少年が降ってきた



 現れた少年



は歩いていた。学校指定のブレザーで身をつつみ、首に巻いたマフラーを口元辺りに押しつける。口から出した息がしめったマフラーを暖かくする。
さむい。冬休みも近いこの時期は授業が終わる時間が少し早くなる。かといって、一応受験生である自分は遊んでいる暇はないはずだが、半分高校は推薦で決まっていて気分は軽い。
いつの間にかしていた軽いスキップに、右足を地面にトンッと置いた瞬間、何か強いものにはじき飛ばされたのだ。


まず始め、が目に見えたものは、真っ白い煙だった。開けた瞬間いがらっぽい感覚にゲホゲホと鼻水を出しそうになって、右腕で顔を覆う。いつの間にか尻は地面にくっついていたらしい。手に持っていた鞄は何処かに飛んでいるらしく、閉じた瞳の中でバタバタと手を伸ばし鞄を探す。そのうち聞こえてきた少年のような声に、彼はパチリと瞳を開けた。

「………間違えた…」

何をだろうか。すっかりと収まってしまった煙の中で、茶色いツンツン髪をした、と同じくらいか少し年上の少年が、ぽっかりとした顔をして、ペタリと地面に手をついていた。
体中を茶色い、ほんの少し個性的な服を着た彼は、首もとから紫色のタートルネックがのぞいていて、近くに放り出された長い杖のようなものが、中々に印象的だ。

(こいつは、どこから来たってんだ?)

確かに、の目の前には、誰もいなかった。周りの確認を怠っていた事は認めるが、イキナリ目の前に少年が現れるなんて現象は認められない。
降ってきた。まさにその表現が的確だ。思わずは頭の上へと真っ青に広がる空へと、顔を上げたが、そこにはいつもと同じようにゆらゆらと白い雲が浮かび、低い位置へと太陽がきらめいているだけだった。

「そこのお前!」

ビシリ、と彼が手が指さした場所には、しかいない。念のためきょろきょろと周りを見渡した中で、はごくりと唾を飲みながら、尻を地面につけたままの体勢をやめて、四つ足のようにゆっくりと彼に近づいた。

「……おれ?」
「そう、お前、悪い、ここは、チキュウなのか?」
「…………はい?」






くるくる回る頭の中で、彼がほざいた台詞を、またくるくると繰り返す。ここじゃあまずいと移動した公園のベンチの上で彼と語り合い、先ほどこの少年が、(ソルだったか)が、説明した台詞を、自分の頭の中で整理をした。

「それで、お前、ソル? は、リィンバウム? って、トコから来て、そのう、探し人を追ってきて、召喚術とかいう不思議な技で、ここの地球に、来たって?」

口に出すとあまりにも壮大なストーリーに、思わずため息をつくと、ソルは「そうだ」と満足げに頷き、「トウヤっていうんだ、お前は知らないか?」
しらねぇよ、といいたくなるような台詞をぐっと押さえこんで、ガサゴソと鞄の中からケータイを取り出す。


「………黄色い救急車って、どう呼ぶんだろ」
「キュウキュウシャ?」

彼はじっとケータイを見詰めたままの体勢に、飽きてしまったのか鞄の中へとまたしまい込み、「あっそ、頑張って」とピラピラと手を振った。
ソルは、「ん、ああ」と半分生返事をして、は妙な人間に付き合ってしまって午後の貴重な時間をすりつぶしてしまったとあくびをしつつ、さぁて、家に帰るか、と一歩道を踏み出す。

ああいう輩には付き合わない方がいい、と考えるのが彼の持論だ。

随分進んだ場所から、未だベンチに座りっぱなしの茶色い影を見て、顔はいいのにもったいない、そもそもあんな格好は寒くないのかと人ごとのような感想を持ちながら、は帰宅した。


1000のお題 【577 おざなり】




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お前どんだけソルが好きなんだと。げへげへ

2008.08.11