「ガイラルディア様こけちゃいますよ」


男の子ならば




脱走数える事で、もう何回。そんな帰りに、たったった! と走る彼に、クスクスと言葉をもらしながら声を掛けたそのときだった。べしゃり! 見事な効果音で、顔からつっこんだ彼に、あああ、「がががガイラルディア様!?」

まさかまさか、こんな事になると思わなかったのだ。がばりと起きあがった彼の顔に、べたりとついてしまった泥やらすりむけた赤い後。ついでにいうと、今すぐにでもぼろぼろと涙が出そうな彼を見て、「ああああ」とこっちまで涙が出てしまいそうになった。ずるずるに向けた手の皮と、じんわりとにじむ、真っ赤な血。
くらりと、意識が遠のきそうになった。「だだだだだ誰か、第七音譜術士さんをー!」


混乱してしまった。ものすごく、混乱してしまった!「だれかー!」

けれども、一番痛がっているはずの彼が、ぐ、と口元を抑えて「いい、」 何が、いいんだろう。思わずぼろり、と零れてしまいそうな私の涙を、ぐっと抑える(私が泣いてどうするっていうの!)「第七音譜術士は、簡単につかっちゃ駄目だって、姉上がいっていた」

    なんだろう、それは。理解ができない。
使えるものがあるんだから、何で使ってはいけないんだろう。納得できないまま、ぐ、と唇を噛みしめた(この世界の理屈は、時々、私には理解できない)


よいしょ、とガイラルディア様は、足を進める。


「ガイラルディア様」
「よし、屋敷に帰るぞ、
「ガイラルディア様、とっても痛いでしょう」

ずんずんと、幾分か早歩きで足を進める彼の後ろを私も、ついて行く。ずっと年下の彼の歩くスピードは遅いけれど、後ろにつくように、私も、歩く。赤く染まってしまった、彼の手のひらが、目に見えた。

ぴたりと、一瞬足を止めて、私も一緒に、ぴたり。

「……姉上は、こうもいっていたんだ」


傷は男の勲章だって!


だからこれくらい、全然痛くないんだぞ、とにかっ、と太陽のように微笑んだ少年の頭を、ぎゅ、となで回したくなってしまった。
(マリィベル様、男らしすぎます……)




1000のお題 【291 たしなめる】





 TOP 

                         アトガキ

マリィ姉さんは男らしいと信じております(何)
1000のお題がやっとこさ200になりました! ……半分もねぇヨ!(ガクーン)

2008.03.09


拍手再録です。

2008.07.21