過去編*主人公は出ません。坊ちゃんが過去をループしていたときの話。*意味がわからなかったらすみません *短い 名前も知らない旅人と、相席した。 はじめはパーンに似ていると思った。顔や雰囲気が似ているわけではない。どちらかというとそれは反対だ。目があったとき、遠い過去の彼とくらべて吹き出した。 お客さん、申し訳無いんですが、こちらのお客さんと席を一緒にしてもらえますか。がやがやした店内で、しょげたような店員の声に、俺はわずかに首をかしげて頷いた。それから相手の彼と目が合って、吹き出してしまったのだ。あちらの方は、俺を見下げてきょとんと幾度か瞬いた。「悪い、他意があるわけじゃないんだ」「気にしてないよ」 男は俺の前に座って、ひょいと片手を上げて、料理を注文した。お互い無言のまま俺達は明るい窓の外を見つめた。昼時の通りはいつもよりも元気がある。テーブルに肘をついて、ぺとりと手のひらに頬をのせた。それからすぐに前を向いた。男とまた目が合ったものだから、俺は首をかしげて言葉を探した。 「街の人じゃないよね」 それなのに、声をかけられたのはこちらが先だった。 「ああ。あてもなくさまよっている旅人かな。そっちもそう?」 「うん。俺はカナカンに行こうと思ってるんだけど」 「そしたら入れ違いだな。俺はそっちからやってきた」 くすりとお互い苦笑した。「いいよ、あそこは。酒がうまい」 やってきた料理はこちらの方が先らしい。会話はそこで終了した。それからすぐに男の席にも料理がきた。無言で箸を動かした。食べ終わるのは、やっぱり俺の方が早かった。どうしたものか、とわずかに逡巡した。けれども料理はまだかと客から飛び交う声に、苦笑して立ち上がった。うまかった。きっと人気の店なんだろう。 「それじゃ」 「ああ」 青年はこちらを見上げて片手を振った。「ねえ」 呼び止められた。荷物を背負い直して、振り向いた。「きみは、俺の知り合いを知ってるのかな」 曖昧な言葉に首をかいた。「かもしれないね」「そっか。まあ、こういうこともあるね」 そうか、と男は瞼を閉じた。もぐりと頬にまんじゅうをつめて、赤ハチマキの男は肩をすくめた。 「それじゃあ、俺はお先に」 「うん。じゃあね、気をつけて」 「ああ」 そっちこそ、と頬を緩めた。そろそろ訝しげな瞳を向け始めた店員に、困ったように片手を上げて、金を払って入り口に歩いた。にぎやかな店内だった。
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