ただ、チャイムがなる、それまでの間


ああ、畜生




「なあ、こいつらってさ、お前が居ない間、どうしてたんだよ」
「え?」

ざわりと揺れる緑の渦へと目を向けて、よくよく考えてみれば、がこの学校に来たのは今年のはずなのに、こんなに綺麗に花壇が咲き誇っているのは可笑しい。なんて考えたのはさっきの事。


「ええ? ええーと、ああ、その事ですか」

何故だか分からないけど、一人納得するようにコクコクと小さく頷き、えっとですね、とほんの少し舌っ足らずな舌を一生懸命回しながら、は答えた。


「自然科学研究会の皆さん方がお世話をしていたそうです」


誇らしげに、いったその言葉


「は?」
「自然科学ってなんか、響きがそれっぽいとか、なんとかで」
「…押しつけらたってか」
「そうですねぇ」
「そんで、それをお前が引き受けたのか」
「そうですねぇ」


これをいっていいのか、俺らしくもなく一瞬口ごもってしまったけれども、ふう、と一回ため息をついて、スパリと言い放った。


「大変じゃねぇのか」


(ああコイツは、この子達の為なら、とかいうんだろうな)
自分で考えた言葉に、自分に傷ついて、バカじゃねぇのか、と喉を掻きむしりたくなるくらいの気持ちを、ずずりと奥へと押しつけた。


「先輩が、いるじゃないですか」


けれども帰って来た言葉は予想もしない言葉で


「…俺は、花なんて分かんねえぞ」
「でも先輩がいます」
「役に立たねぇぞ」
「藤代先輩よりは役に立ちそうです」
「なんでそこでバカ犬が出てくるんだ」
「この頃よく、顔を出しに来るんです」
「(…あのバカ犬が)」


キンコンカンコン、とチャイムの音が響く。
いつもは耳障りな音が、いつも以上に耳障りで。


「ね、三上先輩」


これから違う学年の、違う教室へと、俺とは帰って行くのだと思うと、この年の差が、どうしようもなく


(…バカみたいだ)




考えても、仕方のない事だと知ってはいるけれども


1000のお題 【853 thinking time】




2006.11.12