■ お正月リクエスト、トウヤと学校帰りに買い食い。 ■ テストの結果を話しながらほのぼの。 学校帰り 「」 からから、と開けられた教室のドアからこっちに向かって手を振っている。私は思わず周りを見た。相変わらずにこにことこっちに手を振っている先輩に、口元をひくつかせて、重い溜息を、ひとつついた。 「だから、一年の教室に来ないでください、深崎先輩」 「じゃあ、今度から校門で待つよ」 「そういう問題じゃないんですけど」 「そういう問題でしょ?」 「だったら今度から私、裏門から帰りますから」 本気ですから。とつぶやいて、ため息をついた。その隣では、私とおんなじように頭を振って、「深崎先輩じゃなくて、藤矢だって言ってるのに」と持論を用いて凹んでいる先輩が、思わせぶりにチラッとこっちを見ている。即座に無視をした。「あらら」と、先輩が軽い口調で肩をすくめた。 もっと言うなら、幼いころからの幼なじみで、確かに小さな頃は籐矢くんだとか、籐矢先輩だとか言っていたけれども、さすがに部長さん相手に、それはどうかと思うのだ。高校生になって、どうにも気恥ずかしい気持ちがある。というか、とても言い辛い、考えづらい、ついでに言うとこっ恥ずかしい問題でもあるのだけれど、私と先輩が、まあ、そういう関係と勘違いする生徒もちらほらいる。 それは先輩がこんな風に用事を見つけてはこっちの教室にやって来るし、付き合っているのかと直接訊かれれば、私は違うと答えるものの、先輩は含み笑いをするものだから、勘違いも仕方がないかもしれない。「ちゃんと否定してくれませんか」と、言っても、「肯定はしてないじゃない」とお決まりなセリフを言われるだけだ。 (まあ、本当に嫌なら) 無視をすればいいだけなのだけれど、そういう訳でもないからまた困る。 「 「返ってきてもいないものはわかりません」 「手応えくらい分かるだろうに」 「さあ」 「あれ、せっかく僕が教えてあげたのに、駄目だったのかな?」 寂しいなぁ。じゃあ次は、もっとみっちり一緒にしようか。「中々でした! 中々な結果だと思います!」「なんだ、残念」 あはは、と笑う少年を見て、間違った選択をしたなぁ、と数日前の自分を、ちょっと叩いてやりたい。『先輩、テスト勉強、教えてください』 ぱしん、と両手を合わせて頭を下げた私を見て、先輩は二つ返事にいいよ、と親指と人差し指でマルを描いた。実は、ちょっと色々切羽詰まっていたのだ。「、これ、どういうことだと思う?」と相棒に訊いてみても、「無茶言うなよ」と彼は尻尾を情けなく振って、しゅぱっと消えてしまった。 勉強ができる人といえば、綾先輩。けれどもさすがに頼むには勇気がいる。というか、申し訳なさが先立つ。だったらまぁ、深崎先輩ならまあいいかな、という訳ではないんだけれど、ぺこりと頭を下げてお願いしてみたら、あっけなく了承されてしまって、寧ろ不安な気持ちの方が先立つ。「その代わり、僕もお願いをするよ」 交換条件ってことなら、こっちの気も楽だ、と思った。そう思った。そのときは。 「馬鹿だな、あのフカザキだぞ、お願いだなんて、ろくでもないことに決まってるだろー!」 そうに言われて、なるほど確かに、と気づいた所で後の祭りだ。なんとでもなれ、ということでテスト最終日も終了し、こうしてとことこ帰っている訳なのだけれど。 (…………いつまで経っても、お願いの話題がない、なぁ……) ない。全然ない。先輩の結果の方はどうですか。大丈夫ですか。そりゃあもちろん。保体まで完璧さ。そりゃあすご……すごい、ですね……? というよくわからない話題を延々と繰り返して、ぽてぽて家まで帰宅する。(もしかして、先輩、忘れちゃってるのかな) それなら、好都合だ。 このままなかったことに、と思ったのだけれども。 「……あの、先輩」 「ん?」 「えー、えっと、教えてもらった、代わりというお願いなのですが……」 「ああ」 そういえば、そうだね。という風に、先輩は頷いた。本当に忘れてたのか、それともそういうふりをしただけなのかは分からない。けれども教えてもらって、それをチャラにしたまんまというのは、どうにも性格が悪いだろう。「うん」と先輩は頷いて、くるりと体を反転させた。じっと私と向い合って、「それじゃあ、お願い」と言いながら、ぽん、と私の両肩に手を置いた。えっ、とびっくりして体を逃がそうとしても、先輩は力強く押さえるものだから、どうにも身動きができない。 「それじゃあ」と言いながら、先輩はひょいっと屈ませた。いやいや、まさか、と思いながら、「うわっ」と情けない声を出して、私はぎゅっと目を瞑って、肩を小さくさせた。先輩の顔は、多分私の近くにあったと思う。暫く固まっていると、はー、と彼は長い溜息をついた。しょうがないな、という風なニュアンスだった。「あそこ」「はい?」 恐る恐る目をあけると、先輩の体はすでに遠かった。ひょい、とコンビニを指さしている。「まあ、アイスの一つでもおごってもらおう」「え、えっと……」「駄目なら別の」「お、おごります、おごります、おごらせて頂きます!」 そりゃよかった、と彼はひょっとだけ微笑んで、私の腕をひょいと握った。「これくらいいいだろう」とそれだけつぶやいていた。パッとが影から飛びかかろうとしたのだけれど、私はメッと叱った。彼は渋々、先輩が振り返ったときには消えていた。 「じゃあ、の分は僕のおごりで」 「え、私のも買うんですか」 「うん、一人だと寂しいだろう」 「いや別に」 「……僕が寂しいんだよ」 それじゃあ、しょうがないですねぇ、とからころ笑うと、まあね、と彼もちょっとだけ嬉しそうに笑った。 TOP 2012.01.05 結局買い食いしてないですごめんなさい。 |