トウヤが見つかるかなんて分からなかったけれど、
それでもソルと二人、彼を捜した。



 おかしい少年



回り回った高校で、トウヤという人間を知らないかと訊いてまわったが、見つかったとしても接触できないという事の方が多かった。冬休みなんて短い期間、運動部にでも入っていなかったら、学校に顔を出す事なんてまずありゃしない。
軽くついたのため息に、ソルは半分諦めたような顔をして、自分の手のひらをじっと見詰めていた。

いつかのベンチで寒いなぁ、と思いながらも、体操服の男子生徒をじっと見詰めていた。もしかしたら、あの中にトウヤがいるかもしれない。は首もとに巻いたマフラーに顔をうずくめ、パーカーのポケットに指をつっこむ。耳がほんの少し痛い。
随分長い間、体の体重を前へと掛ける体勢をしていたものだから、体の節々も痛い。

「ほら、ソル、トウヤ探すんだろ」
「ん、ああ」

それでもソルは自分の手のひらを見詰めていた。何がそんなに面白いんだと横目を続けていたは彼の手のひらを、じっと見詰める。

突如、ふと手のひらが消えたような気がした。瞬きをした瞬間、それは元の、寒くなりすぎたのか、さきっちょがちょこんと赤い手のひらに変わっていたけれども、やはり一瞬無くなったような気がした。

思わず伸ばした手のひらは、冷たい指の感覚で、しっかりとソルの手のひらを掴む。掴んだはずだった。
すかっ、とからぶった空間に、は口元をぱくつかせて、やっと出てきた声は、「おまえ、手」
ぱっと見ると見逃してしまいそうな光景だが、茶色い髪のさきっちょも、消えて、現れてを繰り返していた。

「白天の節の、一の月までには見つけなきゃならなかったんだ」
「何だ、それは」
「リィンバウム暦」

静かに消えるような声が響く。リィンバウム。そういえば、ソルはそこから来たといっていた。崩れるような感覚は、彼と出会ったときと同じだった。は痛む頭に手を添えて、「お前は、」

「俺は、この世界の住人じゃないからな。帰らなきゃならない」
「お決り過ぎるだろ」

バカじゃないのかと、ひゅるりと吹く風と共に聞こえた台詞は、かき消えた。



1000のお題 【653 世界旅行】




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2008.08.12