番外編




*萌えキャラ(略)アンケでシーナプッシュの方がいらっしゃったので
*…………エンドレスかよっ!! というツッコミが聞こえた気がした
*24.5話



ぽーい、と僕は水の中にほっぽり出された。



「うぎゃっ、ちょ、うひゃ、ああ、つめたいいいー!!!」
「なーに言ってんだなまっちろいこと言いやがって、あ、冷た、これ無理だわ」
「無理って、無理って、無理ってぇー!!」


このお兄さんひどいよー、しくしく僕が涙を流していると、「泣くんじゃねえ! 男だろうが!」と拳を振り上げるこの人の名前はシーナさんと言うらしい。船に乗れずに頭を抱えていたとき、同じくシーナさんも僕と同じポーズをしていたのが運のつき。いつのまにやら自分でもよくわからないうちに、僕はシーナさんに首根っこをひっつかまれ、ポーイッと川の中に放り込まれた。汚れすぎだろお前! と言うことらしい。鬼か。


ぶえくしゅ、ぶえくしゅ、と僕がくしゅくしゅくしゃみをすると、「、お前根性ねえなー」と言いながら、シーナさんがざぶざぶと川の中に入ってくる。周りの人達がちょっと迷惑そうにこっちを見ていて、恥ずかしくってたまらなかったので、僕はすぐさまシーナさんの隣をすり抜けようとした。しかしながら、再び首根っこを掴まれて、ぼちゃんと水の中に沈めこまれた。「ぶくぶくぶくぶくぶく……」「あ、さすがにまずい? おい生きてる?」「いぶきてぶくしゅぅ!」「何いってるか全ッ然わかんねーわ」

悪い悪い。なんて言いながら、僕の頭を水に沈めてぐしゃぐしゃごしごしするシーナさんは、全然悪いと思っていない。もー、信じらんないよー、と僕はばしゃばしゃ腕を動かした。そうすると、シーナさんの顔面に、びしゃびしゃ、と水がぶっかけられてしまったらしい。彼は腕でごしごしと顔をこすって、真顔でこっちを見た。そしてすっくと腰をかがめ、足元までたまっている水へ拳を入れる。そして、「ぶばしゃ!?」 顔面に思いっきり水鉄砲をぶっかけられた。

僕は思わずびっくりして、川の中で足を滑らせてしまった。ずでん、とお尻にじゃりを感じながら、全身からぼたぼた水を滴らせて、ゆっくりと起き上がった。途中、ずべっとすっころんだ。「ぶはははは!!! すべってやんのだっせぶばっ!?」 反撃である。

シーナさんと同じく、両拳を合わせてその間からびゅびゅっと水を吹き出させた。彼はまた真顔でこっちを見た。そして素早く水鉄砲を浴びせた。僕は即座に避けて、第二派を撃った。「ぶひゃ!?」 つもりだったのだけれど、反対にシーナさんが思いっきり足を蹴って、体中に水を浴びせられた。彼はこっちを指さしてぶひゃぶひゃ笑っている。思いっきり涙目になりながら、もー! シーナさんのバカー!!! と叫びながら、ばしゃばしゃ水をかけた。「おっ、やるか? やるか? やっちまうかー!!?」 とノリノリのシーナさんと、水をかけあって、漁師さんに怒られるまで、僕達の戦いは続いた。



   ***



びちゃびちゃな姿で宿屋についた僕らは、無言で女将さんからタオルを投げつけられた。シーナさんは一枚しかないタオルを受け取って、ぶくしゅ、と何度もくしゃみを繰り返している僕をじっと見ると、「ほれ、先にふけ」「……いいの?」「風邪でもひかれると、目覚めがわりーんだよ」 ほらよ、無理やり渡されたタオルで、僕はごしごしと頭を拭いた。

その間、同じくずぶ濡れになっていたシーナさんは、びちゃびちゃと宿屋を歩き、ウェイトレスさんみたいなお姉さんのところまで行った。お体はきちんとお拭きになってから入店してくださいね、とにっこり笑うお姉さんに、シーナさんはきらんと白い歯を見せて、「ちょっと今、ひどく寒くってね、君が代わりに温めるくれないかい?」 キラリン☆


お姉さんに白い目で見られ、「おっかしーな、水も滴るいい男だったと思うんだけどなー」と、とぼとぼこっちに戻って来るシーナさんを見ながら、僕はこんな大人にはならないでおこう、とごしごし体を拭きつつ、何度も力強く頷いた。なんていうか、僕はフリックさんのような大人になるのである。

「……お前さっきから何一人で頷いてんの?」
「な、なんでもないです、なんでも、うんうん」
「まあ何でもいーけどよ。ぶえっくしゅ。やっべ、ガチでサミー」
「あ、シーナさん、次どうぞー」
「おー」
「くしゅん」
「ぶくしゅん」


ぶえっくしゅ





 

2012/03/17

1000のお題【637 水鉄砲サバイバル】

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