間違えました、こんにちは


さん、一緒に暮らそう」


私の部屋のテーブルに座って、お茶碗を片手に持って、もう片方にはお箸を持ったグリーンさんが、じっと私を見つめていった。私はもぐもぐたくわんを口に含んでいて、こくんとご飯と一緒に飲み込んだ。「うん」 それからすぐに頷いた。

「新しいとこ探す?」
「俺んちでいいよ。結構広いし、ジムもポケセンも近い」
「そっかー」

そうだねぇ、と頷いて、お茶を飲んだ。こくこく、と一気に飲んで、それからじわじわと首元が熱くなった。「うん」ともう一回無意味に頷いて、もういっぱいお茶をくんだ。ぐいっと両手でガラスのコップを持ち上げて、どんどん赤くなる顔をごまかした。
グリーンさんは、ちょっとだけ嬉しげな顔をして、にまにま私を見つめていた。



   ***



それから私はしばらくして、グリーンさんの家に引っ越した。ダンボール箱はそんなに必要ない。もともと彼の部屋には必要なものがそろっていた。ピジョットの宅急便屋さんにお願いをして、手早くお引越しは完了した。私がグリーンさんを待って、グリーンさんが私の家まで送ってくれて、それからバイバイと手を振ることはなくなった。

それは少しだけ寂しかったのだけれど、ご飯の用意をして、おかえりなさい、と声をかけるとグリーンさんは薄緑色のマフラーを口元まで上げて、ほんの少し鼻の頭を赤くしながら、「おっ」と楽しげな声を上げた。例えば今日、こんなことがあった。明日はこれをしよう。お皿の片付けは一緒に、テレビも見るときも一緒に。

ぼふりとベッドの上に飛び込むのは、やっぱり少しだけ照れくさい。慣れた? と真っ暗な部屋の中で、彼は私の耳元に問いかけた。ちょっとだけ、と声を出して、グリーンさんの手のひらをぎゅっと握った。



「グリーンさん、朝ですよ」

窓の外から聞こえる鳥の声に耳を向けて、つんつんとベッドの中のグリーンさんの鼻をつついてみた。「んぐー」 唸るような声である。ごそごそ布団にくるまって、頭の先まですっぽり埋まってしまった彼を見下ろして、あらまあ、と私は吹き出した。昨日の晩遅くまで、誰かとポケギアで話していた。耳をすましていたわけではないのだけれども、きっと彼だ。ぷんぷんグリーンさんは怒っているのに、どこか嬉しそうな話し方をきいていればすぐに分かる。


部屋の端で丸まっていたイーブイが、とてとてとこちらに足を向ける。それからひょいっと後ろ足で飛び跳ねて、グリーンさんのベッドの上によじよじと着地した。「あー……」 またグリーンさんが唸った。それからグリーンさんの体の上をとすとすと足を踏んで、彼の足元あたりの丁度いい空間に無理やり体を入れて、丸まった。それに合わせて、グリーンさんが体を折り曲げる。ふんっ、と満足気に鼻から息を吹くイーブイに、くすくすと笑った。


ピンポーン

「あ、はーい」

聞こえたインターホンに立ち上がった。きっと宅配便だ。ぱたぱた玄関に向かって、扉を開ける。「おまたせしてすみませんー」 そう言った後って、判子を片手に玄関を開けた後、はたりと瞬いた。目の前にいる男の人も、多分おんなじ顔だ。


白と赤の服をきていて、男物の帽子をすっぽりと深くかぶっている。年はきっとグリーンさんと同じくらいだ。リュックサックの肩紐に指をかけて、こくんと青年は首をかしげた。「……どちらさま?」「えっ」 あの、と声をかける前に、青年はぺちん、と自分の頭を叩いた。

「間違えた」

すみません、と静かにぺこりと頭を下げて、てくてくと青年はこちらに背を向けて去っていく。「いえ、あの」 なんだろう。しばらくの間彼の背中を見つめていた後、もしかするとと気づいた。グリーンさんの知り合いだったのかもしれない。私は慌てて部屋に戻った。いつの間にか布団から起き上がったグリーンさんが、寝癖の頭をぽりぽりとひっかいてお茶を飲んでいる。

「おー、さんおはよう……」
「グリーンさん、今」
「お?」

ぱたぱた、とグリーンさんの足元にはイーブイが尻尾を振って座っている。「黒髪の……ちょっと変わった男の人が」 半袖で、黒髪で、赤色の帽子の人で、と一つ一つ特徴を上げていくと、グリーンさんはぎょっと目を見開いた。それから寝間着の格好のまま、ばたばたとつっかけに足を通して、「てめえー!!!! おらおい待てこらーーーーー!!!!」 激しく大声を上げながらマンションの廊下をつっきっていく。

私はそんな彼をぽかんと見つめた。
それからなんだか、彼のその“怒っているのに怒っていない”その様子がどこかで見たことがあるような気がして、「グリーンさーん! あんまり走ると危ないよー!」 と声をかけて、あははと笑った。






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随分前にした萌えキャラアンケでレッドって書いてくれてた人がいるのでずっと書こうとホントに書こうと