完結後
子……ペンギンさん?

*萌えキャラ(略)アンケより>夢主or相手が幼くなる
*テッドと言ってらっしゃる方も多かったので
*坊ちゃんのキャラが本気で崩れてます




(932 年齢差を超えた付き合い)


朝起きると、が小さくなっていた。





いや小さくって、つまりどういうことよ、そういうことよ、嘘だろ、いやねーだろ、ありえねーだろ、とと俺は真顔になって彼女を見つめた。服がないものだから、ぶかぶかの袖を何回もおって、トレードマーク(?)の眼鏡は今はない。特に問題もないようだ。

彼女はぼんやりと椅子に座って、俺達を見ながらこくこくと首をかしげていた。左に傾げて、今度は右に。振り子時計か。パタパタ、と足を振って、またピタリと止まってこくこく。「……ちょっとテッドどうするよ、正直俺、ちっちゃい子の扱いってよくわかんないんだけど」「俺だってそうだっつの、こういうときに限ってグレミオさんはいねーしなぁ……」 お隣の村に、買い出しに行ってきますねー、と数日前に消えたほっぺにばってん十字架の彼が懐かしい。

そもそも、彼女はなんだろうか。いや、なんだろう。右手には黒く薄い死神がくっついているし、顔だって、きっと彼女が小さくなればこんなものだろうという感じだ。と俺達は、別の部屋をとっている訳だけれど、いつまで経っても起きてこない彼女の部屋をノックすると、ぼんやり顔の女の子が、こっちを見て、そわそわと外を見て、最後に俺の顔を見て、はてなマークを顔いっぱいに埋め尽くしていた。

こっちだって思いっきり混乱したのだけれど、とにかく一大事だと「ちょ、お、お前、ちょっと待っとけよ!」と(仮)に言い残して、ばびゅんと部屋を飛び出し、眠気眼なお坊ちゃんを連れてここまでやって来た。


知らない男二人に囲まれて、泣きもせずにぼんやり顔の彼女にはありがたいが、反対に会話も膨らまない。「お、おい……なあ、どういうことだよ、お前これどういうことかわかるかよ」「うーん、そうだなぁ」 彼女を前に、こそこそ内緒話をするようにして、は俺の耳元へ、これは憶測だけど、と前置きする。

「ほら、星辰剣の祠でさ、幼い頃のきみに出会ったことがあるだろう? あれはつまり……星辰剣の力ということもあったんだろうが、紋章同士が引っ張り合ったんだろう。今現在、俺達は紋章が3つある訳で、常に共鳴し合っている状況だ。何があるかだなんて誰にもわからない。俺達の誰かが体だけ過去に飛ばされてしまって、子どもになってしまうということも、あるかもしれないしないかもしれない」
「つまりまとめると」
「まったく意味がわからない」

お前最初からそう言えよ、と思いっきり相棒の触覚を引っ張ってしまいたい思いにかられたのだが、グッと我慢して、そもそも、ともう一度に話しかけた。「……で、間違いないんだよな?」 ソウルイーターがある、ということはたしかに違いないが、それでもやっぱりと思ってしまう。うーん、とは首を傾げた後、「百聞は一見に如かず」と頷き、「やっ、はじめまして。君のお名前はなにかなー?」

こいつ子どもの扱いはわからんと言いながら、案外手馴れてやがる。
ニコッと笑いながら、テーブル越しの(?)に体を乗り出し、好青年ぶった微笑を浮かべた。(?)は眉をハの字にして、また首を傾げた。そしてふにふにと小さな自分の手をいじりながら、ちらり、とこっちを見る。「…………わたし、?」 語尾にはてながついてるし。

「…………おい、疑問形で名乗ってるぞ、どっちなんだ」
「いや俺達に警戒してるだけかもしれないよ」
「まじか。どうしたらいいんだ、おいまじか」
「とにかく朗らかに、フレンドリーに。テッドちょっとその難しい顔やめて、にこっと」
「こうか。こうか」
「もっと本気を出して。体中からの邪念を全て吐き出して」
「もともともってねーよ」

こしょこしょ二人で作戦会議をして、またに向き直る。先陣を切るようにして、は相変わらずにこにこ笑ったまま、「えーっと、ちゃん? 俺はだよ、こっちは」「テッド」 は、んー、と考えるような顔をして、ちら、とを見た。「」 うん、とが頷く。「てっと」「う、うん?」 あれちょっと言えてなくね? と組んだ肘をガクッと崩したのだけれど、「つっこんじゃ駄目だ、駄目だからね」とに首を振られた。「、てっと」「いやだから、テッ」「そうだよ、この人テットくんだからね!」

大正解さ、ちゃん! とババッと俺の前に手を広げたを見て、はちょっとだけ満足そうに笑った。むふ、と言うように、小さな鼻から自慢気に息を吐き出している。なんだかちょっと可愛いけれども。「それで、ちゃんはいくつなのかなー?」 おそらく慣れてきたらしいに、にこにことは問いかけると、はビシリと指を三本つきだした。三歳らしい。

「そっかー……三歳かー……三歳かー……テッドは何歳?」
「おい今のタイミングで悲しくなるような問い掛けするな」
だいたい297歳差である。




(555 さめざめ)



結局なんにせよ、飯という話になった。腹が減っては戦ができない。まさかどこからか誘拐してきたのではないかと宿屋の女将に怪しまれる前に、と食事は部屋でとることになった。ガキのおもりなんざしたことねーぞ、とあわあわする大人(?)達を前にして、は黙々と御行儀よくパンをかじっていた。ホッとする反面、ひどく静かで見ていて怖い。「なあ、ってちっさいころは、結構無口だったのかね」とに問いかけると、「緊張してるだけじゃない?」と言われた。そうなんだろうか。

まあとにかく、と飯が食い終わったは、坊ちゃんらしくもなくぺろりと指先を舐めてとてとてとに近づいた。は微妙に警戒した顔をして、彼女に近づくに身構えた。「ほらほら、大丈夫だからねー、ちゃん。どうせソウルイーターが共鳴してこんなことになったんだから、また共鳴させれば……」と言って、の手を取った瞬間、彼女は火がついたように泣き出した。あー! あー! あー! と両手をパタパタさせて、ばしばしの顔をひっぱたいた後、とてとて逃げるように俺の背中に回って、てっとくんてっとくん、と思いっきりこっちの足にすがりつく。

いやてっとじゃねーし。テッドだし、と突っ込んでいる間に、ういー、ういいいー、と人間なのかそうじゃないのかわからない声を出してわんわん泣くの前にしゃがみ込んで、「おいおい鼻水出てんぞ」と布で顔をふいてやった。ひー、と言いながら俺の首元にくっついたお子様の背中をぽんぽん、と叩いて、ついでによっこらしょ、と持ち上げる。重いと言えば重いが、持てない重さという訳じゃない。

はがしっと俺につかまって、が近づく度に気配を察するのか、いやいやと首を振って泣いた。俺がそそくさとから離れれば、ぴたりと泣きやんで、また静かに俺の首元にぶつかった。ふらふらとゾンビのようにこっちに手を向けてが近づく。また泣いたので、部屋の端に移動した。

「ちょ、ちょ、テッドくん、こ、これ、は……」
「やー!!! やー!!! やあああー!!!!」
「おい、お前が話すと泣くぞ」

ほらほら、泣き止めって、とずり下がるを片足で持ち上げて、ぽんぽんと頭を撫でるとぐしぐし鼻をすする音がするが、グッと我慢をしたらしい。はいはい、偉いな、と背中を叩くと「ん」とは返事をしながら、ぐりぐりと俺の首元に顔を押し付けた。「え、ちょ、あの、理解できないんですけど……」 あの、どういうことですか、これは、と俺とは反対の部屋の端の壁にガゴンと頭をぶつけるは珍しく焦りながらもう一回ふらふらとこっちに近づいて来ようとする。

「いや来んな。お前はこっちに来んな。泣くだろうが」
「え? なんで? なんでテッドはよくて俺が駄目なの? うそなんで?」
「お前の胡散臭さを感じてるんだろ。だから来んな」
「いや困るし、ほら共鳴させないと、ちゃん元に戻んないし。なにこれちょっと、俺こんな扱い受けたこと、生まれてこの方初めてなんですけど」
「あー!! あー!!!」
「ほらお前、また泣いたじゃねーか!!! の視界に映んな!!!」
「なにこれ存在すら許してくれないレベルの否定!?」




(68 どこから来るんだその自信)



妹が小さくなった。
いや、妹っていうか、妹のようなものっていうか、そういう設定っていうか、まあとにかく。



「ほら、ピーマン食えピーマン。大人んときは、ちゃんと食べてただろうが」
「やー。にがいい。あんまり、おいしくないい」
「なんだこのおこちゃま舌が。いい子だから食えっての。わがまま言うんじゃねーよ」

はい口開けてなー、とテッドがだるそうな声を出して、ういいいー、と嫌そうな声を出しながらスプーンを口にふくませ、もぐもぐ美味しくご飯を頂いているお子様とおじいちゃん(中身)を目の端に、俺はベッドの上で体育座りをして、ふう、と窓の外を見つめた。なにこれやばい。悲しすぎる。

とにかくソウルイーターで共鳴しなければいけないというのに、俺が近づけば彼女は泣くし、発動させようものなら、手もつけられない。周りの部屋に聞かれてしまうと慌てて発動を解くこと数回。完璧に嫌われた。なんでだ。

別に、口を塞ぐでもして無理やり発動してしまえば、おそらく問題はないのだろうが、さすがにちょっとそこまで犯罪くさいことはしたくない。ちゃんが嫌がることは俺も嫌だし。
それにしても、なぜだかテッドにはなついているのは、自分の未来の彼氏だとうっすらと理解してるんだろか。いやちがうか。テッドの名前を未だに勘違いしてるっぽいし。だったらお兄ちゃんにだってなついてくれてもいいはずだし。

ちっちゃい子の扱いはよくわからない、と言ったものの、膝の間に彼女をのせて、二人仲良くご飯を食べている姿を見ると、ぶっちゃけ羨ましい。羨ましくてたまらない。テッドのやつ、めんどくさげな顔をして、絶対内心喜んでやがる。ギリギリ、と思わず奥歯を噛み締めた。この年になって、まさかこんな屈辱を味わおうとは。

「…………ちゃーん、お兄ちゃん、ちょっと宿屋の人からお人形をもらってきたんだけど……」

ちょっと親戚の子を預かることになったんでー、でもなんだか嫌われてるみたいでー、と適当にごまかして、あらまあ可哀想に、それじゃあこれとかどうかしらー、うちの娘のお古なのよー、なんていいながら渡された兎の人形を、そーっと差し出してみた。けれども瞬間、彼女はガバリとテッドに抱きついた。駄目だった。

「なんでだよ……俺、こんなにカッコイイのに……爽やかなのに……」
「それを自分で言っちゃうところが駄目なんじゃねーか……?」
ちゃんと、仲良くしたいよー」
「……まあなぁ」
「あーもー、俺、昔っから妹とか欲しかったんだよね! せっかくさー、こういう機会なんだからさー、可愛い服とかさー!? 着せちゃってさー!!?」
「今なんでお前が駄目なのか改めて理解した」

やばい本音が。



(187 てんてこ舞)


「邪な思いは捨て去りますごめんなさい」
珍しいというかなんとういうか、珍しく殊勝に頭を下げるを見て、俺は思わずため息をついた。彼の前にはがいて、ぼんやりとを見下ろしている。ま、仲良くしてやれよ、と言うように、俺がぽんぽん、との頭を叩くと、は、うーん、と重たげに頭を上下させた後、ちらりと俺を見た。「てっとくん、このひと、なにっていってるか、わかんないー」「!!!!?」「いや邪とか言葉が難しかったんだろ。お前もうちょっと噛み砕いて言えよ」

ここまでショックを受けたようなの顔は久しぶりである。
面白くないと言えば嘘になるが、そろそろかわいそうにも思えてきたので、「ほら、、別にあいつも、とって食いやしねーよ」 小さな頭をぐしぐしと撫でると、うーん、とは悩むように俺の手の動きに合わせてゆさゆさと頭を動かし、小さな手で腕を組んだ。俺のマネらしい。

しかしながら、「…………ちゃーん……」 ほらほら、怖くないですよー、と両手をうねうねさせるお坊ちゃんに、よくはないオーラを感じ取ったのか、そそくさと俺の後ろに回る。ぐいぐいと服を引っ張るものだからしゃがむと、唐突に背中によじ登って、俺の頭の上に体を置いて、「ふむっ」と満足気な声を出していた。「……おい、服が伸びるっつーか、重い……」「ううう、羨ましくなんてないんだからぁー!!!」「いや重いだけだってこれは……」


あーもー、と俺はそのままをおぶさって、に近づいた。いい加減なんとかしたい。で警戒するように背中でバタバタ暴れていたけれど、「いい加減にしろ、おっことすぞ」と言えば、静かになって俺の背中にはりついた。

ちゃーん……」「だから、その手をわきわきさせるのやめろ」 俺だって近づきたくねーよ、とため息を漏らすと、しょうがないとばかりには手のひらをぐるりと背中に回した。そうすると、背中のがホッとしたように息をついた。が怖いというよりも、あいつの右手にくっついている死神に警戒していたのかもしれない。俺だって同じものを持っているが、今のところ力は抑え込んでいる。あいつは何度かの前で発動させてしまった。

「てっとくーん……」
「だからテットじゃねーの、テッド」
「てっとくん……」
「あーもー」

なんでもいいけど、ほら、こいつ、、一応お前の兄ちゃんだ。と背中を揺さぶると、はひょいと俺の肩から顔を出して、小さな顎をこてんと俺の肩に置いた。がパッと笑ってまた右手をだそうとして、考えなおした後に、左手をそうっと出す。はなんにも言わなかった。よしよし、とは笑って、そのままの頭に手を置いた。よしよし。「テッドー!!! 泣かないよー!!?」「…………よかったな」

シュールだ。
なんともシュールだ。

「いやーいいなー、ちっちゃい子ってこんな可愛いんだなー、いいなーいいなー」との頭をぐしぐしと撫で続けた。の方も、多少不機嫌な顔をしているが、一応我慢しようという気はあるらしい。ふう……、とまるで大人のようなため息をついて、からのなでなで攻撃を我慢していた。偉いなお前。

「はー、ほっぺもふわふわー、ぶにぶにー」
「おい、そろそろやめてやれって……」
「いーなー、これ楽しいなー、欲しいなー、一家に一台欲しいなー」
「家具扱いすんなって」
「どうするテッド、ちゃんずっとこのままだったらどうするー? うはは、どーしちゃおー、テッド、どんな風におっきくなるのかなー、想像するとちょっとテンションがあがってくるなー!?」
「いや、落ち着けよ……」

妙に興奮し続けるに、思わずため息をついた。何を言ってるんだこいつは。そろそろを下ろしてもいいだろうか、と考えたとき、ふとが真面目くさった顔で俺を見つめた。「ねえ、テッド」「……なんだよ」 あんまりよくない予感がする。「光源氏計画って……知ってる……?」「…………しらねえよ」 しかし不穏な響きということはわかる。

はうむ、と唸った。そして、ちらり、とを見た。瞬間は爆発した。大泣きした。「うああああああー!!!!」「え、えええ、ななな、なんで!? なんで!? なんでまた泣いちゃうの!?」「お前がなんかアホなこと言ったからだろ!??」

ソウルイーターとか関係なく、ただと相性が悪いだけかもしれない、と慌てて背中のを床に下ろして、ひんひん泣く彼女の周りをあわあわ、慌てて回りまくった。いい年こいたおじいちゃんが情けない。



(493 縁の下の力持ち)


結局を見て泣き出すことはなくなった訳だけれど、それでも紋章の気配を察知すると、は大泣きした。俺の腹にすがりついて、ひんひん泣かれては、一体どうしたもんかとわからなくなってくる。さっさと元の姿に戻した方がいいとわかっているのだけれど、てっとくんこわいよー、と舌っ足らずな言葉で言われてしまえば、「あーあーもー」と頭を抱えて、ついでにも抱え込んで、ぽんぽんと彼女の背中を叩くことしかできなかった。

の方はと言えば、珍しいというか、滅多にないというか、心持ちボロボロになりながらベッドの上で体育座りをしていた。ここまで凹んでいる姿は初めて見るかもしれない。飛び出る触覚も、少々元気がなくしおれている。正直気の毒だが一部自業自得だった。

「ま、とにかく、もうちょっと慣れるしかねーな。宿屋の女将さんには、子どもを預かってるって言っといたし、もうしばらくならがこのままでも大丈夫だろ」
「…………うん」
「ほら、最初よりも、お前と話すようになったし、そこまで逃げなくなったしな?」
「…………うん」
「なんでも時間が解決してくれるって! な、300歳の俺が言うんだから間違いないっ!」
「…………うん」
「………………」

駄目だこれは。

相変わらず俺の膝の間に座り込んで、ごろごろと遊んでいるの頭を撫でて、「なー、別にも、にーちゃんのこと、最初よりは嫌いじゃないよなー?」「きらい」「…………」 だめだこいつ、空気読めてねえよ。

そっとベッドの上の影を見ると、さきほどよりも気配が希薄になっている気がした。あいつをここまで凹ませるとは、お前ちょっとなんか才能あるんじゃねえの、と思うがそんな才能はいらない。「…………どーすんだよー」 勘弁してくれよ、と俺は椅子に持たれて天井を仰いだ。そのときだった。「テッドくーん、坊ちゃーん、お嬢さーん? なんだかお子さんをお預かりしてると聞いたんですが、どこの子ですかー?」 コンコン

聞き覚えのある声に、俺はぱっと振り返った。もなんだか興味深げに扉を見る。「あ、グレミオさんですか! おかえりなさい! とにかく入って入って!!」「はい? 失礼しますー、あら、その子ですか?」 んん? なんだかお嬢さんに似ているような……? と首を傾げるグレミオさんは、ベッドの上で身動ぎもしないを見て、ビクッと肩を震わせた。それはビビる。

「え、坊ちゃん……? 一体なにが……それに、お嬢さんは……」
「まあ、その、あー、実はですね……」

どう説明したもんか、と俺が頬をかいていると、パッとは俺の膝から飛び出した。勢い良く駆け抜けて、ぶつかるような勢いでグレミオさんの足に抱きついた。「あらら、どうしました?」 にっこりとグレミオさんが微笑むと、もパッと花が咲いたように微笑んで、グレミオさんの手をとって、パタパタと動かす。喜んでいる。ものすごく喜んでいる。グレミオさんはよしよしとの頭を撫でた。するとまたパーッと微笑んで、グレミオさんのマントをひっぱった。すぐさまグレミオさんは笑って頷き、を腕の中に持ち上げる。

「それでテッドくん、坊ちゃんは……」 さっきまでの俺の定位置が、一瞬にしてとられてしまった瞬間だった。俺が呆然としてグレミオさんを見ていると、さきほどまで凹んでいたがひょいと顔をあげ、ニヤニヤと口元をほころばせた。よ、お仲間、というように片手を上げている。「所詮俺達は、溢れ出る母親オーラには叶わないんだよ。可哀想になテットくん!」「…………いや別に、悔しいとか、そんなんねえし……」 




(518 嘘から出た真)


「…………ご迷惑、おかけしました…………」


ほんとにな、とテッドが力の限りため息をついて、ぷい、と私から顔を逸らした。そんなテッドを、何故かがゲラゲラ指をさして笑っているし、グレミオはと言えば、「私がいない間に、そんなことになっていたんですねえ」とほっぺたに手のひらを当ててなんとも言えない顔をしている。


なんでも、紋章の共鳴を嫌がる私を、なんとかグレミオが説き伏せてくれて、やっとこさ今の形に戻れたらしい。お母さん(仮)さまさまである。
「えー、あー、うーん、こんなことってあるんだねぇ……」「まあ、色々俺達ってイレギュラーだからねー」 何があるかはわからないっていうか、とは腕を組んで頷いていた。こっちの記憶はないのだから、実感はないのだけれど、なんだか不思議な話だ。

それにしても、何故か説明には加わらず、ずっと不機嫌な顔をしているテッドを見て、私はどうしようとしょぼくれて、こそこそに耳打ちした。「ねえ、、私テッドに何か悪いこととかしたのかな、どうしよう」「いやー、テッドにはずっと懐きっぱなしだったよ。悪いことと言えば、主に俺がされてたよ……」 ぶっちゃけ泣く一歩手前だったよ、と微笑むに、なんとコメントしていいものかわからない。

「まあとにかく、終わり良ければすべてよしってことでね。テットくんも機嫌をなおしてね」
「別に、最初っから不機嫌でもなんでもねーよ」
「だったらいいんだけどさー」

けらけら、とが笑っている。テットくんってなんだろうか、それにしても。「私がさ、そうなっちゃったってことは、今度はとか、テッドがそうなっちゃったりとか……」 ピタリ、と二人が固まった。そして縁起でもないことを、というような顔つきでこっちを見るものだから、「あ、ごめんごめん、ないよね、こんな変なこと、もうないよねー」と慌てて両手を振った。しかしながら、言ってしまえば、形になる出来事というものはあるのである。


   ***


テッドの部屋に、ぽつんとぶかぶかの服を着た男の子がいた。ベッドの上に立って、ここはどこだときょろきょろしている。私はひきつり笑いをした。そして、「…………テッドくん?」「あい」 返事されちゃった……!! しかもなんかちょっと言えてない……! 「その、テッドくんは、いくつなのかなー?」 腰をかがめて、にこにこ笑いながら問いかけた。

「てっどくん、みっつー」

とりあえず、頭を抱えて床の上に沈み込んだ。





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2012/03/13