| やっぱり自分はただの鬱陶しい女だったようです。 第6話 先輩よおじゃまむし 毎日毎日、あの日の事(ああ口にするのも憚られる)を思い出してぐうう、と胃をひっつかまれるような、そのままぐるぐると体の中で回されてしまったような、そんな感覚がもんもんとしてしまう。 別に、ととても低い声で呟いた彼は、きっと、とても、うざいなぁ、と思ったに違いない。あああ、時間が戻れるものなら、と何度考えただろう。くっそうちくしょう、ドラえもんよふってきてよ今すぐ私の元に! 結果的に、雛森さんは“シロちゃん”の彼女ではないと分かったけれど(いいや照れて否定しただけかもしれない)(それとも他にいるのかもしれない)そういう問題じゃ、ないんだよね。 チーン! となるレジの音を聞く度に、本当に、色々と泣いてしまいそうになる。そんな訳で今日は店内の掃除をと任されたときは、本当にほっとした。だって“シロちゃん”と向き合わずに済む。………ちょっと前までは、彼が来たらぱーっ、と胸の奥で嬉しいな、って感情が咲き乱れてたっていうのに、今はどうだ。まるでそのお花が、ぽろっと零れて、風にながれて何処かへと飛んでいってしまってみるみたい。 (嬉しくて、辛いのよ) 随分前、乱菊姉さんが、そういっていた。恋ってどんな感じ? とちょこっと興味本位で訊いてしまったとき。………これが、いやいや違う。違うぞ私、認めてたまるもんか、認めてたまるもんかー! こなくそ! と、先っちょが黄色くて、もさもさしたお掃除道具を振り回す。まるでモップの先を大きくしたようなそれをさーっと店内でひいていくと、埃がどんどんと取れていく。あああ、これみたいに私の心の中のいらないもやもやも、全部お掃除してくれたらいいのに。 「お、じゃん」 そんなとき、ぽん、と肩を叩かれた。 ざーっ、とお掃除道具を引っ張りながらいきなりの衝撃と、いきなりの名前に、びくり、と体が震えて、そのまま右肩へと置かれた手を、じーっと見詰める。………ごつごつとした男らしい手に、聞き覚えのある声。なんだこれ、最悪だ。 「なんだ無視かよ先輩を」 「すみませんバイト中なんてホント勘弁してください。ひ、檜佐木先輩」 ちらりと肩の間から顔を見てみると、見事にはしった三本の線と、69の文字。個性的にも程がありますよ先輩! と何度いいそうになった事か。その先輩は、にやにや顔で、私の肩をぽんぽん、と何度か叩く。 「………にしても、がバイトとはなー。知ってる? 俺風紀委員」 「………知って、います」 「あ、やべ、構ってくれないと東仙先生に思わず口が軽くなって、ぺろりと喋っちまうかも、バイト」 どうせ無許可なんだろ? としたり顔で笑う先輩は、き、キライだ。先輩が中学で同じだったらしい乱菊姉さんのイトコだからとにかーっと口元をゆるめて暇があればスキンシップという名前のからかいをしてくるこの先輩。嫌な人に、見つかってしまった。そんな事を考えて学校から遠いここを選んだってのに! 唯でさえ頭が痛いのに、ずきずきとしてくる。ホント勘弁してください、と呟いた小さな声は、先輩に聞こえていないらしい。 (ああ平穏無事にと祈っているのに) そんな風に祈っても、どうやら意味などまるでなく、数日後、私は彼と決着をつける事になる。 (ケラケラと笑う先輩の声が、妙に耳についたのだった) 1000のお題 【711 拾って捨てて拾って】 TOP 全然関係ないんですけどね、気持ち的に (日番谷2年、松本3年、雛森3年)(主人公1年、檜佐木2年、東仙先生) カッコが同じ学校ですかね。 乱菊が日番谷に敬語なのは会長さんだからという事で。 2008.0419 |