完結後
子どもペンギン、ひよひよです
完結後から、十数年後の未来です。
主人公達の子ども(男の子)、名前固定ネタです
主人公やテッド達は回想シーンのみしか出てきません。
4を未プレイの方には優しくない内容です。
他短編で、主人公たちは不老ではないのかもしれない、と書きましたが、今回は不老verということでお願いします!
かなり特殊ネタだと思うので、ムリムリ! と思われた方はブラウザバックお願いします。
「あー……」
欠伸をしてみた。家出をして、「ひの、ふの、み……」 指を一本一本折りたたみながら、ウーン、と腕を組む。「心配、してるよなあ……」 とりあえず、置き手紙は残して置いた。母親の顔を、父親の顔を、ついでにお世話になった、半分家族のような人のことを思い出して、母さんと父さんよりも、多分あの人が一番心配してるんだろうなぁ……と俺は重い溜息をついた。「グレミオさん、今頃泣いてるんじゃないかなぁ……」
ぼんやり空で瞬く星を長め、俺は長い溜息をついた。冗談抜きで、今頃マジ泣きしている姿が目に浮かぶ。
母親の名前は。父親の名前はテッド。ついでに言うと、お世話になってるおっちゃん、お兄さん? の名前は。この人は母さんの兄さんらしくって、俺にとっては伯父さんな訳だけど、母さんとはあんまり似てない。
自分でも言うのも何だが、うちの家庭は、ちょっと変わっている。何が変わっているかというと、正直人には言い辛いのだが、俺は子どもの頃から、同じ場所に二年といたことがない。点々と居場所を変えて、友達もできないような、そんな生活を続けるうちに、両親は夜にこっそり話しあって、「グレミオさんに、あの子を預けよう」そう言っていた。でもやっぱり、と母さんは首を振って、父さんも頭を抱えてた。
母さんと、父さんと、のおっちゃんと、グレミオさんと俺。五人で旅を続けているのに、グレミオさんに預けようとは、一体どういう意味だろう。
俺にはまったく理解ができなくって数日ぐらい考えこんで、考え続けて、熱が出た。ばたん、と倒れて、ベッドにくくりつけられた俺は、心配する母さんと父さんの両手をぎゅうっと握って、「一緒じゃないと、やだよー」と鼻水を出しながら泣いた。そしたら、母さんの涙腺もぶあっと緩んで、俺をぎゅうっと抱きしめた。そしたら母さんごと、父さんが俺を抱きしめた。
俺は母さんも父さんも、さんも、グレミオさんも大好きだ。だから別に、居場所を点々と変えることは気にならないし、むしろ旅は好きだった。けれども大きくなるにつれて、俺の中の当たり前は、他の人の当たり前とは違うことに気づいたのだ。
母親の名前は。父親の名前はテッド。ついでに言うと、お世話になってるおっちゃんの名前は。・マクドール。
十数年以上前の、戦争の英雄である彼の年齢は、未だに二十歳に届くことはない。父さんも母さんも、父母ではなく、兄と姉と形容した方が近いであろう年齢だった。ただグレミオさんと俺だけが刻々と年を取っていく。
(真の紋章……)
他人にとってはお伽話であろうとも、俺の中では、はっきりと存在するものだった。
(不老の、紋章)
それはゆっくりと、周りと彼らの時間を断絶してゆく。
***
「おまえー! ぼさっとしてんじゃねー!!」
ひゅんひゅんっ、と俺の飛ばした弓矢が、魔物に突き刺さる。旅人はハッとしたように、両手の双剣を振るわせ、残りの魔物を真っ二つに切り裂いた。なかなかの腕だ。なんだ、俺、手助け損じゃね、と思ったけれども、そこらへんを認めるとプライドがすたる。俺はつーん、と口元を尖らせて、「はんっ、ま、中々いー腕だけど? もーちょいで怪我するとこだったぜ。俺様に感謝しやがれよ!」
ふんっ、と俺は父さんに似て年の割には小さい背をふんぞりかえらせると、目の前の旅人の兄ちゃんは、赤いハチマキをはたはたさせて、「そうだね、ありがとう」とニコッと笑った後、俺の顔を見つめた。そしてしばらく瞬いた後、「小さいのに、結構いい腕だねぇ。いくつ?」「ち、ちいさくねーよ! 13だ!」「十分小さい小さい」
アッハハハー、と笑いながら、そいつは手袋をつけた片手をハタハタ動かす。「ちいさくねー!」「はいはいごめんごめん」 悪びれもなく、その旅人はモンスターの皮をはぎ、てきとうに袋の中につめると、君もいる? というふうに袋を差し出した。俺はしばらく考えた後、腰からナイフを取り出して、自分も同じく魔物の毛をそぎ落とす。「お、慣れてるね」「まーな」 これくらい、何度もした作業である。
魔物の素材を袋につめこみ、これを売れば、しばらくの路銀は稼げるだろう、と立ち上がり歩いたとき、その兄ちゃんも同じく俺の隣にくっついた。「…………おい」「ん?」「なんでこっち来んだよ」「別に、俺もこっちが目当てでさ」「…………離れろよ」「旅は道連れ」
世は情けー、と、にこにこ笑っている表情が、どうにもさんを思いだして仕方がない。やりづらい。俺は軽く舌打ちをして、「勝手にしろ」と吐き捨てると、そいつは俺の顔を興味深げに見つめた後、「ねえきみ、名前、なんていうの?」「どうでもいいだろ」「じゃあ今から名無しのゴンベエね。ゴンベエくんさー」「アルド! アルドだ!」
ゴンベエじゃねぇ! と睨むと、そいつは一瞬どこぞに表情を落としたように、俺を見つめた。な、なんだよ、と眉を顰めると、なんでもない。とすぐさまそいつは笑って、「そう、アルドくんね。俺の名前は。よろしく」「何をよろしくすんのか、マジ理解不能なんだけど!」
そいつとの出会いは、案外適当なものだったけれど、なぜだか長い付き合いになってしまった。あっちに行けよ、と言っても、はニコニコ笑うばかりで、とうとう俺は嫌気がさして、無視を決め込んだ。さて、いい金儲けの方法がないものか、と酒場に乗り込んで、護衛の仕事を探してみても、「あんた、子どもでしょ?」「子どもじゃねぇ!」「いくつ? 10くらいだな」「13だ!」「ほら子どもだ」
子どもに出すもんはミルクしかないよ、とシッシと手のひらで払われ、俺は思いっきり頬をふくらませていると、後ろからにゅっと顔を出したが、「じゃあ俺は?」 店主はマジマジとを上から下まで見つめた後、コップをきゅきゅ、とふいた。「ま、いいだろ。どうせ人手不足だったんだ」「やった。ところでこの子、結構いい腕してますよ」 おすすめです、とがポンッと俺の肩に手を置いた。
店主は片方の眉をくいっと上げてほんの少し考えた後、「ま、いいだろ。あんたが面倒みるってんならね。そのかわり金は一人と半分だ」「はーい」
おい、俺はオウケイしてないぞ。
ぷーっと頬をふくらませていると、はニマニマ笑いながら、俺の頬をつんと指でつついた。「おっと。こんなところにふぐさんが」「あほっ!」
結局、どれだけ腕が立とうと、今の自分の見かけでは、何をすることもできないのだ。俺はぐるぐると鍋の中のシチューをかき混ぜ、はーっと夜風に頬を吹かれながら、手のひらを温めた。「おらー、できたぞ、やろうどもー!」「「「うおー!」」」
めしだー、めしだー! と飛び込む商隊と護衛の男連中に、俺は長いため息をついた。ついでとばかりに果物を取り出して、デザートがわりにむいてやるかとくるくるナイフを動かすと、手の中にシチューの取り皿を持ったが俺をじいっと見下ろしていた。「アルドって、ナイフの扱い、上手いねぇ。年の割には結構なんでもこなすよね」 当たり前である。
俺はふんっ、とほんの少し鼻をふくらませて、「まーな! なんてったって、解放戦争の英雄の・マクドール……」「うん?」「…………の、ファンの伯父さん自込みだからなッ」 危ない。
「へー、本格的な伯父さんだねー」「おう」 なんたって本物である。さんは何でもこなすし、多少金に汚いところはあるが、そのせいでというか、おかげというか、俺も金の計算は得意だ。
ぼんやり俺の手元を見ていたに、「おい、さっさと取りにいかねーと、なくなるぞ」「旨いもんねぇ、アルドのシチュー」「まーな! なんてったって、・マクドールの従者であるグレミオさんの……」「おお」「……ファンの、隣の家のおばさん自込みだからなッ」 ねーよ。
げほ、げほげほ、とごまかすと、はぼんやりした顔のまま、「おばさん、マニアックだねぇ」「……うん……」「今度のデザートはお饅頭がいいなぁ」「材料が入ったらな」「アルドって意外と面倒見がいいよね」「褒めてもおかずはおまけしねーぞ」
さてできた、と皿の上に乗せた果物を、「おーい、こっちにもあんぞー」と皿を片手に持ち、ついでとばかりにの皿もひったくって、自分の分と合わせてシチューを注ぎ、持って渡すと、「うーん、本当に、意外と面倒見がいいんだよなぁ」とは唸るような声を出していた。「本当に13?」「嘘ついてどうする」 どっちかというと、下に見られることの方が多い。
「うーん」 とは唸っているのだが、そういえばこいつはいくつなのだろうか。二十歳はすぎていないように見える。けれども、案外物腰はしっかりしているし、こいつの剣の腕は中々だ。中々というレベルではなく、こっそり実力を隠しているように見えるが、実はかなりの凄腕のように感じる。
俺はさじを口の中にいれながら、「そういうお前はいくつなんだよ」「え」 驚いた、というふうに、はパチリと瞳を瞬いた。「えー、えー、ええー……」 うーん? と彼は首を捻って、「覚えてないなぁ」「物忘れの激しいヤツ」「よく言われる」
ははは、と笑うこいつに、随分年下扱いをされているような気がした。
何だかムッとして、俺は口の中にシチューをかきこんだ。
「アルドってさ、お父さんがつけた名前?」
俺が弓矢を弓につがえていると、ふとは首を傾げた。「ああ?」 俺は思わず妙な声を出して、弓矢から手を離すと、真っ直ぐに飛んでいった矢は小さな野うさぎに縫いつけられ、俺はそいつの耳二本を持ちながら、ナイフを取り出し解体にかかる。「なんで、いきなり」「別に? 弓矢はお父さん自込み?」「そうだけど、なんだよ」「いや、随分いい腕だなと思っただけ」
あらそう。アリガトウゴザイマス、と俺は適当に返事をすると、の話は未だに終わっていなかったらしい。「っていうかさ、アルドってなんで家出してるの?」「なんでって……」「お父さんとお母さんの仲が不仲とか」「それは違う!」 寧ろこっちが見ていると、辛くなるくらいに仲がいい。
じゃあなんで? とは瞳を優しげにして、俺に問いかけた。けれども俺はグッと唇を噛んだ。「別に、ただの反抗期」 嘘だ。
俺は、両親の年を追い越してしまうことが怖かった。
グレミオさん泣きついたことがある。何で自分とグレミオさんだけ、どんどん見かけが変わっていくんだ。なんで、母さんと、父さんと、さんは、ずっと変わらないままなんだ。
彼ら本人に言うべきではないことくらい、小さな俺だって理解してた。でも寂しくて寂しくて、結局グレミオさんに泣きついた。
グレミオさんは、少しだけ困ったような顔をして、真の紋章という名を教えてくれた。それをつけると、人は不老になるという。紋章は争いを巻き込み、辛い未来を創り上げる。不老であることは呪いであり、人からは、そうであることを隠さなければならない。だから自分たちは、点々と旅を続けている。
じゃあいつか、おれが先にしんじゃって、かあさんととうさんは、残っちゃうの?
そうですね、とグレミオさんは頷いた。全部を隠さないで、はっきりと答えてくれたことは、まるで対等に話をしているようで嬉しかった。怖いですか? とグレミオさんは俺に訊いて、俺は首を振った。ただ、(かなしい) みんなを残して勝手に死んでいくことが、とても悲しい。子どもである自分が先に消えてしまうことが、とても。
グレミオさんは俺を抱きしめて、私もそうです、と頷いた。ですから、私達はうんと長生きをしましょう。そして、うんといい思い出を作りましょう。たとえ、死んでしまったとしても、魂はそこにあります。その魂を、素敵な色で思い出せるように。
大丈夫、アルドくんは、まだまだ時間がたっぷりありますから。大丈夫です。
そう言ってグレミオさんは俺の背中をゆっくりと叩いてくれた。ほんの少しだけ、気持ちは楽になったけれど、やっぱり俺は怖かった。どうしていいかわからなくなり、数年経ち、俺は手紙を残して旅に出た。
(…………本当に、ただの反抗期なのかもしれない)
これは、はしかのようなもので、後になって思い返せば、なんて馬鹿なことをしたんだろう、と思えてしまうような。
わからない。
「アルドのお父さんとお母さんにさ、俺、会ってみたいなぁ」
「はあ? 何言ってんだよ。だめだめ、うちの両親は人見知りなんだ」
「ふーん。いやあ、結構、俺と相性が合いそうだよ」
何を根拠に、と俺は思わず吹き出した。するとは、「だって」と当たり前のように、「アルドと、きみのお父さん、そっくりじゃないか」 俺はほんの少し瞬いた。
確かに、俺は父に似ていると言われることが多い。外見であり、性格でもあったけれど、それをなんでこいつが知っているんだ。
俺はほんの少し考えて、どうせいつもみたいに適当な当てずっぽうを言っているに違いない、と気づいてしまった。相手をするだけ馬鹿らしいというものだ。「はいはい、そのうちねー、そのうち」「あ、本気にしてないだろ。いや本当に、相性合うって。手土産はマグロでいい?」「……なんでうちの父さんの好物知ってんだよ」
なんとなく、なんとなく、と両手をひらひらさせるそいつを見つめて、俺はハー、とため息をつきながら、頬についたうさぎの血を手の甲でぬぎとった。「ま、そのうちな」
まったく。変なヤツと知り合いになったもんだな、と苦笑した。
それは、ちょっとした偶然のお話である。
2011.09.28
1000のお題 【204 親の顔が見てみたい】
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