「おーい、ちゃーん!」


食べなきゃノン!




ぱたぱた手を振りながら私へと向かってくる彼は、体中どろどろのまっくろけ。思わずくすり、と洩れてしまった笑みに、彼は「ん?」と首を傾げた。


「藤代先輩、きちんと寮に行って、お風呂入って下さいね」
「ん」
「ちゃんと笠井先輩のいう事聞いて下さいね」
「ん」
「晩ご飯のにんじんは、ちゃんと食べなきゃダメですよ」
「…ん」


さわさわ揺れるコスモスを見つめて、冗談まじりにいった言葉も彼にとっては冗談じゃなかったらしい。「あれ、今日ってにんじんの日!?」と暫くしてから顔を真っ青にしてきょろきょろと辺りを見回し始めた。
(っていうか、にんじんの日ってなんだろう)


ちゃん、にんじんが出たら、代わりに食べてくれる?」

きゅるるん、お願い。なんて効果音が聞こえてきそうで、うーん、と私も手を組んだ。

「先輩、私はこの子達は毎日かかさずお水をあげます」
「花に?」
「はい。雨の日は別ですけど」
「うん」
「それはこの子達に必要だからです」
「うん」
「だからにんじんも、必要なのかもしれません」


だから頑張って下さい。

にっこりと、わざとらしいくらい、私は微笑んだ。



1000のお題 【100 満面の笑み】




2006.11.7