完結後
小噺



「一緒の場所ってのはまずいでしょう、一緒の場所は」

グレミオさんがピンッと立てた指を私とテッドとが、ぱちぱちと瞬きをして見つめた。そしてお互いなんのこと? というように目を合わせて、ああ、とがぽんと手のひらを打つ。「俺たちとがってこと? 男女が同じ屋根で寝るなんてってことかな?」

ああなるほど、と私とテッドは頷いたけれど、グレミオさんは頭をぶんぶんと振った。「違います! 様は様の妹君なんですから、そんなことはいまさらじゃないですか!」
確かに、と頷くけれども、なんとなくそのセリフには納得がいなかいような、なんとも言えないような。もテッドも苦笑してゆるくグレミオさんに頷いている。

色々とあり、いつの間にか私はの妹という位置で世界に定着してしまったらしい。きちんと居場所があってよきかなよきかな、ということなんだけれども、やっぱりどこか複雑だ。を見てみると、私の気持ちを察したのか、にこっと微笑んで、「お兄ちゃんって呼んでくれて構わないんだよ?」と爽やかな笑みを浮かべながら両手をサッと広げて、カムヒアーの形を作った。すかさずのみぞおちにテッドの拳がとんだのだけれど、はササッと体を逃してくるりと反転したあと、私の背中から肩にぽん、と手を置いた。

そしてグレミオさんをちらりとうかがう。「で、何がまずいんだい?」「だ、だからですねぇ……」 もごもごっとグレミオさんが口ごもる。私たちは宿屋の一室で顔と突き合わせてこしょこしょと話した。

「お嬢さんと、テッドくんは……そのう、そういう関係なんですよね? 私たち、お邪魔虫じゃないですか!」

ぽぽっと顔を真っ赤にして主張したグレミオさんの言葉を、私とテッドは瞬きを繰り返した。がぶばっと噴出して、「あ、ごめんグレミオ本気にした? いやあれ、俺の冗談だから」「えっ」「ねえ、ふたりと……も……」


さっと不自然に視線を逸らした私たちを見て、は少しずつ、言葉を濁らせた。一番最後、ゆっくりと沈黙が訪れた後、彼は静かにつぶやく。「……あれ、マジで? もうなっちゃった?」 ははー、とは関心したように息をのみこんだ後、「テッド、きみ意外と手が早かったねぇ!」「は、はやくねーよ!」

はやくねーったら、まだなんもしてねぇっつうの! ちょこっとしか! と真っ赤な顔で否定し続けるテッドを見ていると、こっちまで恥ずかしくなってきた。初めはあわあわと動揺していたグレミオさんも、ゆっくりと母親の顔に代わりながら、すっとテッドの肩に手のひらを置く。

「テッドくん、もし何かがあれば、そっとお嬢さんとお散歩に出てくれても構わないんですよ。私たち、多少の気を利かせるくらいの心づもりはありますから」
「そうそう、多少衣服が乱れてても、暑かったのかなぁって思うようにしとくからさー」
「思わんでいいわ!」

なんなら今すぐにでも、出ていこうか? ととてもいい笑みでからかい続けるに、テッドは両手を顔につけて、「か、勘弁してくれよォ……」と静かにつぶやいた。あっちにあそこまで照れられてしまっては、こちらはむしろ冷静になるというものである。まったく、純情なおじいちゃんだなぁ、と苦笑していると、私はと目があった。

彼はほんの少しだけ肩をすくめて、まあ、よろしく頼むよ、とでもいうように、片手を軽く振った。なので、私も手のひらを振りかえした。
もちろん。
よろしく、たのまれました。






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2011.07.24
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