「た、大変だ…っ!」


お弁当の悲劇




ぱくり、と口に指で一つコロッケを運んでから気づいた。
ここ暫く、跡部を、いじって、ない

「ぬおおおお〜…っ」

ぽかんと浮く雲の下でわきわきとお弁当片手に頭を抱えた。一日一イジメの信条が、ガラリと崩れていく。おーまい、ごっと。
あーあ、この頃忙しいからすっかり忘れてた。なんて考えるのは、まったくもって私らしくない。

ふへ。と自分でいうのもアレだけど、微妙に変な笑い方をしながら、またパクリ、とお弁当を指でつっついた。

「何で、箸で食べへんの?」
「げふっ」
「あ、驚かしてもーた?」


手元にあるお茶をぐいっと飲み干して、微妙な関西弁ヤロウに向き直る。うるさいな、なんだよ、余計なお世話。私の言葉にしみこんだ裏は読み取ることは出来なかったらしく(いや、敢えてスルーした可能性の方が高いな)うふふん、と関西弁ヤロウは眼鏡をくいっと指でなおした(ッケ!)

「忘れたんだよ、箸。悪い?」
「あ、だから教室で食べてへんのや」


別に肯定をしたい訳じゃないし、否定したい訳でもないので、またパクリ。
何、なんか用。ちらりと目配せしてみた。


「いや、この頃かまいに来うへんやん、自分」
「大会で忙しいんだよね」
「ふうん」
「何なのよ」
「いや別に」

「何で跡部、かまうんかなって、今更ながらに思ってん」


ずるり、とずれた眼鏡を、ソイツはまたなおした。にやり、と口元が笑っている気がする。…鬱陶しい。イラリとした私の心情を察知でもしたのか、またニヤニヤとソイツは笑って、「そうや、俺これ渡しに来てん」と、とてもとてもわざとらしく、ポケットへと手をつっこむ。
スルリと出された長細い、木ででした    ぶっちゃけ割り箸が目に入る。

「…何で、もってんの」
「たまたまやん。きにせんといて」

激しく嘘くさい言葉に、またちょっと鬱陶しく思ったけど、取り敢えず彼へと手を伸ばしてみた。
うさんくさい眼鏡は、またにやりと笑った。




1000のお題 【107 スランプ】





2007.03,01