黄色い球が飛び交うのを、見てる事しかできなかった。


それは飛んできたボールのような障害にすぎない




負けた。青学に。それも、二度。
チャンスはあった。けれどもその輝いたチャンスは、キラキラと輝きすぎていて、俺には手を伸ばす事が出来なかったのだ。

(跡部も、ふさぎ込みやし…)

どうしたものか。とキリリ、と口を真一文字に結ぶ。
今は既に俺達三年は引退している身だ。
けれども氷帝はそのままエスカレーター式に高校だし、引退といってもまた高校に励む鍛錬って事で未だに俺たちは部活に参加し続けている。
既に、実権は鳳たちに移った。
けれども、実質的にはまだ三年が切り盛りしているといった方がいいかもしれない。

(…せやけど)

肝心の部長が、あれやと、な。


短くした髪(短くされた髪ってった方がええやろか)を気にしてか、この頃フードをよく被る俺たちの帝王。覇気がない言葉の節々に、いつものバカのような言葉を期待する。

ざわりと聞こえる観客の声が耳障りで、ラケットを軽くふってみた。
ぶいん、と音がする。もう一回、するどく。さっきよりも短めに音がした。

(めっちゃうるさいわ)

いつもより、確実に、静かなのだけれど(それはきっと彼女がいないからだ)
いつもより、確実に、甲高い、鬱陶しい女子の声がはっきりと聞こえる(それはきっと彼女がいないからだ)

ピタリと来る事を止めた彼女を、俺は多分待っている。
バシリ、とあの帝王の尻をけっ飛ばして、にやりと笑う姿を瞼の裏に思い浮かべる。

かれども意地っ張りなあの姿を考えて、またラケットを振った。

ぶいん。ぶいん。ぶいん。


(俺が動くしか、ないんやろうなぁ)



ちょうど目の前へと飛んできた黄色い物体を、ぱかり。とぶったたいて。
どないしょ。と誰に聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。






1000のお題 【301 今更何をおっしゃる】





2007.03.02