「柾輝くんの、おばか」


ゴキゲンナナメ




イキナリだった。選抜の練習が終わった後に、どっぷりと暮れた日を背中にして、久しぶりにとの家へぴんぽんぴんぽん。頭の中の俺の想像では、「まさきくんっ」といいながら、がしっとつっかかってくる様を想像して、開かれたドアに、がつっこんできたとき、後ろへ倒れないようにと、ぐっと足をふんばった。
なのに、なのに。

ふんばった足は空しく、静かに、ぎいい、とドアを開けて、その隙間から、小さく、ソイツは顔を出して。
「柾輝くんの、おばか」


なんでまた、と思ったけれど、別にイラリとするほど俺はガキじゃない。なんでまた。
じっと、隙間から顔をだして、こちらを見つめるの顔が、ほんの少し泣きそうに、ゆがんだ事の方が、俺にとっては衝撃だった。「」どうした       バタン! ………なんで?
勢いよくしめられたドアに、気のせいかひゅるりと冷たい風が吹いた気がした(おかしいな、別に肌寒い季節でもなんでもないのに)

頭の中の想像じゃ、柾輝くん! といって駆けだしたを、俺が久しぶりだな、とぎゅ、と抱き留めて、後ろでおばさんが、うふふと笑って。ああったら、柾輝くんの事大好きなのね    そんなシーンまで思い描いていたはずなのに。


ショックじゃない。別に裏切られたという気持ちもない。ただ、ぽかんと取り残された俺は、どうすればいいんだろうか。
肩にひっかかるバックが、ぎゅ、と重い。ふう、と一つため息をはいて、取りあえず、帰ろう。荷物を置いて、また来よう。踏み出した足に、かちゃりと、小さな音が聞こえた「    ?」

振り返ったそこは、小さな姿なんてなくて、ほんの少しに似た(いや、が似てるのか)おばさんが、「うふふ」と苦笑い。「ごめんなさいね」
くすくすくす、と小さく笑われた後に、練習お疲れ様、といわれた言葉に、「はぁ、どうも」

ったらね、すねちゃったみたいなの」
「すねた?」
「ええ、だって柾輝くん、ずっとにかまってくれないから、の事キライになったんだっていって」
そんな訳、ないのにね


くくっ、と思わず洩れた笑いに、おばさんも、クスクス。「お茶くらい、用意しますが上がっていきませんか?」「ええ、     よろこんで」

気のせいか、暖かい風が、吹き込んだ。



1000のお題 【925 ゴキゲンナナメ】







2007.12.17