*とあるメイド視点より、のメイドさん視点。とあるメイド2とちょっとリンク。 *完結後if展開ですが、ある意味今後のネタバレです *ところどころシモネタ的要素、らぶらぶ、多少の絡み有り。 *主人公の外見的特徴が多くあります。 *シモネタ(主人公のおっぱいはガイが育てて大きくしたというのがいつの間にかRページから定着) とあるメイド視点より3 「あの、ダイエットって、どうすればいいんでしょう」 ある日真っ赤な顔をした様にそう問いかけられて、一体この人は何を言っているんだろうと思った。 *** ファブレの家にメイドとして勤めるようになって数年。初めは戸惑うことが多かったし、この赤髪の少女の専属メイドになってどうしたもんか、と頭を悩ませるばかりだったが、案外慣れてしまえばなんとかなるものらしい。自身のクビばかりを認識していた新人時代とは違い、今では堂々とした態度でぼんやり様とお茶を楽しめるというものだ。いやこれはあんまりいい変化かどうかは知りませんがね。 そんなこんなでもぐもぐと様用のお茶菓子を口に頬張っているときの、そんな彼女の言葉を聞いて、一体この人は何を言っているんだ、と思わず「はあ?」と眉を顰めた。 「あ、あの、しなきゃって思うんですけども、出されたご飯を食べない訳にはいかないですし、運動だって……それほどできるわけじゃありませんし」 どうしたらいいかって困っていて、両手をきゅっと合わせるいつものポーズでしょぼくれている彼女を見下ろして、「あ、いやそういうことではなく」「え?」 どういうこと、とばかりに彼女はきょときょとと瞬きを繰り返した。「なんでいきなりそんな」 乙女みたいなことを、という台詞はさすがに途中で飲み込んだ。一応は自身の主である。 様と言えばほんわりと可愛いお嬢様だ。メイドと執事の間ではそれが定説になっているものの、いかんせんこの近い距離で見つめ続けていた自分から言わせてもらえば、彼女はおばあちゃんだ。縁側でぽんやりひなたぼっこを楽しむ、そんな今時を通り過ぎたようなヤングな若者であり、様それで若さを終了させてもいいんですかね、と毎回毎回自分は色々と彼女にツッコミをいれたい。 お前は様つきでいいなあ、と仲間執事に羨ましげに見られることも多々あるが、別に様のそばにいたって気分がどんどんお年寄りに変わっていくだけなので、いや別にそんなにうらやましがる必要もないんじゃね? と思いつつ、お貴族様相手にでかでかとした態度をとれるのはめんどくさくなくていい。でもこれが自分の中の基準になってしまって、いつかクリムゾン様の前で「はー、お茶菓子うめー」なんてやってしまい、ズバッとクビになる瞬間がリアルに想像ができた。気をつけよう。 「様、今までそんなこと言ったことなかったじゃないですか。なんでですか?」 「え、あ、あの」 ううう、と様はほんのりと耳を赤くさせて視線を落とした。「その、好きな人に、太っている、と言われて」「え、好きな人ってガイですよね? 婚約者ですし」「はうあ!」 あうあう、と様が首を振って、そのままぽてりと頭を落とした。一体この人は何をしているんだ。それでごまかせると思っていたのだろうか。 ガイと様の婚約はというと、屋敷の中を一気に震わせるような大々的なニュースだった。ガイが実はマルクトの貴族であった、という嘘か本当かもわからないような話にみんながぽかんと目を丸めて、まあ確かにガイであるのなら、と納得をして、その次の出来事である。頬を紅潮させて、噂を語り合った仲間は多くいたが、その反対に枕に顔を埋めて、真っ赤な瞳で仕事をこなしていたメイドを何人も知っている。意外なことにも、何人かの執事も悔し気に顔を伏せていたし、まったくお騒がせな人たちである。 けれども大半の人間は彼らを祝福した。マルクトとキムラスカの橋かけの一つとしても重宝されているらしい。そんな彼らはと言えば、数ヶ月に一度、様はガイの屋敷に訪れ、長期間滞在する。そしてまた家に戻った彼女はさみしげにファブレの屋敷で過ごして、小まめにガイから届く手紙を大切に抱えて、返事のペンを走らせる。そんな微笑ましいカップルを続けている。 そのガイがねえ、と私はウーン、と首を傾げた。「本当にガイがそう言ったんですか?」 嘘っぽいなあ、と思わず唸った。 ガイと言えば、紳士、紳士と言えばガイである。今は様の努力か、本人の努力かは知らないが治ったらしい元女性恐怖症のその男は、基本的に罪深い男であった。 様はもごもごと口を動かして、うー、とどこぞの小動物のように唸り続けたあと、ぽそりと呟いた。「その、やわらかくなったって」「はあ。それだけ?」「……それで、かわいくなったって」 てめえノロケか。 独り身のこっちに対する嫌味か何かか、とバリンとクッキーを噛み砕いた。しかしながら様はと言えば、本気で落ち込んでいるらしく、ぷにぷにと自分のほっぺをひっぱって、恨みがまし気にテーブルの上のお菓子を見つめている。 「私、別に背も伸びてないのに……」 「それは……血筋なんじゃないですかね?」 ルーク様もナタリア様とそこまで身長は変わらなかった。「それなのに、太ったって」「いや、柔らかくなった、ですよね?」 それってちょっと意味が違いません? と尋ねると、様はぷるぷると首を振った。「ガイさんはそんなこと女性には言わないです。だからその、きっとオブラートに」 いや包めてなくね? というツッコミはさておき。 「様、別に太ってないですよ。そもそももっと太った方がいいと思いますよ。ガリガリですし」 「ガッ……」 私の裸って、そんなにひどいんでしょうか、とぽてりと頭を落とす彼女は、現在ネガティブモードらしい。「だから大丈夫ですって。様、かわいいってことは褒めてるんですよ」「そうなんでしょうか……」 でも柔らかいって、しょげる彼女の体を、テーブル越しにぼんやりと私は見つめた。 「っていうか様」 「はい?」 「ガイに抱かれました?」 「へ?」 え、え、えう!? と赤面して、彼女はあたふたと首を振った。「あの、あの、なんで、その」「いやですね。様のお着替えを手伝ってるとき、ときどき赤いマークが」「私、ちゃんと隠しました!」 そう自分で主張したあと、墓穴を掘ったと気づいたらしい。あう、口元を両手で押さえて小さくなる彼女を見て、いやいや、と首を振る。「様は気づいてらっしゃらないかもしれないですけどね、その背中とか。ときどき」 ガイさんのばかあ、と様は声にならない声をあげた。 「だったらそれがあれじゃないです? 様、このごろ体つきが女らしくなったっていうか、色々と大きくなりましたし」 とくにそことか、とちらりと目を向けると、様は真っ赤になって慌てたみたいに両手で胸を隠した。服を着ているとわかりづらいが、多分彼の次に彼女の裸を見慣れているのは自分である。まあ多分だけど。 「そんなに気になるなら、本人に確認してみたらいいと思いますよ」 「で、でも、確認なんて」 ガイさんに太ってるなんて言われたら、私、と本気で泣き出しそうな声を出す彼女を見下ろして、やっぱりちょっと意外だなあ、と思ってしまう。様もそんなことを考えるんだな、と不思議に思った。けれども恋すると女は変わるものなのかもしれない。 「大丈夫ですって。様は太ってないです。もし万一太っていても可愛らしいです。数年お付き合いさせて頂いた私が保証します」 だから様、おかしおかし、とあーんと彼女の口元にクッキーをちらつかせると、様は戸惑うみたいに視線をきょろつかせて、おずおず、と口を開けた。 ぱくりと小さな口でくわえ込んで、相変わらずしょぼくれた顔のままほっぺを膨らませる彼女を見て、なんだか変な感じだなあ、と思う。 もしかすると、ガイはどこぞのお貴族様で、いつか様が彼を好きになって、二人一緒に結ばれる。そんな想像をちらりとしたのは、今では随分前のことだ。 それがまさかの現実に変わってしまって、目の前で実現している。 (まあなんというか) 幸せになったらいいですよね、と彼らの恋物語を思い出して、私は自分の分のクッキーを口にした。 それから数ヶ月後、ガルディオスの屋敷から帰って来た彼女に、お着替えを手伝います、と声をかけると、様はぶるぶると何度も首を振った。 一人でなさるんなら、まあ面倒がなくていい、と部屋の端っこでぼんやり待機をしながら、そういえば、と思い出した。 「様、ちゃんと夜はガイに可愛がられてきました?」 「へぶっ!」 勘違いだったでしょ、と問いかけると、「なんでそんなこと言うんですか」と様は耳を真っ赤にして着替えにぽすりと顔を押し付けた。「いやまあ、一応確認までに。よかったですねー、ここ数カ月、ずっと不安げにしてましたし」 気分もすっきり爽快です、からかい半分で拳を握ると、様は泣き出しそうな声を出して、「私が悪かったです、悪かったですから、からかわないでください……」 しょんぼり頭を落とす18の少女を見て、あはは、と私は笑った。 ***おまけ 「ガイさん、私、太りましたか?」 決心した。そんな顔をしながらひどく真面目くさった顔つきでから問いかけられたとき、「……ん?」あまりの予想外に、俺はひどく困惑した。「あ、あの、そうでしたら、わ、わたし頑張りますから、その」 やっぱりそうですよね、俺の服に指をかけて、こつんと胸に額を当てながらきゅうと小さくなる彼女を見下ろして、「い、いやいやいや」 「なんでいきなり? その、よくわからないんだが」 よしよしと彼女の頭を撫でながらと問いの声を裏返して素っ頓狂にさせると、は暫くの間静かになった。「あの」「うん」「ガイさんが」「うん」「やわらかくなったって、前に……」「…………うん?」 暫く前の記憶を探り起こす。ああ、と頷いた。ちらりとこっちを見上げていたはびくりと肩を震わせて、泣き出しそうな顔をした。 「いや、違う、そんなことは言ってない。その、柔らかいというのは、太ってるって意味じゃなくて、こう」 ここらへんが、と彼女のしりを掴んで、ついでに胸に手を当てる。「さわり心地が、よくなったなと」「前は悪かったんです?」「……なんでそうなる?」 俺の言い方が悪かったのか、と思わずため息をついてを抱きしめた。「あの、ガイさん」「ん?」「おしりを触らないでください……」「うん……」 悪い、といいながら今度は両手で掴むと、「ひえっ」とは体を硬くさせた。「ん?」 おかしい。 「ガイさん? あの……」 ぽんぽん、と抱きしめて確認する。背中を撫でて、腰を触って、数ヶ月前の自身の記憶と比べてみた。「、きみ、ちょっと痩せてないか?」 うんそうだ、と頷いた。 はほんの少し居づら気に口元に手を置いて、「あ、はい、その」 ちょっとだけ、と親指を人差し指に隙間を作った。「……あー」 なんで、と聞くまでもない。 俺は長い溜息をついて、ひどく体を屈ませながら彼女の肩口に額を当てた。「……ガイさん? ガイさ、ひー!?」 よっこいせ、と彼女の膝に手を置いて、縦に持ち上げる。「あの、ガイさん、なんですか、下ろしてください、下ろしてくださいー!!」 お願いです、お願いですから、とぎゅっと俺の首元に抱きつく彼女を無視して、扉のノブに手のひらをかけた。「……えっ」 え、え、とが何度も背中を振り返って、かちゃんと開くドアに目を見開く。「ガイさん、やめ、ちょっと、あの、ひー!」「そろそろ晩飯の時間だからな」「歩けます、一人で歩けますから」 だからってなんでこんなことをするんですかー、と真っ赤な顔で俺の首元に埋めた彼女の背中を撫でた。こつこつと階段を下りていくと、細い目つきの執事がぼんやり顔でこっちを見ている。「ガイラルディア様、お食事の準備ができたのですが」「ああ、今いくよ」 はひたすら無言でぎゅっと俺に抱きついた。「……その、様は?」「ちょっとしたおしおき中でね」 気にしないでくれ、と言うとわかりました、と彼は頷きながらポクポクと足をならして去っていく。 「ガイさん、お、下ろしてください……」 「だから言ったろ、おしおき中だ」 執事さんに、絶対変だと思われました、と小さな声でぽそりと呟くに、「まあ大丈夫だろう」と適当に頷く。 まあとにかく、ちゃんと腹いっぱい食べなきゃね、と笑うとはうーうー唸りながら俺に力いっぱい抱きついた。 TOP 1000のお題 【137 痩せすぎ】 裏ページを見ていない人からしたら唐突にらぶらぶしててお前らいったいなんなの的な空気もうしわけない ::(´ o言o):: 2012/12/07 |