本編48話からのおまけ ***48話(砂漠で倒れたとき) ゆらゆらしている。瞳がひどく重い。(私、倒れて……) 熱い太陽の音が焦げてしまいそうなくらいに響いている。そう、砂漠の中で、倒れてしまった。街が見えた。もう少しだ。そう思った瞬間、体の力がぐんと抜けていくのを感じた。 危ないかもしれない、ということは分かっていた。少しずつ体が重くなって息が辛くなる。それでも、できることがあるのならと体の音素を酷使した。その結果だ。 しっかりと力強く、誰かに抱きしめられていた。ときおり、ゆらゆらと揺れて、まるでゆりかごの中に入っているようだ。ひどく安心する。重いまぶたを必死に開けようとして、そのまま、また眠ってしまおうかと思ってしまった。誰に抱きしめられているのだろう。 倒れるとき、ひどく慌てた声が聞こえた。男性の声だったことは覚えている。ぼんやりと、薄く瞳をあけた。 黄色い、姿。 (もしかして) 「ガイさん……?」 ぎしゃぎしゃ口元のぬいぐるみが、ぬっとこっちを見下ろしていた。「…………」「あ、、起きたのー?」 安定感のあるポーズで、ぬいぐるみがを抱きしめている。「あー、もートクナガで運んじゃうから。ぶっちゃけそっちの方が早いし楽だし」 さっさと行かないと日がくれちゃうしー、とさくさく元気に歩く少女に向かって、静かに頷いた。こくこく。 ***49話(ザオ遺跡から戻ってきたとき) 「ボクも! 強く! なりましたのー!!」 ふりふり、と白いお尻を振りつつ主張するチーグル、ミュウに、うんうんと私は頷いた。初めて見たときは、背中に電池が入った音機関かなにかかと思ったけれど、今でこそ可愛らしいマスコットとして、見ていると癒される。「うんうん、そうなの、すごいねえ」 おいでおいで、と両手を開くと、自分のご主人様らしいルークさんにちらりと迷うように視線を送って、彼からの了承(実際とのころ、こちらを見ずに視線をどこかに向けているだけだったけど)をもらったからか、みゅうっと小さく頷いて、とてとてこちらにやってくる。 かわいい。 とてもかわいい。もっふもふ。 「それで、どう強くなったの?」 「これですの! 第二音素が刻まれましたの! ミュウアタックができるようになったんですの〜〜!!」 いつも浮き輪のように大切に腰につけているソーサラーリングを、ぺちぺちと小さな両手で叩いている。そういえば、見たことのない紋章が増えているような、気のせいなような。 「そっかあ、すごいねえ」 「今度さんにもお見せしますの! もっとご主人様のお役に立てるように頑張りますの〜!」 「そっかー」 今度見せてもらおうかなあ、と言いながらミュウをもふもふと抱きしめる。 このもふもふ、くせになる……っ! 「さん、くすぐったいですのー」 「あ、ごめんね、でもミュウは可愛いねえ」 たまらなく、しあわせなひととき。 「……なあルークなんではミュウだけ呼び捨てなんだろうな?」 「……ブタザルだからだろ?」 「……敬語でもないし」 「しらねーよ」 「っていうかミュウはオスなんだよな、伝えた方がよくないか……?」 「いやだから、さっきからなんなんだよガイ! うぜえ!」 ***48話(上の続き) まあ、チーグルはチーグルで、チーグルだから……と自分自身よくわからない言葉でガイは気持ちを落ち着かせた。明日にはケセドニアに向かう。連日の強行軍だ。なるべく早くアクゼリュスに向かう必要はあるが、体力ばかり削ってしまっても仕方がない。パーティー御一行の意見として、一度宿で休養をとってからの出発となったが、まあ妥当なところだろう。それまで今後のイオンの待遇も保留ということだ。 (まさか、ルークを連れてこんなところにまで来ることになるだなんてね) 今ではすっかりと衰えた男の言葉を思い出す。東の砂漠にいる老人。そう言っていた。「悪いが、ちょいと宿をぬけてもかまわないか? 寄るところがあるんでね」「可愛い子でもいたってわけ〜?」 にひひ、と口元を笑わせるアニスに、「違うって」、と苦笑した。 「すぐ戻るよ」 「おう、あんま道草すんなよ」 「しねーって」 ドアを開けると、からりと小さくベルがなる。空を見上げた。砂漠の夜は、ひどく冷える。 扉を締めた途端に声が遠くなった。宿屋の客だろう。ときおり、笑い声が聞こえる。 足元は、砂だらけだ。 白い息を、吐き出した。 TOP 最後はガイの奥義伝承イベント。挿入できないエピソードが多いため、本編から外れたときはこっちでサクサクあげようと思ってます。 2016/10/27 |