「これあげる!」
ガチャリとドアを開けられて、ピシリと俺の前に突き出された…け、ケーキ?
生クリームの高いハードル
「ししししし渋沢」
「何だ、三上」
「今、今、今が」
「よかったじゃないか」
ぽんっと俺の肩に置かれた渋沢の手の衝撃に、はっと意識を取り戻す。これはもしかして夢なんだろうか、と俺の前に、真っ白い皿の上にのったケーキを渡すだけ渡して、去っていったの残像を追いかける。
「おい、三上?」
「うおっ」
「意識が遠い所に行ってるぞ」
隣のバカでかいルームメイトから落ちる影の中に入りながら、じ、と手の中にある皿を見つめた。
…ヤバい、視界がぼやけてきた。もうココは男子寮だってのに、何でがいたんだとか、そんな疑問もどこかへと飛んでいく。
「おい、三上?」
「うおっ」
「…涙目になってるぞ」
ふつふつと溢れる今にもはち切れそうな気持ちを抑えようとしても、そのまま中でパンクしちまいそうだ。くっと口からよくわかんねぇ声が漏れて、ぶるりと手が震える。今俺は、世界一幸せなんじゃないか、とか、ガラでもない事を考える自分も、どうでもいい。
「なあ、三上」
「なんだよ」
「お前、甘いもの…」
「それとこれとは別だ!」
でも食うのが勿体ねぇんだよ!!
(渋沢が、なんとも表現しがたい顔をしたのは気のせいだ)(ちなみにこの時渋沢は、三上は友人より、女をとるタイプだ、と人知れず思っていた)
渋沢は手を顎の下へと置き、じっと俺を見つめる。
「気持ちは分かるけどな、さっさと食べた方が 」
「ちわーっす、キャプテン!」
「おじゃまします」
バカ犬(と飼い主)が、やって、来た
「あ、三上先輩なにおいしそーなの持ってんですかー?」
「お前には関係ないさっさと出ろ消えろ帰っちまえ」
「先輩って、甘いもの苦手でしたよね、じゃあ代わりに俺が」
「って、笠井おい待」
備え付けのフォークを綺麗に操り、止める間もなくごっくんと。
(お、お前足使う競技より、手を使う競技の方が得意だろ絶対…っ!)
「何考えてんだテメェっ! が作ってくれたケーキ…っ!!」
「あ、コレ先輩が作ったヤツなんですか。わあ、俺ってラッキーですね」
「それわざとだろ。絶対わざとだろ。吐け、全部吐いちまえ!!」
「今さら遅いですって先輩」
「まあまあ、先輩、食べちゃったもんは仕方ないじゃないッスか」
「そうだぞ三上。にはまた作ってもらえ」
「お前ら、出て行きやがれーーーーーー!!!!」
1000のお題 【983 生クリームの高いハードル】

2006.10.5
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