*主人公の外見的特徴の話につき注意
完結後2
小噺
「今更なんだけどさ……ちゃん、それ……何?」
きょとんと首を傾げたは、ぴしりと人差し指を私に向けた。うん? とこっちもクエスチョンマークを出して後ろを振り返っても、お食事中のお客さんばかりである。もぐもぐスパゲッティーをいただいて、隣でお魚をお腹でお腹をいっぱいにしていたテッドも私と同じく、意味をはかりかねたらしいテッドはお箸をくわえたまま、とは反対方向に首を傾げた。さすがの300歳か、東洋の文化までマスターしているらしい。でもちょっとお行儀が悪い。
グレミオさんはグレミオさんで、宿のシチューを頂きながら、「なるほどこれはこれは、魚をダシの隠し味ですね……!」と瞳をきらめかせている。
「だから、メガネだよ、メガネ。今までしてなかったでしょ?」
「え?」
宿の料理人さんと共にシチュー講座に出かけてしまったグレミオさんをさておき、(一部見かけだけな)子ども達はそそくさと部屋に戻っていた。は相変わらず私のメガネが気になっているらしく、「えーっとだからね、私がだったときは、を借りてたから、視力もよくなってたんだけど、今はじゃないから……ええい、ややこしい!」「つまり、元のに戻ったってことだよな?」「そうそう」
テッドの言葉に私は頷いて、「なるほど、面白いなぁ〜」と他人ごとのようにはにやにやしている。面白いで片付けないで欲しい。「運動神経だって前はよくなってたけど、今は普通に戻っちゃってるし……まあ、これが元々なんだけど、なんだかなぁ」「髪の毛も伸びたしな」
私の隣の椅子に座っていたテッドが、私の髪の毛の先っちょを、くるくると片手でいじった。まるで美容院で髪を触られるような、くすぐったいような気持いいような気持ちになって、思わず瞳を細めて、けらけら笑うと、がフッと暗く微笑んでベッドにぎしぎし腰掛けながら、「……ナチュラルなボディタッチですよ奥さん……」と一人で呟いた気がするのだけれど、あんまりはっきりと聞こえなかった。
「まあそれはともかく。ちゃんって目が悪いんだ? どれくらい?」
「どれくらいって……まあ、ないとちょっぴり不安なくらいかなぁ」
ひょいっとメガネを外すと、途端に輪郭がぼやける。「近視? 遠視?」「どっちかっていうと遠視……ってあー!」 がひょいっと私の手からメガネをひったくって、ひょいっと自分の顔にかけた後、「うーん、まあある程度ぼやけるなー」と私のメガネのツルをちゃちゃっと人差し指でずらした。「か、かえしてー!」 それがないと不安なのだ!
ぼやける視界の中で、「返してよー! 目がいい人がかけると悪くなっちゃうんだよー!」と一生懸命に手を伸ばしても、はにやにはするばっかりで、一向に返してくれない。からかわれているのだちくしょう。「もう!」と力いっぱい彼に向かったとき、私はひょいとバランスを崩して、をベッドの上に押し倒してしまった。
お布団の上で私はだらだら汗を流しながらと見つめ合った。これではまるで痴女である。は片手を頭上に付き出したまんま、真顔だった。それがまた怖い。「ご、ごめんすぐにどくねっ」と体をどかそうとした瞬間、彼は私のメガネを持っている反対の手でぎゅぎゅっと私の腰を抱きしめて、すりすり頬ずりをしてきたのだ。
「おお、妹よー!」「ぎゃあああ」
なんばすっとねー!? と意味のわからない言語を叫んだ瞬間、私はべりっと彼からはがされた。私の肩に手を握ったテッドが、じろっとを睨んで、無言のままにの顔面の右横にパンチを付き出した。ぼすっ
ベッドからは平和な音が聞こえるけれども、実際のところはそうではない。ぼすっ、ぼすっぼすっぼすぼすぼすぼすっ 右、左、右、左、右、左! と突き出されるアンパンチに、「ぎゃああああ、ちょ、ちょっとテッドくん!? うわ怒ってる。これは怒ってる。冗談だって、ちょっとした冗談だってうわああごめん、ごめんってー!!」
ぼすぼす響く音と一緒にの懇願する声を聞いて、テッドの方が優勢だなんて、なんだかめずらしい光景だなー、と視界がぼやける自分の両目を、よしよしと撫でた。
「テッドごめんってー!!!」
2011.08.21
1000のお題 【327 因果応報】
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