なんていうか。俺の親友真田一馬くんに彼女が出来たらしい。
それはないね結人。あのヘタレが俺たちに相談もナシで
英士くんそれないって。………あれ、すねてるの? ぎゃあ! 足踏まないでぇー!


彼らからの現状報告




英士に踏まれ続けた片足をぷらぷらさせて(くっそサッカー選手は足が命なのに! このバカ英士!)(ハ? 何かいった結人)(ヒイッごめんなさい!)
俺たちは丁度一馬の学校がちらりと見える程度の角から顔をぴょこんとのぞかせていた(や、正確に言うと、俺一人頑張って英士後ろで本読んでるけどね!)

何だか難しそうな題名の本を見る英士を見ながら、俺はこないだの事を思い出す。机の上に、ちょこんとのせたクラス写真。しかもご丁寧に写真立てに入れて。一馬は元々几帳面なヤツだ。部屋の中だってどっかのジャングルと化す俺と違ってこざっぱりしてるし、机の上だって。でもこんな写真を後生大事に保管しておくやつだったっけ? って話だ。ピンと来た俺はすぐさま一馬に問いかけたね!(まあ英士もいたけどさ!)

『おまえ、こん中に、好きな女の子でもいるわけ?』

こう尋ねたときの一馬の顔を、俺は一生忘れない。
みるみるうちにりんごになっていくほっぺたに、それと一緒にあり得ないほど八の字になった眉毛に、くわっと見開いてた目。うわおマジで? なんて感動したのもつかの間。ぎゅ、と口を横に結んだへたれは、『違う!!』

おいおい何ソレこのへたれ! 鏡見てから出直せよ! みたいな?



「結人、遊んでないで真面目に見なよ」
「……ヘーイ」

お目当ての本から目線を変えず、しかられた(コイツ時々千里眼でも持ってるのかなとか思うワケ俺)
改めて俺は、怪しさ抜群に、曲がり角から顔だけぴょこん(気分はスパイ!)


「……っていうかさぁ、本気で来んのかね?」
「さぁね」

ふんっと吐き捨てられた言葉に、なんだかんだいって、英士って無茶苦茶気になってるんだろうな、と思った。





そろそろ空しくなるぐらいの時間が過ぎたとき(……周りからの目線がチクチクするよ俺)ぱたん、と英士が本を閉じる音がした。ビクッと動いた体に「そろそろじゃない」小さな豆粒が、だんだんと大きくなる。確かに二粒の豆粒が、あ、一馬じゃん。と認識すると同時に、隣に女の子がトコトコと歩いているのが見えた。ごくん。と飲んだ俺の唾の音が辺りに響いて、ピピピッと妙な音がする。

豆粒が、びくっ体を引きつらせて、鞄の中身をゴソゴソ。小さな機械にピタッと耳をつけたと同時だ。「あ、一馬? 俺。今近くまで来てるからさ、え? ああ、そこのマック。結人もいる。うん、今すぐね。じゃ、」ピッ

隣の女の子に、豆粒が両手を合わせて、たったった! と駆け出す。大きくなったソイツは、丁度いい感じに、俺たちと反対方向に、びゅーん。流石鍛えた俊足だな! と感動するよりも先に、俺は、「……あの、英士クン?」「何?」「なんだよその無駄な手際のよさ     あ、なんでもないですスミマセン」


女の子が、パタパタと豆粒から進化した一馬に手をふって、ふぅ、と空を見上げた。俺も一緒に見上げてみる。おお、青い「結人、真面目に」ハイハイ。
はっきりと見えた女の子の顔は、案外普通だった。あのクラス写真の中じゃ、地味に埋もれてる感じで、俺の記憶から削除されてたのか、まったくもって見覚えも何もなくて(まぁ俺顔覚えるの苦手だし)ふんっと軽く鼻をならす。

相変わらずぴょこん、と顔を出したまんまな俺は、ビクリとした。だって、だって女の子が、ゆっくりと、ゆっくりと、こっちへ近づいてて、「ちょ、え、ど、どーすんだよ!」「落ち着きなよ結人。なんの為にあの子を一人にしたと思ってるわけ?」「(なんかすっごい悪徳業者っぽい!)……な、なんのために?」

ごくん、と唾を飲み込む。嫌な感じに、背中がじとっとする。ニヤリ。珍しく、魔王様の表情の筋肉が使われた。に、にやり。俺も負けずと使ってみる。でも多分、ひきつった感じになった俺の頬は、魔王様のにやつきをレベルアップさせる他ならない訳、で、

「まぁなんていうの? お得意の話術で色々と訊き出してきてね」
はいよろしく


ドスンッ! と押された体は見事なまでに道のど真ん中に飛び出した(ちょ、見かけに反して力が有り余ってんだからこの子はァアアァア!!)
案外細い道の真ん中で、俺は一人、ぽかんとはいつくばった。なんだよ、色々って。いろいろって具体的になんなんだよ色々。「あの、」魔王様はどこかへ有意義に退散したらしく、残された俺は、ぽつりと地面にキッス。なにこれ超寂しい。「あのぅ」「ああああちくしょう!」「い、いたっ」「あいたっ」


なんだろうこの展開。ガバッと俺が頭を抱えて起きあがった途端に、俺の後頭部と、誰かの顎が、ガチンッ! といい感じにフィットした。もといぶつかった。「う、うわごめん!」ばたんきゅう。なんつー効果音が聞こえてくるくらいぺったりと地面にはっついた女の子の手をひっぱって、くるくると回るお星様に、おいおいコレマジで、と思った瞬間(………あれ、この子、)


パッチリと、目が開いた。写真で見るよりも、まぁちょっと可愛いんじゃね? って程度の女の子は、パチパチ、と瞬き二回「………あれ?」「あ、だ、だいじょーぶ?」

女の子の目が、パッチリと俺をとらえて、ああやっぱり。一馬の隣にいた、さっきの、さっきの子だ!(そして俺はこの子に色々訊かなきゃならないらしいけどな!)(だから何だよ色々って)


白黒させてた目を、ようやくハッ! とさせて、俺の手をぎゅ、と握る。あれ何この急展開? ぱくっと開いた口は、大きく開いてて、パクパクパクッ

「あ、さっき、倒れてたみたいだけど、だ、大丈夫なの?」



………はい全然。


よかった。はーっ、と息を吐く感じで、その子はいって、俺も一緒に息を吐き出した。ふわっと、空気が舞う。あれなんだこれ、なんだこれ。そうだ、この子は、
ただにっこり、微笑んだだけだのに。


あったかかった。なんかすっげぇ。
思わずぎゅーっと、胸の奥の方を、掴まれた感じがして、


(………色々は訊けなかったけど、俺一つ分かったぞ)



この子は、すっげー、いいこなんだろうな!








1000のお題 【779 作成目的】




  

2007.11.17