少年はたかたかと道を歩いていた。
襟につくほどの、少々長めの髪をちょいと一つにくくり、必要以上に片手を動かし、しきりに何かを触る。ほとんど何かの癖のように、電柱や、塀や、木の幹を、ぺたりと触った。
突飛する場所はただそれだけの、普通の少年だった。
少年はただ何も気づかず、ぺたりと一人の人間の腕へと触る。
その瞬間、広い歩道にて、彼は目をひんむくように瞬きを繰り返し、自分の手のひらを見詰め、右手に持つスーパーの袋に大量の空き缶をつめている事以外、なんの変哲もない普通の少女からの訝しげな目線に、少年は慌てたように頭を下げた。
お互い無言のうちに、歩数は離れ、少年は少女の背中を何度も確認するかのように視線を動かす。
「どったの?」
少年の隣にて、彼よりもいくらが背の高い、泣きぼくろの少年が、興味深げに首を傾げ、空き缶少女の背へと向かって、「見つけたの?」と視線にて問いかける。
それに対し少年パーカーのポケットへと手をつっこみ、「ちゃうで、藤代」と独特のニュアンスで口を開き、困ったように眉を寄せた。
「ただなんていうんかなぁ、うーん」
「ん?」
「不思議な人間ってのも、おるもんやね」
人生まだまだ知らんことだらけやわ、とカラカラと空き缶のこすれる音へと耳を寄せて、彼はくいっと首を傾げ、肩を落とし、もう一度と少女の背を確認する藤代の、「ボランティアかなー」と呟いた台詞に、どこか曖昧に笑った。
(これからきみ、大変やなぁ。頑張りぃや)
そんな密かなエールを送られた事を、は知らない。