「ねぇ、。何でアンタ、真田なんてヤツ好きなのよ」

某日、某時刻、某……私の家で(あれ、某じゃない)


換気は十分に




「…真田、じゃなくて、真田くん。あんなヤツなんていわないで」

ぷくっと頬を膨らませながら、私をじろりと見つめて、拗ねたように、ぱふぱふと何度もソファーを叩いているのは、私の友人、基親友。
ちょっと地味めな容姿で、ちょっと地味めな性格で、ちょっと地味にぱらぱらと本をめくっている。
多分、これが、クラスでに対するイメージだと思う。

けど甘い。違うんだな、コレが。

そりゃ地味めな容姿なのは事実かもしれないけど、くるくると変わる表情とか、行動とか、色んなトコが可愛らしくて、ホントにホントに私のお気に入り。ああ、なんでクラスのヤツらはこの事に気づかないんだろう、とか時々思うけど、まぁそれはそれでを独占できるから、まぁいっか。なんて思ったりして。

……ちなみに私、の友人Aとでも名乗っておこう。

「ねぇ、ちょっと聞いてる!」
「聞いてる、聞いてる」

パタパタ! 今度は激しめに、がソファーを叩く。真田の事を貶されたのが、よっぽどご立腹だったらしい。私は取り敢えず、「ごめん」と口だけで謝ってみた。そしたらは、うん、これからは、ちゃんと真田くん、だからね。あんなヤツはダメだからね、といって、私がコクリと首を縦に振ったら、にっこりと微笑ましい笑みをくれる。

…うーん、騙されやすい所、おっと純粋な所ものイイトコの一つだ。

で、そのが、とんでもない事を、口走った。


『私、真田くんの事、好きかも』


聞いた瞬間、口を開けたまんま、もうホント、体中の機能が止まるかと思った。に「変な顔してる」とくすくす音をたてて笑われるまで、ホントに意識がぶっとんだ。

え? なにそれ。
聞いてないわよ。何、え? から好きな子が出来た、なんて話、私聞くの初めてなんですけど!

…しかも、何で、真田?

私の中の真田のイメージったら、微妙。ギロッとした目に、誰も近づくんじゃねぇよ的なオーラを持ってて、誰が話しかけても「…ああ」とか、「分かった」とか。
お前人生巫山戯てるだろ、みたいなオトコ、みたいな。

確かに、顔はいいかもしれない。あと、運動神経と頭も悪くないかもしれない。でもね、人間中身でしょ、ハートでしょ! なんで、なんで真田なのよ、と一回問いかけてみた。何処を好きなのよ! って。そしたら、なんていったと思う?

『真田くんって優しいんだよ』

訳が、分かりません!!


私はその瞬間、聞かないフリ、アンド忘れたフリをしようと思った。
けれどもあの言葉を聞いてからというもの、もんもんと色んなものが私の頭の中で大きくなって、もう夜も眠れない。ヤバイ、ヤバすぎる。

よって、今日、私はに訊くことにした。の、真田のなれそめ、その他もろもろエトセトラ(仮定が分かれば、話を潰しやすくなるだろうしね)(え? 潰す気満々だよ)(真田なんかに取られてたまるかよ)

「で、何で好きなわけ?」
っていうか、今でも好きなわけ?


心の底で、ノー、と答えられる事を望んでたけど、の方は、ん? と首を傾げている。ああ、やっぱり、今でも好きなのね。

「何でって…前もいったでしょ? 優しいトコが好きなんだ」
「そこが理解できないの。真田が? 優しい? ハッ! アイツが優しいんなら、きっと今、家中をはいずり回ってるゴキブリの方が優しいわよ!」
「ななななななななーーーー!!!!」

怒るよ、怒っちゃうよ! と私に飛びかからんばかりの勢いで、はぐぐっと手を腰に当てる。ヤバイ、目が本気だ。ここは謝っとこう。ごめんなさい。ぺこり。

「んじゃ、真田、おっと、真田クンの優しいトコを説明してよ」

呼び捨てにしたら、ギラン、との目が光った。ヤベヤベ。
ごめんごめん、と両手を合わせて頭を下げると、「もう」と一言だけいって、「優しいトコの説明か…」と首を捻る。「何、やっぱ難しい?」と訊いてみると「ううん、ありすぎて、何をいったらいいか分かんないの」といわれた。
なんかムカつく。


「……まず最初はね、真田くん、私がクーラーで寒いなーって思ってたら、私から風を遮るように座ってくれたの」

……なんだ、それは
「それ、ただ偶然だったんじゃない?」

負けずに返してみる。


「それでね、真田くん、私がノートとか、重いもの持ってたらね、トコトコってやってきて、ひょいっと取って運んでくれるの」
「……たまたま、重いもの持ちたかったんじゃない?」
「あと、私が図書室で、高いところの本を取れなかったりしたとき、取ってくれたり」
「……たまたま、背伸びしたくなって、ついでに取りたくなったのよ」
「あとあと、私が転んじゃったとき、手を貸してくれたり、」
「……たまたま、手を貸したい気分だったのよ」
「それでそれで! 先生に当てられて答え分かんなかったとき、ちっちゃな声で、教えてくれるの!」
「……たまたま、答えをいいたかったんでしょ」


「それで、最後の一押しはこれかなぁ、」
は呟く。なんだ、真田、いったい何をした真田。

「私、香水みたいなキツイ匂い、嫌いでしょ?」

うん、知ってる、という意味で、頷いた。も続ける。

「近くでね、女子が香水をふきかけてた時、もう私、泣きそうでね、保健室行こうかな、って思ってたら…」
「…思ってたら?」
「真田くんが、ガタッて席から立ち上がって、窓をあけてくれたの。それで、大丈夫か? って訊いてきてくれたんだ!」


……幸せそうなを尻目に、ホントに、一瞬意識が遠くなりそうになった。
何ソレ、真田、アンタそんなキャラじゃないでしょ。一匹狼貫くタイプでしょ。何ソレ、何、をたぶらかしてんのよ。ふざけんじゃねぇよ真田!!

一人イライラと天井と見つめて、会話をしていると、がこちらへと顔を向ける。ずずい。

「ね、真田くんって、とっても親切で、優しいでしょ?」


………とっても幸せそうなに、私は頷くしか、術がなかった…
(もう、が幸せなら、どうでもいいや)







でも真田、いつかしめる。



1000のお題 【916 換気は十分に】




  

2007.05.04