* 萌えキャラアンケ(略)でガイプッシュをしていらっしゃる方が多かったので!
* 萌えシチュ、「膝の上に座る」抜粋しました。
* カップルじゃないけど、ガイが女性恐怖症をちょっと克服してお互い片思いくらいのとき。
* 未来ifなんで、本編こんな感じになるかどうかは未定。



きみと、ひざのうえ







「その、。一緒に座ってくれないか?」


唐突に言った俺のセリフに、彼女はきょとんとまたたいて、ぎゅっと俺の手を握った。俺にそれはぎくりとして、一瞬体を震わせた。けれども、じいっと彼女を見つめた。彼女の小さな手を握りしめた。
     触っている

彼女に俺は触っている。今でも少しだけ怖い。けれども違う。俺が怖がって、ビビっていたのはただの幻影で、なんの意味もないことで、ただ自分が情けなかった。怖がる必要なんて、どこにもなかった。彼女たちに申し訳がなかった。
そうわかった今も、やはり女性に触ると、ぎくりと胸が震え上がりそうになる。けれども少しずつ、近づくことができるようになった。


「えっと、あの、ガイさん?」

が俺の手のひらを握ったまま、首を傾げた。別にお互い色っぽい事情で手を握っているんじゃない。練習のためだ。そう、あくまで練習だ。ぶるぶる、と俺は首を振って、邪念を追い出した後に、「いや、深い意味はないんだ。でも、そろそろ君の手も握れるようになったし、次はもう少し、近くてもいいかな……と……」 言っていて、本当に下心が不安になってきた。多分ある。出来れば、もう少し近くに、と考えてしまっている。そんな自分の気持ちが伝わらないだろうか、と不安になって、「あ、いや、無理にとは言わないさ」と慌てて否定した。でもできることなら、いいですよと彼女に肯定して欲しかった。

俺の期待通りに、は少しだけ迷うように逡巡した後、わかりました、と小さな頭をぺこりと下げた。向かい合わせていた宿の椅子をガタガタと移動させて、お互いピタリと近づけた。「大丈夫ですか?」とがこっちに問いかけて、「ああ」と俺は頷いた。

腕と腕がくっついている。なんとなく、視線を逸らして、そろそろと彼女に目を向けた。そしたら丁度タイミングよく、彼女とパチリと目があってしまって、また顔を逸らした。一瞬見えた彼女の頬は、なんだか赤くなっていたような気がする。多分俺もだけれど。

お互いしばらくそのままでいた。ときどきガタガタと震えそうになる自分のももを、彼女には気づかれないように、必死に手のひらで押さえ込んだ。そうしていると、ふと、彼女が俺にもたれかかった。彼女の髪の毛が、くしゅりと肩に当たる。俺はグッと息を飲み込んだ。

大丈夫だ、大丈夫なんだ。
何度も自分に言い聞かせて、「その、」「……はい?」「もうちょっと、近くても……」「近く?」 これ以上、どうやって? と彼女がこっちに目を向ける。だからその、と俺はしどろもどろになりながら、「膝の上とか」 俺の膝の上に座るとか。

多分、それはこれ以上なく近い距離だ。が一瞬、ぽかんとして俺を見た。やばい、調子に乗りすぎた、と片手を振ろうとしたとき、彼女がぎゅっと俺の服の裾を掴んだ。それからちらちらと宿の部屋の壁を見て、目線をふらつかせた後、こくんと頷いた。なんとなく、お互いそれだけだ。俺は慌てて彼女に向かい合うように体を移動させ、わずかに足を開いた。ごそごそ、とは少しずつ移動しながら、ちょこんと俺の膝の間に座り込んだ。(う、うわ、うおおおお)

練習だから
これは練習だから
そういう意味ではないのだから


ガクガクと体が震えてくる。俺は力いっぱいに自分のももを押さえこんでも、自分の手のひらまでがくがくと震えている。が、心配気に俺を見た。そしてすぐさま立ち上がろうとした。そんな彼女に気付き、俺は慌てて彼女を後ろから抱きしめた。がぎくりとしたように体を震わせる。俺も慌てて手のひらを跳ね上げた。

なんにも言えなかった。ただ息を止めて、彼女の体がすぐ側にあるのを感じた。情けないことに、カタカタと彼女を抱きしめる手のひらが震えていた。はそっと俺の手のひらに、指先をのせた。息を飲み込んだ。思わず彼女の肩口に口元を乗せる。彼女はただ体を固くするだけで、なんの抵抗もない。また強く、彼女を抱きしめて、自身に思いっきり引き寄せ     「もー、ありえなーい!」 ガタッ ガタガタガタッ ガタガタタタタタッ!!


「なんでぇ? なんであんな服が3000ガルドもするのぉー? しんじらんないしんじらんない、マジぼったくりーぃ」
「だからってアニスお前、1000ガルドは値切りすぎだろ……」
「なーに言ってんだか。これだから箱入り息子のお坊ちゃんは。ああいうのは、もともと値切るようにできてんの!」
「そうなのかぁ? …………おい、ガイ、。お前ら何やってんだ?」


「…………腕立て伏せ……かな……?」 どう考えたっておかしい。そう思いながら、床に突っ伏す俺と、椅子に座ってテーブルに顔を押し付けるの組み合わせは、それ以外に説明ができない。「腕立てでもなんでもいいけど、するならするでもうちょっと部屋の端でした方がいいんじゃないか?」 ちょっとそこ、邪魔だぞ? と言われた赤髪ヒヨコ頭の少年に、何か虚しい気分になったが、「ああ、そうだな……」と思わず生ぬるい笑みと共に答え、ちらりとアニスとの姿を見る。

、なんか顔赤くなーい? と察しのいい言葉を投げかけられて、「え、そうですか? ちょっとお部屋が寒いのかもしれませんね!」とぶんぶん首を振る彼女に、一瞬頬を緩めた後、「……それで、ルークとアニスは、えーっと」「何言ってんだ。今日の買い出しは俺とアニス! で、アニスが戦利品の自慢をしたいって言うから、の宿の部屋に……ガイこそなんでだよ」

ギクッと力の限り顔がひきつった。「いや、その……なんとなく、に会いたくなってね」「腕立て伏せをしながら?」「うん、まあ、そんな」 ねーよ。

自分自身それはない、と思ったのだが、今更後には引けない。とりあえず、と公爵様を見下ろして、「ルーク、部屋に入るときは、きちんと毎回ノックをだな」「妹の部屋なのに?」「それでも、だ」 女性の部屋に入る時は、きちんとしたマナーが必要だ、と胸をはると、彼はどこか訝しげな顔をしながら、わかったよ、ごめん、と唇を尖らせながら頷く。素直になったもんだな、と未だに多少の違和感を抱えながら、「わかったならよろしい」

それじゃあ、俺はそろそろ退散させていただこうかな、と片手を振って、とアニスにも挨拶をと振り返ったとき、「おい、ガイ」「ん?」「あんまり妙なことしてんなよ」「!!!!!!」「ってジェイドが俺から伝えろって」

意味わかんねーよ、とポリポリ頭をひっかく少年に、ひくひくと口元が動いた。「お前、なんかしてんの?」「い、いや、いやいやいや」「いやしか言えてねーし」 意味わっかんねー、ともう一回ぶつくさ呟き、彼は妹の元へと歩いて行く。ははは、と俺は誰に聞かせる訳でもなく、片手で顔を覆って、すたすたとドアに向かっていった。とにかく、練習なんて口実で、こんなことをするのはしばらく控えるんだな、としゃべる自分の良心に、そのとおりだ、と小さく肩をすくめた。







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1000のお題 【252 それではお言葉に甘えまして】

控えるのはしばらくだけなガイ様
ガイ様のあのズボンで、膝の上はアウトだろうということは大丈夫です、書く前から気づいてました。