ある日いつもと同じく跡部さんのおうちに行ったら、パンツ一丁の男が玄関に寝転がっていた。
「い、い、いやああああああ!!!!! ぱんつー!!!」
跡部宅に、小学生女子の絶叫が響き渡った。
番外編 ひつじさんとのであい
そのあとがっくんが小さな体をとび跳ねさせて、「お前こんなとこにいたのかジロー!!」とぱんついっちょうの男の人をぐいっと腕を掴んでずるずるとひっぱる。遅れて侑士さん、跡部さん、カバGさんがやってきた。「なんやちゃんどうしたんや何があったん!?」と侑士さんが私の肩をぐいっと掴む。私はジローと呼ばれたパンツ男(あお色すとらいぷ……!)にふるふると指を伸ばし呟く。
「ろ……」
「ろ?」
「ろしゅつきょう……!!」
「難しい言葉知ってるんやねちゃん」
えらいなぁ。よしよし。
なんてさりげに馬鹿にされた気がするのだが、私は跡部さんをちらりと見た。このへんたいも跡部さんのお知り合いなのだろうか……さすが泣きぼくろだぜ……とごくりと唾を飲み込みつつ拳を握った。そして跡部さんは私の視線に気がついたのか、ふう……と首を横に振る。「おいちび、こいつは違う。露出狂なんかじゃねぇ」そして神妙に呟いた。
さすがに跡部さんもお友達(とおもわれる?)人をへんたい呼ばわりされることは苦しいのかしら? とほんのちょっと反省する。そして跡部さんが続けた言葉を、しっかりと聞くことにした。へんたいだと思ってしまったせめてものむくいである。ゴメンネー!
「今日は暑いからってんで服を脱いで、どこに服を脱いだか分からなくなってグランウンドをさまよってるところを保護した。せっかく服を貸してやったのに、ちょっと目をはなしたすきにこれだ」
なるほど……と私は頷いた。暑さという魔物がつかわせてしまった、ほんの少しの危ない行為という奴なのね………とコクリと頷く。いやちょっと待て、あんまりにも跡部さんが真面目なんでだまされるところだったけれどもそれはまぎれもない「へんたいだぁー!!?」 ふつうあつくても、はだかにはならないです!
しかしながら、リッチマンの跡部さんは、きょとんとした表情でこっちを見た。「なんでだ? 俺様は寝るとき、生まれたままの姿だぜあーん?」
いらない情報がふえました。
改めてぱんついっちょう男に服を着させてソファに寝かせる。そして気付いたのだがこの男、寝ている。ぐーすか寝ている。おい起きろ! 今すぐ起きろ! とかビンタをかましてやりたくなったのだが我慢である。私の中で青色ストライプがちらついたのだが、取りあえず気にしないでがっくんに話しかけることにした。「がっくん、あお色すとらいぷ?」「え?」 …………ちがう……!!
やばい、あまりにもストライプに意識を奪われてしまったからか、思ったことと違うことをしゃべってしまった。強烈である。オウ、モウレツゥ!
それはさておき、基本的にお部屋に集まったら、後はお菓子の時間なのだ。跡部さんがパチンッ! と指ぱっちんをすると、カバGさんがささっとカラカラ小さな鐘を鳴らす。そして急いでメイドさんがやってくる。毎回思うのだか微妙にシュールな光景である。
「今日はアッサムとジャムクッキーをお持ちしました」
「ふふん、いい匂いじゃねぇか」
お金持ちっぽい会話だ……。とりあえず私とがっくんは庶民派なので端っこで「いいおにおいですわね」「いい紅茶を使ってますわねホホホ」とかいって高級ごっこしかできない。ちょっと悲しい。
そしてみんながジャムクッキーに手を伸ばそうとした瞬間だった。私はジャムクッキーを片手に目撃した。気づいてしまった。パンツ男が、ぴくりと震えたことに……!
パンツ男は激しく、そう激しく屹立した。「うまそうだCー!!!!!」 そのよくわからない言語に私は固まった。パンツ男はクッキーに手を伸ばしてぱくぱくぱくっ、と口の中に納めていく。山のようにつまれていたクッキーはいつの間にか消えてしまって、最後に残っているのは私の手にあるこのクッキーだけだ。
パンツ男、いいやよく考えたら今は服を着ているこの元パンツ男はきらりとその最後に残ったクッキーを見つめて目を光らせた。ハッ! と気づいたときにはもう遅い。しゅぱっと光の速さのごとく伸ばされた手に、気づいたら私の中のクッキーは消えていたのだ。すっかり軽くなってしまった手を私は見つめた。ない。
「…………ジローなにしとんねん」
「おいしそーな匂いがしたから思わずー!」
「お、思わずちゃうで」
「ウス」
ない。
「おい侑士、やばいぞ」
「何がやのがっくん」
「あーん?」
ない。
「わ、わたしの、く、くっきー、が」
ぜんぶたべられました
「うおおおおああ、ちゃんが涙目やあかん、あかん涙目やぁああ!!」
「ちょ、おいジロー小学生泣かすなよ……!!」
「ええー? マジマジごめーん」
「軽いでぇ……! 激しく軽いでぇ! 跡部新しいお菓子持ってきたりぃな!」
「ウス!」
「いや、駄目だ。弱肉強食を知るいいチャンスだ。うちの教育方針に口出しするんじゃねぇ」
「……う、ウス」
よくわからないけれども激しく泣きたい気分になり、ついでにいつあなたさまのトコの子どもになったんですかと泣きぼくろを見つめ、「ぱんつ男きらい……」 そして静かに呟いた。
「えー? っていうかナニナニこのちっちゃい子! 跡部の隠し子?」「ありねぇだろ」

アトガキ
アンケートにリピート番外編がありましたので。そういえばジローとまだ会ってないなぁ、と気づき。
……久しぶりに書くとものすごく難しい……! とかギリギリ言いながら仕上げました。こんなものでよろしければ。うーん、2年以上ぶりですねー。驚きだ。
2010.12.27
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