あれから、家に帰って、風呂に入って、部屋で、布団の中に入って一日。
考えてみた。
抱きしめたいのはあなただけ
口の中にメシを突っ込んで、メシの味がしない。
右手に箸を持ちながら、思わずボロボロと零してしまいそうになるのを理性が押しとどめた(そんなマヌケなマネ誰がするかっつの)
みそ汁を、ずるずると、口に含みながら、ひとつ。
「なんで俺、あんなバカな事をしたんだ」
雑踏の中で、思わずを抱きしめた。ついでにいうと、信号向こうにいた、と同じ塾の男子を、睨んでしまった気がする。もう半分無意識の仕業なので、言い切る事は出来ないが。 一つここでいわせてもらうが、俺は人混みの中でいちゃつくカップルは好きではない。寧ろ鬱陶しいと感じる。いちゃつくのは問題ないが、人目のつかないトコロでこっそりいちゃつけよというのが、毎回の俺の主張だった気がする。
(いやいや、いちゃつくって誰がだ、俺と誰がだ。誰がを抱きしめたんだ)
あの時俺は、無性にむかついた。にじゃない。いいや、にといった方がいいかもしれない。そして、今はバカな事をしたと考える自分と一緒に、すっきりしたと考える俺もいるのだ(ワケ、わかんねぇよ)
一体、何にむかついたんだ。
(あの男と、がいるのにむかついた)
何で、アイツといることに、むかついたんだ。
(イヤだったからだ。なぜだか、とても)
『柾輝はいいワケ? 俺がちゃんに好きっていっても』
頭の中で、翼の声が聞こえる。何で俺に確認するんだ。好きなら好きといっちまえばいい。俺に確認する要素なんて、一つたりともねぇじゃねぇか(本当にそうか?)そうだよ翼の好きにしたらいい(本当にそうなのか?)俺は、全然、関係、ない(それは、本当なのか?)
口の中でいくら噛んでも、味なんてまったくしない。ぐちゃぐちゃと噛みしめるだけだ。ごくんと、一つ、飲み込んで、
「俺は、」
(そんなバカなと叫びそうになった)
(けれども、そうなのかと認めると、ほんの少し楽になった)
1000のお題 【129 抱きしめたいのはあなただけ】

2008.02.01
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