完結後
子どもペンギン補足
子どもペンギンの補足小説です。
テッドと坊ちゃんしか出ません。多少生々しい話が出ます。
他短編で、テッドは子どもを作る気がない、と言ってたのにアレー? というのを補足的にゴウゴウ
産む産まないの話題なので、不快に思われた方はブラウザバックお願いします。
「、子どもができた」
死んだような顔をしながら、唐突に、親友にそう言われた。俺はぶぼっと勢い良く水を吹き出して、ボタボタになったテーブルをじっくりと見つめた。「…………は?」 いや、っていうか、俺、こういうリアクションするキャラじゃなんだけど。
テッドはぼんやりした瞳のまま、テーブルについた。そしてテーブルの端に置かれていた布巾を俺に渡した。俺は思わず受け取りながら、こぼした水を拭く。何をやっているんだ。
テッドは顔の前に両手を組んで、頭を下ろしていた。表情は見えない。周りではざわざわと陽気に食器が合わさる音がする。カンカン、カチャカチャ。げらげらげら。
そんな中で、自分たちの空間だけがぽっかりと取り残されているようで、どうにも奇妙な気分になった。「………誰の?」 わかりきっている疑問だったが、今の俺はどうにも一つ一つ確認しなければ、ぐるぐると混乱してくる。おいおい、ちょっとこれは珍しいな、と緑のバンダナを外してテーブルに置いた。拭き残しの部分にべちゃっとバンダナがくっついて、「あ、ーああー、あー……」と情けない声を出す。ちょっと俺、落ち着け。
「俺と、の」
「まあ、そうか。っていうか、その、してなかったの?」
避妊、と声を出そうとして、テッドが唇の端を噛んだのがわかった。「俺が、失敗したっていうか……」「あー……」
思わず、背もたれに背をつき、顔を見上げた。
もしかしたら。そんなことを考えたことがなかった訳ではない。男女の関係があるのなら、そこに付随したものもくっついてくる。それがよくないといいたい訳ではない。寧ろ祝福されるべきことだ。けれども俺たちの場合、手放しで喜ぶことのできない事情があった。(俺たちは、年をとらない) 一体、どれくらいの間、旅をし続けたのだろうか。グレミオにはほんの少し、顔に皺が刻まれるようになった。
俺は、子どもは作る気はない
そう、親友は言っていた。親より子が先に死ぬ。これ以上に不幸なことがあるだろうか。彼の気持ちは、痛いぐらいに理解しているつもりだった。テッドはただ眉根を寄せ、苦しげな顔をした。「俺に、懺悔でもしたいの」 少しだけきつい言葉を言ったかもしれない。そうかもしれない、とテッドは小さく呟いた。
馬鹿だなあ、とかアホだなあ、とか。そういう言葉は、俺に言われるまでもなく、自分自身で何度もごちたに違いない。だから別に、俺は何を言うことなくテッドを見つめた。
「きみ、子どもは作らないって言ってなかった」
さて、彼らは一体どうするのか。
テッドは口元を押さえた。「俺」 そして、ぽとりと言葉を落とした。「俺、し、知らなかったんだ……」 声が震えている。「何が」 短く吐いた言葉は冷たく響いた。意識をした訳じゃない。
そしてテッドは、顔を両手で覆った。「こ、こんな、嬉しいこと、だった、なんて」「ハ」
いきなり何いっとんねん。
「子どもができることが、こんなに、嬉しいことだったなんて、知らなかった。だ、だってこ、子どもだぞ。俺と、の。おれ、こんな、本当に、う、うれしくて」
テッドは首周りの布を、ぐいと引き上げ、口元を隠した。「うれしいんだ」 またぽつりと呟いた。小さな声のくせに、妙に耳に残った。俺は思わず頭を抱えた。「いや、そういうことは俺じゃなくて、本人にいいなよ……」 何だか告白されているようで、こっちが照れる。耳が赤くなっているかもしれない。「あ、いや、にはもう言ったけど」「言ったんかい!!」 思わず布巾をテーブルに叩きつけた。
何なんだよ君、ごちそうさま過ぎるんだけど、と俺は甘い気分を詰め込むみたいに、湿ったバンダナを口元に当てた。はーっと勝手に口から息が漏れる。「で、産むの」「うん」「早いな、決めるのが」「いや、俺じゃなくて」
俺はふいと片眉を上げた。「が」 困ったような顔をするテッドを見て、なるほどと頷いた。
「こういうとき、女の子の方が強いよね。男は情けない」 本当に、と納得するように、テッドはため息を吐いた。
「っていうか、大丈夫なのかね、一応俺たち、所持者なんだけど」 真の紋章の、という言葉は、さすがにこの場で言う勇気と無謀はない。周りをちらりと確認した。「ああ、前例はあるし、俺たちは、三人で呪いも少なくなっているはずだから、問題はないと思う」「まあ、そうか」
そうか、と俺は頬をかいた。何故だろうか、奇妙にくすぐったい気持ちになった。「あっ」と唐突にテッドが瞬いた。どうした、と彼を見ると、テッドは妙に慌てていて、「ご、ごめん」「なんだ、何かやっぱり悪いことでも」「い、いや、これ、お前とグレミオさんに報告するのは、と一緒にって決めてたんだった。あー、あー、わりー、その、今は知らないフリしといてくんね?」 一生のお願い!
ぱしんっと両手をあわせる親友を見て、何やってんだ、と呆れたような気分になってしまった。「はいはい」「おー! さすが親友」「気が向いたらってことで」「い、いやいや。よろしく頼みますよ」 に怒られる、としゅんと耳を垂らす彼を見て、何だか笑ってしまった。笑うなよ、とテッドは口元を曲げた。
「テッド」「うん?」「おめでとう」
テーブルに膝をつきながら、親友を見つめた。彼は一瞬キョトンとしたように瞬いて、うん、と、テッドはほんの少し瞳を細めた。勝手に、お互い口元がほころんだ。
これから、きっと、彼らには色々と苦労があるだろうけれど
(命は、こうやって、つながっていくんだな)
ひとつ、
ひとつ。
1000のお題【382 ベストフレンド】
2011.10.12
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