前作をめっさ簡単にあらすじ

マミさんを助ける度に何回も死んでる主人公。なんで時間が巻き戻るのかよくわかってなかったけど、後編でQBさんにネタバレされた

*前作は一部性的行為が含まれますので、隠しページ(パスワード制限)にあります。
グロ、人道的不愉快描写(?)なども一部含まれます。地雷はありませんという方のみ見てやってください。不愉快な気持ちにさせたらすみません。







目の前に、男が立っていた。男と言うよりも、ただの子どもだ。ほむらはキュッと瞳を細めた。中学の制服を無理やり着せられた小学生。勝手に印象付けるのであれば、それに近い。
にかっと少年は白い歯を見せ、ほむらにその小さな手のひらを差し出した。

「見滝原中学一年生、です。はじめまして、     魔法少女さん」



   ***



出会いは唐突だった、と言えば、ある程度の聞こえはいいのだろうか。実際のところはと言うと、電車のホームに立ち、さて“武器調達”に出かけましょうか、とほむらは慣れた様子で、手近なヤクザ達から丁重に、文字通り誰にも気づかれることもなく、安全なかっぱらいを行わせていただこうと、頭の中でシミュレートしていた最中だった。

ひょいひょい、と小さな少年が近づいた。認識にはあった。けれどもそのまま脳内から削除した。しかしながら、少年はひどく危うげな様子で、ほむらの隣にひょっと立ち尽くした。そしてにかりと笑みを浮かべ、自己紹介と言う訳だ。


ほむらは一瞬彼に目を向けたものの、すぐさまぷいと目線を逸らした。ただ“魔法少女”という言葉には、いくらかの警戒は持った。彼のことは、ほむらの記憶の中にある。巴マミの後ろをちまちまと歩いていた、ついでにときどき運が悪く、戦いに巻き込まれ死亡することも多い。名を知ることはなかったが、扱いに困る、厄介な一般人と認識している。

ほむらが無視をし続ければ、は困ったように頭をかいた。「おかしいな……結構前にさァ、教えてもらったんだよね。魔法少女って言うんだろ? あんたみたいな人のこと」 巴マミか、と彼女は判断した。(口が軽いわね) 彼女は正義感に溢れた、とはまた別の意味でやりづらい相手である。だからこそ、自分の彼氏にとは言えど、軽々しく“秘密”を話すなど、どうにも違和感があったが、彼女も女に違いなかった、ということだろう。

もしかすると、が幾度もマミを庇い死亡した理由の一つに、彼女がに自身が魔法少女であると秘密を漏らしていたかもしれない。正直、ほむらは少し落胆した。だいたい、秘密など口にするべきではない。だからこそ、毎度ややこしく彼がこっちに介入してくるではないか。残念なことにも、一般人の死を無頓着に喜ぶ奇特な趣味は、ほむらにはない。ただ面倒くさいと     そう思うように努めているだけだ。

は困ったように顔をくしゃくしゃにした。
ただの子どもであった。「あのさあ、ほむら」 しかしその呼び方は癪に障った。無視をし続けた。「あんた、繰り返してるんだろ?」 瞳を向けた。

「俺も、同じなんだよ。気づいたら最初に巻き戻ってるんだ。それ、あんたが犯人なんだろ」

あの白いのから聞いたよ。とはイタズラっ子のように笑った。ほむらはただ彼を睨んだ。「いや、別に、それはいいんだ。俺はマミを助けたいだけ。あんたは鹿目まどかだっけ。なあ、俺達協力しようよ、そしたらさ、なんとかなるかもしれない。俺、あんたみたいな力はないよ。でも、覚えてる。次も、あんたのことは忘れない」

とにかく俺は、マミが死ななきゃいいんだ、と彼はへらりとした。

ほむらは片眉をピクリとあげた。それだけだ。「悪いけれども、消えてちょうだい」「……なんで?」「あなたのことは、興味がない」 そして信用もおけない。
ホームから、放送が鳴り響いた。ちらりとほむらはそれを見上げ、「口からでまかせなら、なんとでも言えるわ」 そう言い切った。

だいたい、キュウべえから聞いた、というのも怪しいものだ。彼が繰り返している証拠など、どこにもない。はしょげたように足元を見つめた。いじけているようにも見えた。「あー……まあ、そっかぁ……」 いきなりだもんなあ、と彼は残念気に呟く。「じゃあ、もういいや」 何がだろうか。

「マミも、もういないし、もういいや。最後までいるのもめんどくさいし……。俺、次も覚えてるからさ、そしたら、ちょっとは信用してくれよ。言っとくけど、一応は嫌なんだからな」

やってらんないなあ。そうつぶやきながら、は、ためらうことなく通過する電車に飛び込んだ。よっこいせ、と終わりに聞こえた声が、妙に日常じみていた。



ゴリッ ゴリゴリゴリゴリッ


肉が削れる音が響く。ぴゃっ、とほむらの頬に血しぶきがとんだ。ずるずると電車が速度を落としながら、彼の体を引きずる。吹き飛ばされた肉片が、ぽろぽろとホームに転がる。丁度、ほむらが立つ隣にも、ごろんと彼の右腕が転がっていた。

さすがに暫くの間、ほむらはきょとんと瞬いた。それから長く、息をついた。これじゃあ、暫く電車は動かない。聞こえる悲鳴の中で、彼女はさらりと髪を揺らしながら、彼の肉片を踏みつけた。

そして次もあればと苦笑した。




2012/06/10
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