前々からだそうだそうと思ってうっかり忘れてた。
短編で書こうとしたもののこれ長編の方がよくね? って気づいて途中で止まってるテッド成り代わりもどきのテッドと坊ちゃん夢(?)第一話。さわりだけなので、多分これだけじゃ意味がわかりません。
未完結連載数一桁になったら始動するぞ~~(フラグ)
*一応微妙に戦闘描写注意。
*坊ちゃんの名前は固定です
1
誰かが足りない。
そう思うようになったのは、いつのことだろうか。
おそらく、たかだか数年前のことだ。俺はザクザクと山を登りながら、奇妙な既視感を覚えていた。ユズハ・マクドール。五将軍、テオ・マクドールの息子。近衛隊へと入り、ここ、ロックランドへ税金の徴収のためと歩を向けた。「やいやい! お前ら遅いぞ! このノロマども!」 響くカナンの声に、わずかに苦笑した。
小男の叫びに、「はいはい、副官さま! 遅くしろといったりはやくしろといたり! いったい俺達はどっちに合わせばいいんでしょうね!」 パーンがカッと口を開いて声をあげる。「パーンさん、ほらほら、落ち着いて」 山賊さん達に見つかってしまいますよ、とはたはた両手を動かすグレミオの言葉に、「グレミオの言うとおりだ」と紅一点のクレオがため息をつく。
「う、うるさい! とにかくさっさと仕事をおわらせんか!」
「へえへえ」
「パーン」
「あ、坊ちゃん、すみません」
彼の気質は、どうにもまっすぐなのだ。気にするなとばかりに男の背を叩いて、さてと見えた洞窟に目を向けた。この先に、件の山賊が居座っているだとか。彼らがいるばかりに、税金の徴収が滞り、こちらに金を送ることができない。(うそくさい話だ) 心の底では、そう考えている自身がいる。だというのに、とにかくと体を動かした。とにもかくにも、相手を見てみなければ話にならない。
かつり、と一歩洞窟に踏み入れると、ひどく腹の底が重くなった。(ここは) 何かがいる。なんの確証もなく感じた自身に、少々驚いた。「坊ちゃん?」「……いや、少し慎重に行こうか」「はい」 こくりとグレミオは頷き、手持ちの斧を握り締める。
進むごとに、ひどく歩が重くなった。どこかしら感じるこの感情は、もしかすると第六感というやつかもしれない。ずしりと響く、不必要なほどに大きなアリの化け物を俺たちは見上げて、軽い口笛を吹いた。ギチギチとバランスの悪いアリの半身を動かし、ぬとりとした女の肢体がこちらを見下す。ぎしゃぎしゃと、アリ達が楽しげに歌っていた。一面に広がる彼らの陣地に、カナンがまるで小娘のように悲鳴を上げた。ぐるりと棍を回し、逃げ場のない場所の中で馬鹿でかいアリ達を叩き潰した。
薄暗い未来が見えた。自身が今叩き潰したアリの欠片は、のちの俺だ。噛み切られた肉を抱えて、奥歯を食いしばった。覚悟の言葉を口にした。それと同時に、あまりにも滑稽にカナンが頭を抱えて丸まった。ぬっとこちらに向かう影を見上げ、人生の最期というものは、大抵情けないものなのかもしれない。そうぼんやりと考えて苦笑した。
「
唐突に、声が響いた。
黒いローブが、洞窟の崖から飛び降りた。はためくローブを見上げたのは一瞬だ。真っ黒なローブとは対象に、白い腕がぬっと伸びる。ちかりと瞬いた。「ソウルイーターよ……!」 巻き付くように、闇がアリ達を縛り上げる。「飲み込め……!」
それはぐちゃりとアリの臓物を食らった。いつの間にやら半分ばかりとなった親玉の体の断面の肉片がうねうねと動き、膨らむ。首をごろりと落としながら、ちろりとこちらを見つめる紫色の瞳を相手に、気がつけば棍を強く握りしめていた。「今のうちに、はやく!」 初めは男だと思った。けれども、声を聞いてみればすぐに分かる。深いローブをかぶった彼女の口元から表情を窺うことはできないが、すぐさまに俺は頷いた。
「パーン! カナンをおぶってやれ! クレオ、火の紋章を投げつけろ!」
「でも坊ちゃん!」
「文句を言っている場合じゃないだろう!」
すっかり腰を抜かしたカナンをパーンが抱きかかえると同時に、すぐさまクレオは右手を握った。燃え上がる炎の中で、俺たちは駆けた。グレミオが斧を振り下ろし、炎に巻かれるアリを切断する。
夢中で逃げた。はためくローブの少女は、幾度も喉をからせるように喘いだ。「大丈夫?」 言うなれば、彼女は命の恩人だ。返事はなかった。
やっとこさの思いで洞窟を抜け出し、パーンの背中から草の上に転がり落ちたカナンを見ると、何やら拍子ぬけた。吹き出しそうになった口元を押さえ、ぜえはあと息を整えた。
いつの間にやら、彼女に視線が向かった。「きみは……なんであそこに?」 返事はない。ぷいと顔をそむけられて、それだけだ。「答えろ!」 なぜだかカナンが高揚気味に拳を振るった。それでも彼女は口をつぐんだ。
「しゃべりたくないっていうならいいよ。君は俺たちの恩人だ。でもせめて、名前だけでも教えてくれると嬉しいんだけどな」
そう言うと、ちらりと彼女はこちらに顔を向けた。相変わらず、青い空の下であっても、表情がうかがいづらい。「ああ、ごめん。俺はユズハ。ユズハ・マクドール。こっちがグレミオで、パーンとクレオ」 カナンはまあいいだろう、と声をとめると、「カナンだ! こいつらよりも偉い赤月の副官様だぞ!」 自分自身で紹介をしてくれたのならありがたい。
彼女は幾度か逡巡するように、後ずさった。そうして、ぽつりとつぶやいた。
「テッド」
「テッド?」
足りないピースを見つけた。そう気づいた。テッドと名乗るその少女は、自身のローブを握りしめて、ただ体を小さくさせた。
俺達は、テッドと名乗る少女と出会った。年齢なんてしりっこない。とにかく、彼女はテッドだった。彼女は小さく震えていた。かちかちと、奥歯をかみしめて震えていた。