ダイナミック





「柾輝さん、えっちしよう」

ぐいっと拳を突き出されながらの年下の幼馴染の台詞に、俺は無言で顔を上げた。ぴらぴらと本をめくって、かけたメガネをずらしながらため息をつく。「却下」「えー、えー、えー、なんでー?」

なんでなんでー? と後ろからくっついて、ごろごろと喉をならすに、はいはい、と背中を丸めて本のページをめくった。「お前、犯罪って言葉知ってるか?」「悪いこと!」「よし正解だ」 えらいえらい、なんてガキを相手にしているように頭を撫でると、はまた嬉しげな顔をして、俺の隣に座りながらぽすぽすと自分の膝を叩いた。

よしごまかした。と頷いて、ページをめくった。「ちがう!」「なにがだよ。とりあえずお前制服は着替えてこい」 いつまで着てる気だ、と学年がひとつあがり、スカーフの色が変わった彼女に目を送ると、はむっと口元を尖らせて「柾輝さんが相手してくれないから」「家に帰って晩飯食ってきたら存分に相手してやる」「わーい!」

両手を上げて、ぱー! と部屋のドアから出ようとしたところ、「いやいやいや」とは首を振りながら急転換した。さすがにガキのころとは違い、面倒な知恵をつけてきたものである。目先のものでごまかせない。「だからえっち! 私は柾輝さんがすき、柾輝さんは私がすき、これのどこに問題があるの?」「だからおまえ……」

ぐるりと体の向きを変えると、は憤慨しつつ勝手にこっちの膝の中に座り込んだ。まあ確かにどこに問題が、と一瞬勢いに頷いてしまいそうになったが、違う。「おばさんに申し訳ないだろうが」 呆れながらのこっちの言葉に、は困った顔をして俺の腕をつんと掴んだ。「お母さんなら、柾輝くんならいいっていうと思うよ」「あー」

だからな、と体をのけぞらせて天井を見る。「年齢的に問題大有りだろ」「じゃあいくつになったらいい?」「いくつ?」 うんうん、とが頷く。俺は少し考えた。「まあ、大人になったら?」 それはいくつだろうという話であるが。

はまたすぐに不機嫌に俺の肩をぺしぺし叩いた。「もっと具体的に」 具体的だと。「あー……」 考えた。「まあ、高校を卒業したら?」

それが大人であるのかどうかと訊かれれば、正直俺にもわからない。やっぱり、と首を振ろうとすると、は笑った。そして嬉しげに俺に抱きついた。「わかった!」

楽しみにしてるね、と俺の膝から立ち上がって、ひらひらスカートをはためかせながら扉を開ける女子高生の背中を見て、俺はパチクリと瞬いた。それからまあいいか、と頷いてまたピラリと本のページをめくった。










11月23日はいい兄さんの日だああああッ!! って焦ってたら、黒川の誕生日でもあるって言われたから。

2012/11/22

1000のお題 【389 ダイナミック】