グシグシグシ。真っ白な紙がどんどん埋まる。
ラクガキ
真っ黒に塗りつぶされた画用紙を見て、俺は一瞬ビックリした。満足げなに、「なぁこれ何だ?」と訊いたら、「まだまだなのよ」と一言。何がまだまだなんだろう。とその真っ黒の、クレヨンで塗られた画用紙をひたりと触る。微かに手の先が汚れた感覚は、確かにクレヨン(久しぶりだ)(保育園の頃、無理矢理握らされて以来かもしれない)
「まさきくんも!」
きゅ、と小さくて柔らかい手のひらで握らされたものは一本の爪楊枝。………爪楊枝?
何のことだと目を白黒させている俺を置いて、は軽くふんふんと鼻歌を歌いながら(何故かピックアップが演歌ばかりだ)(の将来が、俺は時々心配になる)爪楊枝のさきっちょを、その真っ黒な絵にぶすっ。………え、マジで?
驚いたのは一瞬だった。黒い画用紙の下からくるくる現われる虹色に、ああ、なるほど、と思った(二重で、色を塗ったのか)(それで、黒を削れば下地の色が見えてくる、と)
「ね、まさきくんもっ」
くるくるくる。なんだか微妙な感覚が、ぐわりと広がった。昔初めて持ったクレヨンは(無理矢理だったけど)真っ白な画用紙に線を引くたびに、俺にくるくるついて回る。なんでコイツは俺がこの紙に当てるたびに、そこだけ色が変わるんだろう、と本当に不思議に思った事を思い出した。真っ黒でなんだこれ? と思う絵をカリカリとひっかけば、その下から新しい色が出来る。
す、と線を引いた。下から見えるピンクの色と、オレンジの色。「まさきくん、なにかいてるの?」
くるり、と丸い円を描く「……、わかった。サッカーボールだ」
偉いなとの頭を撫でて、「まさきくんは、ほんとに、サッカーすきなのね。もすきよ」って言葉が、妙に耳に残った。
(真っ黒い紙の中で、カラフルな色合いは、不釣り合いだった)(でも俺はソレが嫌いじゃない)
1000のお題 【ラクガキ 598】

2007.11.15
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