なんだか本編始まるちょっと前くらい。
ええと、なんだかガイが激しいっていうかムッツリっていうか。
お下品ヨ! 管理人見損なった! そんな事いわない人だけどうぞーえいえいおー




つまりは夢のようなものだ





なんでだろうなぁ。

誰ともなしに、ガイは呟いた。





は暖かな光を背にするように、窓側の壁へと寄り添っていた。いつもの如く忍びこんだ彼女の部屋で、イスの背へと手を乗せ、両足でまたぐように座る。
「ガイさんちゃんとお仕事してるんですか?」 とこの頃は首を傾げるが、もちろんだ、とガイは胸をはる。休憩時間くらい何をしたっていいじゃないか。

そんなことを言えば、彼女やその兄はじゃあ自分の部屋に戻ればいいじゃないかといわれてしまいそうで、彼はただ苦笑した。


ふいに、流れた風に運ばれた、小さな葉が、彼女の髪へと、ぴたりとくっつく。開けっ放しの窓からは、さわさわと木々のこすれる音が聞こえた。

彼女自身気付かない様子で、ただ黙々と本のページを捲るだけなのだけれど、思わずガイは噴き出した。その様子に、「どうしたんですか、ガイさん」と首をかしげるので、自分の頭へとちょいと指をさしながら、「葉っぱ、ついてるぞ」

慌てたように彼女は、自分の髪へと指を伸ばした。片腕で何度もくしゅくしゅと動かしても、中々指にひっかかることがないらしく、ほんの少し眉を寄せ、次第に顔は真っ赤になっていく。ガイはその光景を見て、再び噴き出してしまいそうになったのだけれど、さすがにやめておいた。可愛らしいな、と思う程度に留めておく。

「もっと右、右」
「うー、えっと、あー」
「上上、あー、いきすぎたな」
「え、あー、すみません、ガイさんとってくださ、あ」

自分自身の言葉に、彼女はいいえ、と首を動かし、また髪と格闘を始める。女性の長い髪は見ている分には飽きないが、本人からすれば鬱陶しくないのだろうか、とガイは首を傾げる反面、ふいに脳内から小さな声が響く。


         ガイさん


の声だ。けれども、彼女の声ではない。もっともっと、昔のもの。舌っ足らずな子供が、紅葉のような小さな手のひらを広げ、とても柔らかく、ガイへと微笑んだ。
柔らかい記憶は、今でも失せる事はない。彼女はいつまでも変わることがなく、同じように微笑んでいた。


(…………鬱陶しいな)

そう思った。
自分自身、どうすればいいのかも分からず飛び込んだ屋敷には、自分よりも小さな子どもが二人。同じような髪質で、何所か似通った顔つきのくせに、その表情と態度だけは顕著に違う。こ憎たらしい子どもと、使用人へと妙に腰の低い子ども。

そして彼女は、初めから自分へと懐いていた。

なぜだろうかと随分考えた。一番初めは、扱いに困ったし、使用人全員へと同じ態度なのかと思えば、彼女はどこぞの犬のように、わかりやすく尻尾を振っていた。
         何故だろうか

一体このお嬢様は、自分の何を気に入ったのだろう。何度も考えたものへと答えが導き出されることもなく、さすがに本人に問いただせる訳もない。

鬱陶しいな、と思う反面、悪い気もしなかった。
小さな子どもが何故だか無条件に自分へと懐く。犬猫のような感覚であったことは否定しない。ちょこちょこと自分の後ろへとくっついて回る、小さな可愛らしい生き物を嫌える通りはなかっただけだ。
(いつからなのか)


彼女は、ようやく指先へとお目当ての物体がひっかかったらしく、ぱっと柔らかく微笑みながら「とれました」とまるで大ごとのように言葉をもらした。「それはよかった」 ガイ自身も、にっと笑いながら、ほんの少し、胸の底にて、柔らかくトントン、と膨らむ鼓動を感じる。

(本当に、いつからだろう)
分かるわけもない。

そんな予定など、なかったのだ。
彼女へと、そんな気持ちを持つ予定などなかったし、その兄へと、また違う種類ではあるが、プラスの感情を持つ気もなく、またファブレ家へと積み重なる愛着を感じるたびに、自分自身が、まるで崩れ落ちてしまいそうな感覚になる。

自分達は、すくなくとも自分は、この場所へ、ただのうのうと生きるために、足を踏み入れたのではない。

けれども降り積もる感情を振り切ることは難しく、後へ後へと決断を先延ばしへしているだけだ。自分はいったいどうすればいいのだろうか。ぬるま湯の外へと飛び出すべきなのか、それとも。
結局、この一方的にもおかしな関係は、どこかで断ち切られるに違いない。

彼女の兄が許嫁と誓いを交わせば、彼女の兄へと着いて、ファブレ家を出る事になるだろう。そして彼女自身、いつまでもこの家に留まる訳でもなく、さして彼女の意志は関係なく、いつかは自分以外の相手と結ばれる。どちらが先かは見当がつかない。けれどもいつか訪れる運命だ。


そうなる前に、と呟きかける気持ちに、足を踏み出す事が出来ずにいた。
(いっその事)
ゆっくりと伸ばしたガイの指先は、わずかに震える。彼女はただ何も知らず、静かにページをめくるだけだ。

触れたら、いいのに。



そうすれば、きっとどうにでもよくなる。いつかなんて関係ない。今だけだ。刹那主義に踊らされるただの人間、それだけでいいじゃないか。

何で、自分一人、我慢しているだけなんだ。


いいじゃないか。




気づくと伸ばしていたガイの指先は、柔らかくの頬へと張り付いた。初めは指先。ゆっくりと頬全体を覆うそれに、驚いたように彼女は長い睫をふるわせ、驚きに瞳を大きく開けた。ガイさん? とこくりと首をかしげ、まっすぐにガイを見つめた。

僅かな布越しに感じる感覚が気に入らなかった。焦ったように脱ぎ落した手袋はぽとりと捨て、同じくが握りしめていた本が、その腹部へとゆるりと落ち、ガイはまた、優しく頬をなでる。

そしてゆっくりと首筋を通り、一瞬はこそばしさから肩を震えさせたのだが、ガイはお構いなしに肩へと手をかけ、柔らかい絨毯の上へと、ストンと彼女を押し倒した。

の視界がくるりと一転し、一体何が起こったのか、とパチクリと瞬きを繰り返すだけの彼女に、ガイはうっすらと微笑みながら、彼女の髪を遊ばせた。長い髪が指先へと絡み、するすると抜けおちる。
今から、自分が何をされるのか、理解していないのだろうか。していないに違いない。彼女は自分のことをそんな対象へと捉えていないことは知っている。

けれどもそんな小さな子どものような、初々しい反応にも愛しくなり、被さるように抱きしめると、彼女の柔らかい体が、自分のあちこちを刺激する。指先が熱い。「ハァっ」 短く吐いた息は、自身を落ち着かせるためだった。

「あのな、、俺」
「が、ガイさん」

彼のセリフに覆いかぶさるようにぎゅう、と彼の背中へと手を回す。顔が赤い。ガイはその顔の瞼をぺろりとなめあげると、彼女は顕著にも「ヒィッ」と大きく肩を震わせ、またガイの背中へと強く手を回し、胸元へと顔をうずくめた。

そんな彼女の反応があまりにも嬉しくて、ガイはゆっくりと、ゆっくりと、自分の気持ちを口へと出した。
彼女は耳まで赤く染め、また強く瞼を瞑り、そしてガイは







「あの、ガイさん?」
「ン、あ、ハイ!」

椅子に座りついたまま、ぴくりとも動くことのないガイに、は訝しげに声をかけた。そしてガイはなぜだか必要以上に肩を震わせ、びしりと背筋を伸ばし、「な、なんだい?」と取り繕ったように上ずった声をあげた。

そしては心配気な顔つきに、「いえその、ガイさん」「ん?」「鼻血が」「………!」

さっ、と静かにはテッシュを差し出し、一体どうしたんだろう、大丈夫だろうか、と上目がちにガイを窺う。けれども今のガイには、その視線は酷だった。
情けない表情と共に思いっきりこうべを垂れ、「すみません」「は」「すみません本当にすみませんごめんなさい」「いえ、その何がですか」

赤く染まるティッシュに、さっと二枚目を渡しながら首をかしげ、まさか自分が昼間っからアンナコトやコンナコトをされている想像をしていただなんて分かる訳もない。
土下座の勢いで謝り続けるガイに、どう対処すればいいのかと困り果てていたとき、ガイは視線を下におろしたまま、はっとしたような顔に、くるりとへと背を向けた。「す、すまない、ちょっと、今日はこれで」 

どういえばいいのか、とりあえず「お大事にー」と呟いたのセリフを聞くこともなく、彼は何故だか思いっきり前かがみに逃亡した。
会話を放り出すように逃げ出すだなんて珍しいなぁ、と思いながらも、まぁあれだけ元気に走れるなら大丈夫だろう、と手の中の本へとまた目を通す。


次の日から、彼のトレードマークのぴっちりズボンから、だぼついたズボンへと変わっていたことに、「どうしたんですか」とがただなんとなく聞けば、彼は可哀想なほどにびくりと肩を震わせ、「まぁ俺ってまだまだ若いもんな」と自嘲的に笑ったのだった。

「はぁ、若いですねぇ。いいことじゃないですか」
「…………元気すぎて困るんだけどな」
「何でですか? 元気って素敵なことですよ」
「………うん、まぁ、そうだよなぁ………」





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                         アトガキ

ぐ、グガハ!(吐血) なんという羞恥プレイ………!
もういいや公開しちまえ!

2008.12.28

1000のお題 【31 レッツ、我慢大会】