「こんにち、は! で、す!」
はにかむ
ピンポン、となったインターホンに、めんどくせぇなとカーペットに寝っ転がっていた体を起こして、なんかの勧誘だったらぶんなぐる。とか思いながらドアを開けた。我ながら、はじめにのぞき窓からでも確認しときゃよかったと激しく後悔した。
ビシッ! と手を垂直にあげて、冒頭の台詞。 驚いたを通り越して、一瞬こいつが何をいっているのか分からなかった。いつもだったら「そうか自分の名前いえるのか。偉いな。それじゃあな、バタン」くらいできたかもしれないのに、今の俺には無理だった。パシッと自分の顔に手をつけてなんなんだコイツ、と本気で頭が痛くなった。
(………とりあえず、御退去願おう)
「お前んち、戻るぞ」
「、です!」
「ほら分かったから戻るぞ」
「、です!」
「何さっきから主張してんだお前」
はあ、と一つため息をついて、上からを見下ろしていた体勢をやめて、ストンと腰をおろした。これでやっとコイツと同じ目線になった。「なあ、なんなんだよお前」す、とに手を伸ばして、気づいたら、目が赤くなっているそいつの目元をぐいっとぬぐう。ホント俺、ガキの泣き顔苦手なんだよ。
といったら、俺が顔に触った瞬間、ちいさく「う」と変な声を出した。なんだよ、と思ったけど、おとなしくぬぐわれてるのでヨシとする。
「お、お前ひゃ、ないも……」
「ん?」
「お前、ちがう」
ぐす、ぐすぐすぐす。(ちょ、オイやな音聞こえてきたぞ)ひっく、ひっく、ひっく(おいおい泣くなってだから)
泣きかけの顔をぐりぐり俺の胸の中にこすりつけて、鼻水ついたらどうしてくれんだ、とちょっと心の底で思ったけど、またため息をついて誤魔化した。の後頭部の、ふわりとした髪の毛をぎゅ、ともって「お前は、ほんとにめんどくさいやつだな」
俺の言葉は、多分コイツをバカにしたものだったはずなのに、は、ぴくんっと小さなからだを動かして、うんうん、と何度も何度も頷いて。
「ん、、めんどくひゃいこっ。まひゃきくんっ」
嬉しそうに頬をピンクにそめて「えへへ」と小さく聞こえた声に、ああそういえば、俺はコイツの名前をいうのも、呼ばれるのも初めてだったな、と思った。
1000のお題 【90 はにかむ】

2007.10.08
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