お正月なんで期間限定にリクエストとったときのやつです。
インデックスと御坂妹が出てきます。ぐっだぐだです。
学園都市。その人口の約8割が学生であり、いわゆる超能力と言った能力開発を、科学的に、そして人工的に作っている。レベル0の無能力者から、昔テレビで見た、スプーンをへにょっと曲げてしまうくらいの超能力者なら、石を投げれば大量に当たるし、人間兵器レベルの能力者だってこの街にはいる。
残念ながら私の知り合いにはいないけれど、「すごいぱーんち!」とか言いながら人がふっとぶ光景やら、激しいびりびりが街を飛び交うのだって目撃したことはあるし、ジャッジメントのツインテールの女の子がしゅぴしゅぴ高速移動するさまだって見たことがある。まぁ、ここは昔見たテレビみたいな、それで未来都市みたいな場所なのだ。
そしてそんな未来都市の中にて、私はレジにて肘をついてぼーっとしている。そしてガラスにべったりと顔を張り付けたシスターと、その頭に乗っかった猫がじっとこっちを見ていた。
「ここは…………」 ガラス越しにシスターのくぐもった声が聞こえる。はい、と私は頷いた。「天国なの…………?」 ぐーきゅるるるるるる
「…………パン屋です」
天国じゃないです。
私はパン屋に下宿している。巷ではメイド服に似た制服が結構な人気を誇っているらしく、それを目当てに同じく下宿をしたいバイトをしたいという人間が後をたたない。主に青髪ピアスの男とか。
それはさておき、パンのお味の方も結構おいしいのだ。
「だから全部お勧めです」
「う、おおおおー!」
「にゃー!」
「動物は中に入れないでください」
「ちょ、ちょっとだよ!? この子はかしこいんだから大丈夫だよ!」
ほらほら! とシスターさんは自分の帽子の中に猫をちょいっと入れてこっちを見てみた。私はそれをじっと見つめながら、「ここは飲食店です」 だから駄目です。
シスターさんは「ごめんね……スフィンクスごめんね……」といいながら店の外へと猫をパン屋の外へと置いて、悲しげに手を振った。そしてこちらを見つめる。しかしそれは無視する。ルールである。
いいってことよ……ちょっとの間だろう? ふふ、それくらい我慢してみせるぜ……なんていう猫から男気のある台詞が聞こえた気がしたけれども、気のせいということにしておく。
シスターさんはさかさかと私のほうに寄って来た。そして「これってどうしたらいいのかな? 食べていい? 食べていいのかな?」「まだ食べないでください」 パンを選んでレジでお金払ってお店の外で食べてください。
よく分からないがこのシスター、なんだかちょっと不思議な言動をする人だ。私は一瞬不安にながらも、トングとトレーをシスターさんに渡した。そして「おおおお……」と言いながらトングをかちかちさせているシスターさんをしり目に、からんからんからん、と新たに扉の鈴を鳴らして中に入って来た女の人へと目を向ける。「いらっしゃいませー」
入って来た女の子は、店の前にてポツンとにゃんにゃんしている猫を見て、「ミサカは猫を発見しました。このことにミサカは不審に思いましたが、空腹に負けて無視をすることにします」「…………いらっしゃいませー?」
不思議な客である。
額にゴーグルをつけたミサカ(?)さんはこっちを見た。そしてその後、ささっとトングとトレーをとり、一瞬の隙もない動きでパン屋の中を見渡す。さっさっさ。そして素早くターゲットを決めたらしく、トングを突き出した。ガキン! まったくもってパンをつかんだとは思えない音は、トングとトングがぶつかった音である。
ぴしゃーん!! とお互いがまるで雷をぶつけたかのように固まった。シスターさんと某有名な私立中学の制服を着た女の子はじっとお互いを見つめあった。
そんなに見つめ合わなくても……と思いながらパンを覗いてみると、残り一個だったらしい。私はそそくさとレジに戻った。あんまり関わり合いたくない。
「ミサカの方が先にこのパンに狙いをさだめたとミサカは勝ち誇ったように主張します」
「ちょ、ちょっと待ってほしいんだよ! 私の方が先だったもん!」
「それよりもあなたはお金を持っているのですか、とミサカは疑問に思います」
「見くびらないでほしい。とうまからお小遣いとして550円を持っているんだよ?」
「とってもしょぼいです、とミサカは思ったのですが、ミサカはあえてその言葉を言うことはありませんでした。可哀そうに」
「言ってるよ!? 言ってるんだよ!?」
むっきぃ!! とシスターさんは地団太を踏んだあとに、ビシリとミサカさんに指をさした。「とうまからもらった550円、このパンのお値段は250円。そしてあっちのパンが300円! ぴったりおいしくお買いものをするためにはこれしかないんだよ!」
別にぴったり使わなくてもよくね? と私はレジで二人の会話を聞かないようにしつつしかし気になってしっかり耳ダンボのまま頭の中で呟いた。「なんて計画性のない人なんでしょうか、とミサカはこっそりと思います」 ああやっぱり思われてる……!
私が、ミサカが! という、もうだめだまとまんない的な状況になり、私はすっと片手をあげた。しかしそれだけでは気づいてくれる訳がないので、「すみませんちょっと」といいながら二人の間に割り込む。他のお客さんがいなくて本当によかったと思う瞬間である。「もうジャンケンでよくないですか」 平和的な解決をお願いしたいです。
「あいこでしょ!」
「あいこでしょ!」
「あいこでしょ!」
「あああああ!!!!」
「ふっ……ミサカは勝利したのです」
勝ち誇ったように、しかし無表情のまま片手をあげるミサカさんをちらりとシスターは見て、「そんなぁ、そんなぁ! とうまの不幸がうつったのかもしれないよ……」と悲しそうに呟く。
「不幸がうつる訳がないとミサカは反論します」
「ちょっと待ってほしい! じゃんけんというのは世界とか知識ごとに色々とルーツがあるんだよ? だからぐーがぱーに勝つとかかぎらないの!」
だから勝負は決まっていない!
ビシッ! と指を向けるシスターさんに、私は呟いた。「ここは日本で学園都市なので、ぐーはぱーに勝ちます」基本ルールです。
かくり、とシスターさんは床に手をつき、負けましたというようにその場は幕を閉じた。
のだが。
ミサカさんはレジをすませてさっさとお店を出ていってしまった訳なのだけれど、きゅーきゅー言いそうなくらいの効果音で目をうるうるさせているシスターさんが、少々可哀そうに思えたのだ。まあうちのパンはなんでも美味しいですからそっちのパンを食べてください。と言いたいのだが、そういう雰囲気ではない。
私はレジからこそこそと袋を出し、「シスターさん」と手渡した。不思議そうな顔をしたシスターさんが、袋をうけとり、こそこそと中を見てみる。「こ、これは……!!」「さっきのパンなんですけど、お昼の自分用にって買っておいたんです。お代は結構ですから、どうぞ。あ、でも店の外で食べてくださいね………ってきいてねぇえええ!!!」
がつがつがつがつ! と迫力のある食べ方で一気にパンをたいらげたシスターさんは、ほっぺたに食べカスをつけたまま、にこっと微笑んだ。「おいしかったよ! またくるね!」それだけ言って、店の前で放置してある猫をひっさらうと、白い修道服をはためかせながら街の中に消えていく。
不思議なシスターさんである……と、思いながら、私のお昼ごはんが消えてしまったことに気付き、帰って来た青髪ピアスのケツにいっぱつキックでもいれてすっきりしよう、とパタパタ彼女に手をふりながら、考えたのであった。
「ただいまやでーちゃーん!」
「この青髪ピアスがぁああああ!!!」
「え、ちょ、なんやのいたああああ!!!」
ケツキック!
2011.01.02
インデックスと御坂妹ってことで。ぐっだぐだすみません。
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