幻水3×ペンギン*3を未プレイな人にはやさしくない内容です。第一話的な。 *運命の継承者を読んでたら書きたくなった。 「ぶっちゃけ、ありえねぇと思うんだが」 もごもご、と口の中にはいっぱいにサンドイッチを詰め込んだ少年の向かい側には、赤ハチマキの青年がいた。肩口までの茶髪をゆらして、眉をひそめる少年とは反対に、これまた楽しげな顔である。まあ基本、彼の常はこれである。 「まあまあアルド。人間誰しも間違いを犯すものだからね」 悪びれのない言葉だ。 最初はひたすら頭を下げた。次に笑いとばそうとして、何をしても無駄と気づくと、とうとう開き直りはじめた。これが店の中ではなく外であったのなら肘の一つも入れてやりたいところだったが、残念ながら今は食事中だ。ハチマキの男 思わず長い溜息がでた。 そもそも、こいつ一人にまかせておいたのが間違いだったのだ。船の手配はまかせておけ。アルドはバッチリ食料やらなんやらを確保しておいてくれよ。そう指を立てるの言葉は、若干不安を感じたものの、年若い外見からは思いもよらず、案外旅慣れをしていることは、出会ってからの一年で、すでに嫌というほど知っている。 だったらまあ、下手に自分が首をつっこむよりもいいだろうと、それならまかせたとアルドは片手を振って商店へと出かけた。ある意味、彼も浮かれていたのだ。 船に乗って、大陸を横断する経験など、生まれてこのかた13年間、一度もない。彼の“奇妙な謂れを持つ”彼の両親達とともに、アルドは小さな体で長くを旅したし、家出少年となった現在も、この男、と出会い、多く大陸を歩いたが、海を見たのは初めてだ。いや正確にいうと、現実に、しっかりとこの目で見たのは初めてだった。不本意ながらも、空が映り込んだような大海原や、カゴメの声や、塩の匂いに興奮していた。 だからこそ、これだと乗り込んだ船の行き先の確認を怠ってしまった。海の上でこれはおかしいと気づいた所で、ときすでに遅し。目的の群島諸国とは反対側に進む船の上で、ただアルドは呆然として、初めての航海を終えた。ちなみには、こんなこともあるのかと腹を抱えて爆笑していた。すでに一度ぶん殴った。 「傭兵稼業で金は稼いだし、しばらくキナ臭い場所からは遠ざかりたかったってのに……」 気がついたらグラスランドだ。ここ、ビネ・デル・ゼクセの街は悪くはないが、意図せぬ無賃乗船のおかげで船長にはこっびどく目玉をくらい、乗りの料金を払わされて、財布の中身はすっかりすっからかんだ。 「ついでにハルモニアからもちけーしよ。でかい国が目と鼻の先だなんて、侵略してくれって言ってるようなもんじゃねぇか」 「まあまあ。そこらへんは大丈夫だ」 あっけらかんとした声を出す曰く、『案外、人間何があっても生きていける』 なけなしの金で最後のパーティーと食事をいそしむ男は、中々いうことが違う。「さっきちょっと街の人にきいてみたよ。ここ、グラスランドじゃしばらくゼクセンと少数民族が争ってたみたいだけど、そろそろ休戦協定が結ばれるかも、って噂みたいだよ」 だからそういう心配はナシナシ、と嬉しげに片手を振ったとき、となりで見知らぬ男二人が席についた。 「なあ知ってるか? カラヤと騎士団の噂」 「ああ、きいたぞ。騎士団があの蛮族の村を焼き払ったんだろ?」 「そうそう。こりゃ休戦協定なんて話じゃないね」 もごもごもご。 アルドが無言で、頬の中でパンを咀嚼する音がする。 は口元をひくつかせた。ゲホン、と咳をひとつついて、仕切り直しとばかりに居住まいを正す。 「まあ、こういうこともあるよね。時勢は常に変わるものだし。でもまあ、ハルモニアに関しては大丈夫。グラスランドにはその昔、炎の英雄って呼ばれる男がいてね。その男はこのグラスランドの大地を守り、ハルモニアとの間で50年の不可侵条約を結んだ。つまりここ、グラスランドは隣国からの脅威には怯えることはない、唯一の国家っていうわけで 「あの不可侵条約も、今年で終了なんだろ?」 「はてさて、これからどうなるのやら」 男二人はため息をついて食事をオーダーする。は得意の弁舌をふるポーズのまま、瞳をつむった。そうして静かにテーブルに手を置いた。「…………これから、どうしようか?」「人間、なにがあっても生きていけるんだろ」 とりあえず明日からは職探しだな、と堅実に呟く13歳の少年に、おー、と力なくは片手をつきだした。 人間、どこでなりとて、生きていけるものである。
|