その白と黒のボーダーラインを背中に


知らないこと




    三上先輩って」

昨日この目でしかと見てしまった事を、先輩に確認するように、ちろりと見る。いやでも、人違い、いや、まさか。いやいやでも。
ううん、とお花を前に一人頭を捻っていたら、先輩に「言いかけてやめんな」とパシリと頭をたたれた。
叩かれた頭は別にそんなに痛くなかったけど、私の決心を奮い立たせるには、十分な力だ(と、思う)


「先輩って、サッカー部だったんですね」

あの白と黒のボーダーラインの服装は。



至ってマジメに彼へと話したはずなのに、ぴくりと彼の眉が歪んでいるのは気のせいだろうか。思わず一緒に歪めてしまった眉を、さすりと触って、んん? とまた考える。

「ちょ、おま、いまさら」
「今更?」
「今更だよバカ!」
「す、すみませ」


それはまるで爆発した火山のように。だって知らなかったんだもん、しょうがないじゃん、なんて私の言葉を遮るように。沸々と煮えたぎる先輩の中の活火山は未だに冷える事はない。「お、おま」とか「ちょ」とか「お、おい」とか微妙に回らない先輩の舌はちょっと面白かった。

「ふざけんな!」
「すみませんってば!」
「なんでしらねぇんだよ!」
「だって!」

だって。次の言葉は見つからなくて、ごくりと飲み込むと、「だって、なんだよオイ!」とさっきよりも収まったらしい先輩に、ぐりぐりと顔を近づけられる。ちょっと、近いんですけど、邪魔なんですけど!


ふはぁ、と大きく諦めたようにため息を吐く先輩。どうしたんですか、と首を傾げてみると、「ホント、今更だよな」と諦めたように呟かれた。ちょっとムカつく。
昨日の、昨日、女子の中できゃーきゃーいわれながら走り回っていた先輩とは、まるで別人のようで、ぐるりと回って後ろを確認してみたら、昨日の後ろ姿とはまったく同じ。

ほんの少し違う所は、一生懸命駆け回っていないこと。


(好きなんだなぁ)

彼を見て、背中を見て、ぽろりと思った。
いやまあ、人にはそれぞれ大切なものがあるのは当たり前な訳で、私にだってあって(現にそれは私の前でゆるゆると風に泳がされた色とりどりの子達だ)

いや、それでも、なんか



(びっくり、した)

気がする。




1000のお題 【202 忘れられない思い出】





2007.02.04