしかし、どうやって渡せばいいのだろうか。最初の難関でつまずいてしまった。そして何を渡せばいいのだろう。


うーん、うーん、うーん、と唸り、最終的に私は竹巳の力を借りることにしたのだ。


私は勝手に忍者のことを男の人だと思っていた。女の人だったらくのいちだよね。お母さんは「忍者は近くにいるのよ」なんて言っていたから、頭の中ですりこまれてしまっていたのかもしれない。同じ性別の竹巳の方が、よく分かるかもしれない。そんなことを思いながら、私は私の部屋でごろりと座布団に頭を乗せて、半分眠っているように目をつむっている竹巳に声をかけてみた。

「竹巳竹巳、男の人ってどんなプレゼントが欲しいのかな」

とりあえず端的に聞きたいことを述べてみたのだけれど、竹巳はつむっていた目をじわじわとゆっくり開けて、私をじっと細い目で見たと思うと、ポリポリと頭をひっかき、「…………ハ?」「だからね、どんなのが欲しいかなーって」「意味がわからない」

それだけ言って、瞼を閉じた。「だ、だからさー」と竹巳のお腹にのっかるように手を乗せてゆさゆさしていると、「ちょっとやめなよ」と多少怒ったような声で私の手をどけた。何が意味が分からないんだろう。すごく分かりやすいんじゃないかなぁ、と思い、もう一回同じ台詞を繰り返してみた。
「だからね、男の人にねプレゼントあげたいんだけど、何が欲しいかなって」

とりあえず、思いつく限りの修飾語をつけてみたのだけれど、これで通じるだろうか。
竹巳は瞳を開けて、しばらく天井を見つめていたかと思うと、ゆっくりと上半身を起こしてこっちを見た。そして僅かに眉をひそめながら聞いてくる。

「え? なに、好きな人にでもあげるの」
「うん。そうかなぁ」

まぁそんな感じだ。

竹巳はちょっとだけ驚いた顔をした。これはちょっと珍しい顔だ。そうした後、「まあも女の子だしね」と自分自身納得するように頷く。「当たり前だよ、ずっと女の子だよ」と憤慨してみせると、「はいはい」と竹巳は頷いた。素直に認めるとはいいことじゃないか、と私は勝ち誇ったような気持ちになってからしばらくして、あれ、これ流されたのかな、と気づいた。おお、流された。

「竹巳! もっと! 誠意をこめて謝ってください!」
「はいはいすみません。それで? 誰? うちのクラス?」
「んん?」
の好きな人」

えー、と私はうんうん頭を揺らす。「ああうちのクラスじゃないの」とその私の反応を見て竹巳は納得したらしい。そうした後で、「じゃあ隣のクラス?」「んー?」「学年が違う?」「んんー?」「俺が知らない奴? でも俺、の知り合いは大抵知ってる気がするんだけど」「ん、ん、んー?」

うんうん私は首を振っているだけなもんだから、竹巳は興味を失せたらしく、いそいそと座布団に頭を乗せ始める。これは放置モードである。

「竹巳ちょっと、相手してください、竹巳さんちょっと」
「うるさい」
「たーくーみぃー」
って基本的に言語機能低いよね。うるさいから」
「竹巳がちょっと小難しく生きてるんだよ。若いうちからそんなんじゃおじいちゃんになる頃には、超おじいちゃんになってるよ」
「わかった、次から国語の授業は真面目に受けようか。ちょっと教科書出せ、日本語を正しく理解しようね。超おじいちゃんってなんだよ」
「おじいちゃんより強い感じかな」
「まさにグレートおじいちゃんだね」
「だね」
「よく分からないのに相槌を打つ癖はやめなさい」

怒られた。

まあそれはいいのである。どう言えば竹巳に正しく伝わるのかな、と私はじっくりと考えてみることにした。竹巳は私の思考が人よりもスローテンポなことを理解してくれているので、そういうときは黙って待っていてくれる。どれくらい経ったのか分からないけれど、よし、といい感じに一言でまとめることができる台詞を思いついた。


「私ね、忍者さんが好きなんだ」







  


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