花、ひらひら




【意味ないじゃん!】







ひらひら舞う、ピンクの物体。
入学式にはサイコーの状況だな、と思っても、入学式なんてとっくの昔に過ぎちまった俺にとっては大迷惑。しかしながら、学校の校門にそびえ立つ数十本の花、ひらひら。

実家に帰って久しぶりの寮生活だな、なんて思いながら、来た俺の感想。

(誰だ、あんないっぱい植えやがったのは)

はい終了。


服につく。
口ん中入る。

教室に着いたら、『あら、可愛い亮ちゃん。頭にピンクの花びらが』なんてクラスメートに言われるのはまっぴらごめん。

いっそのこと、花びらが散るまで、登校拒否と行こうか。
部活がなけりゃオッケーだろうが、残念な事に、初日から皆さんお好きなサッカー三昧。

はぁ、と勝手に出ちまうため息を耳にしながら、
一歩進んで、二歩下がって   じゃなくて。


(意味ないだろ、俺っ!!)

はい、もう一回。と足を踏みしめる先に、

(ん?)

ぴょんぴょん跳ねる、小さな物体、一匹。

長い黒髪に、いたる所に桜の花びらをつけて。
そんな花びらが付いた髪は、さながらお姫様のような。
なんて、柄にもない事を考えてる場合じゃない。

時計を見ると、はい、時間ぎりぎり。
別に遅刻してもいいかもしれないけれども、俺の性格なら、遅刻なんてしちまったら、今日一日多分さぼる。いや、絶対さぼる。

取り敢えず、進もうか。と、小さな物体を横目に過ぎ去ろうとした時。

「花びら、花びらー!」

バカだろお前。

(ていうか、遅刻すんぞ)

アレか、お前はその花びらが取りたいのか。

はぁ、ともう一回ため息
(ため息付くと幸せ逃げるって知ってるか、そこの子猫チャン?)(うわ子猫チャンって言っちまったよ俺)(ていうか別に幸せとかそんなジンクス信じてねぇけど)

ずい、とその小さな影を押しのけて、桜の、茶色い色んな色が混じったような、そんな枝に手を出した。

「ほえ?」

何マヌケな声出してんだお前、ってちょっと思って。枝を持った右手に力を入れる。


ぽっきん


ああ、中々いい音出すじゃぇか。

「ほらよ」
これ、欲しかったんだろ。

手を出した先のそのちっせぇ物体は目を見開いていて。
でっかい目をもっとでっかくさせていて。
(ああ、中々可愛い部類かもな、コイツ)

ぷるぷると喜びのあまりかいきなり震えだしたかと思うと


思いっきり、俺の頬をソイツはぶったたいた。


「意味ないだろっ!」
それに、桜さんが可愛そうだ!

うわーんと、
漫画みたいに、バカみたいに大泣きして、
何で、桜さんなんだ、と俺が突っ込む暇もなく、去ってしまって。


ぱしん、と右手で頬を触ってみる。
残されたのは、俺の右頬に微かに残る痛さと熱さ。

「一体なんだったんだ」


予鈴を告げるチャイムが鳴り響く。




教室に着いたら、クラスメートに案の定桜でいっぱいの俺の事をからかわれて。
そんでアイツの話をしたら、桜の花びらが地面に落ちる前に取れたら幸せになるのさ、なんて言われて(お前、どこでそんな事知った)
そんな事俺が知るかよ、ジンクスとか、別に興味ない、なんて思ったけれど、何だかアイツの事は気になるな、なんて思ってしまった。

手の中に残ってるのは、むしり取った桜の花びら。
(…俺が持ってても、意味ないだろ)

はぁ、とため息をしながら思い出した事。そういや、可愛らしい顔をしてたなー、なんて。



1000のお題 832【お決まりのジンクス】