しゃわっと浴びせる小さな水滴の中にぽろぽろと七色の虹が浮かび上がる。


覚えてるよ




つい先日、そう、つい先日の事だ。
ひらりひらりと舞う桜の吹雪にちょこっと我を失った私が、すいっと手を伸ばして、風に遊ばれた事は。その時、黒髪の男の先輩がぽっきりと枝を折ってしまったのも、記憶の中にしっかりと染みている(あの枝は私のお家にて丁寧に保管されている)

あの後、この学校に園芸部なるものが存在する事を知って、しっかりと入部届を出した後、今私はしゃわしゃわと自分で植えたこの子達に、朝ご飯を上げているって寸法だ。
美味しそうに食べてくれるその子達を見ると、ほんの少し、嬉しい気持ちになって、にやりと顔がにやつくのが分かった。


『ほらよ』

渡された茶色い枝。その背中から私の耳へと響いたその声は、クラスの男子とかよりも、もっともっと深く響いた(声変わりって、こんなんなんだろうか)

あの先輩に、未だに会う事はないのだけれども、まあ同じ学校内にいるのは事実のハズだし、気にならないっていえば、嘘かもしれないけど、そこまで自分の足を汚してまで探し回りたい訳でもなく。

(まぁ、適当にしてたら、いつか会うかな)

流れに身を任せるって、とっても素敵な言葉だと思った。


(っていうか、一番の問題は)


顔、覚えてないんだよねぇ。



1000のお題 【692 記憶にございません】

(あ、大丈夫、声なら覚えてるから!)








2007.02.05