*意味がわからんと思われたら本当にすみません……
*本編開始前
*めんま視点だけど一人称は私で。







「ここを俺たちの基地にするぞ!」


そう言ったのはじんたんだ。うんっ! と私は頷いた。「いいねえいいねえ!」 楽しそうだねえ! とぱちぱち手のひらを叩く。ふわふわ髪のあなるも、うんっと頷いた。ちっちゃな体のぽっぽがぴょんぴょんはねて、すっげえすっげえ、と笑ってる。ゆきあつも、つるこも笑ってる。わーい、と私はくるくる両手を広げて回った。嬉しかったから。

「めんま」

名前を呼ばれた。私はちょっとだけ瞬きを繰り返して、振り返った。ちょこんと小さな女の子がこっちに手のひらを振っている。あれ、となんだか声がでない。「あー、だー! も来たんだねえ」「ずっといたよ、めんま」 そう言って、は私の手のひらを握った。
家に帰って、日記を書いた。さーくんが、私の真似をしてぐりぐりとクレヨンを紙に押し付ける。

「さーくんも、日記書くの?」
「うん!」

じゃあ一緒に書こうねぇ、と私は今日のことを思い出した。




○月×日

今日はみんなときちを見つけた。
とっても楽しかった。





私達の名前は、超平和バスターズに決まった。
じんたんがそうしよう、と言ったのだ。バスターズってどういう意味だろう、と首を傾げたら、すっごく強くてかっこいい人のことだ、とじんたんは教えてくれた。じんたんは色んな言葉を知っていてすごい。
あなるとぽっぽと、ゆきあつとつること、が笑ってる。





超平和バスターズの活動はたいへんだ。
最初の活動は、のけもんを全部集めること。これが案外むずかしい。うーん、うーん、と私がうなっていたら、あなるがたくさん調べてくれた。みんなで持ってきた椅子に座って、ぴこぴこゲームをした。





今日は基地に行かずにおやすみ
でもじんたんのお家に行った。お父さんにかわいいと言われた。





じんたんのお母さんのところに行った





学校の宿題が終わらない。じんたんにいっぱい教えてもらった。ゆきあつにも教えてもらった。ぽっぽはちんぷんかんぷんで、お鼻に鉛筆をつめていた。危ないよう、とがひっこぬいたら、ものすごいくしゃみをぽっぽがした。ちょっとだけ笑ってしまった。





じんたんが基地を見つけた。ここを俺たちの基地にするぞ! そう言った。すごいすごい、いいぞいいぞ、とみんながぱちぱち手のひらを叩いてた。わーいわーい、とぽっぽが飛び跳ねたとき、がぽっぽにぶつかった。ぽっぽは元気すぎますね、とメッをした。






みんなで川で花火をした。子どもだけじゃ危ないから、あなるのおかあさんといっしょだ。あなるはずっとほっぺを膨らましてた。つるこの線香花火がとっても綺麗だったから、「きれいだね」と二人でわらった。





じんたんが、私達の名前を超平和バスターズに決めた





のけもんは全部集まらない。むずかしい。




今日はみんなで遊ぶのはおやすみ。おかあさんとカレーをつくった。おいしかった。




みんなで花火をしようと決めた。でも、子どもだけじゃ怒られるぞ、とゆきあつが言った。みんなのおうちはダメだから、それじゃああなるに頼もうと思った。けどあなるが、「うちのお母さんはいちいいちうるさいからいや!」と言った。うーん、そっかあ、と私は考えて、「それじゃあ!」

のお家は? とに聞いた。はちょっと困った顔をして、「うちもダメかなあ」
だめならしょうがない。それじゃあ花火は中止だ。残念だけどしょうがない。(あれ?) なんだか変だ。

でもなにが変なのか忘れてしまった。





「ここを俺たちの基地にするぞ!」

じんたんがそう言った。
わーい! とみんなでいっぱい喜んだ。でも喜びすぎたぽっぽがぴょんぴょん跳ねていたものだから、にぶつかりそうになった。「あぶない!」 いつの間にか、勝手に声が出ていたのだ。あっ、と私はに手を伸ばした。はきょとんと私を見た。どしん、と3人一緒に倒れて、膝に怪我をしてしまった。

「ごめんねめんま、だいじょうぶ?」とが私の頭をよしよしした。ぽっぽが泣いちゃいそうな顔をして、「ごめんな、ごめんな」と両手を振っている。「大丈夫だよう、このくらい」

なんてことないのだ、とむむん、と力こぶを作った。ゆきあつとじんたんと、みんながぱたぱたこっちに来て、大丈夫かと私にびっくりした声をかけてる。「大丈夫だってばー」 えへへ、と笑った。



○月×日

今日はみんなときちを見つけた。
でも、ちょっとだけこけてすりむけちゃった。
みんなに心配されちゃった。





「…………あれ」

おかしいな、と自分が持っていた鉛筆を見つめる。「あれ、れ、れ?」 さーくんが、ごりごりとクレヨンを動かしている。青と緑のイラストで、誰かがじっとこちらを見ている。
「さーくん?」



あれ、これって何回目だったっけ?





みんなで基地を見つけた。
平和バスターズと決めた。
のけもんを集めて、花火をして、宿題をして。

みん、みん、みん、と頭の上でセミが泣いている。

麦わら帽子の女の子が、私に背中を向けて歩いている。ぱた、ぱた、ぱた。ゆっくりゆっくり、歩いている。頭の上から落っこちる熱い光が、じりじりと景色を焼いている。ぐにゃぐにゃとまがって、まがって、まっすぐに歩けない。

女の子だ。
私と同じくらいの年頃の女の子だ。走った。私は走った。まっすぐに走った。



そうして彼女の名前を呼んだ。「あなた、だれ」 
知っているのに、知らない誰かに声をかけた。
はこっちを振り向いた。そうして、「あーあ」と一言ぽつんと呟いて、「失敗しちゃったな」
麦わら帽子の女の子は、そう言って口元を緩ませた。




「こ、ここ、どこかのかな、おかしいな。あれ、めんま、死んじゃったと思ったんだけどな。川に落っこちて、死んじゃった。そうだよ死んじゃったんだよ。なのになんで? なんでみんながいるの?」

なんでだろうね、とはくすくす笑っていた。どんどんが小さくなる。違う、私が大きくなった。小さな、小学生みたいな女の子を私は見下ろして何度も瞬いて、ぺちりと頬を叩いて、うううーっと唸った。「ここ、もしかして死んじゃった世界?」「そうなるかなあ」「うひゃー」

びっくりだねぇ! と声を出すと、はぷは、と吹き出した。「そうだね、ビックリだ」「あ、でもね、めんま、行かなきゃ。約束、そう約束があるんだよ」 だから行かなきゃだめなのだ。ずっとずっと忘れてた。行かなきゃ。行かなきゃ。はやく行って、

行って?


「何をするの?」
「わかんない……」

でも、行かなきゃ駄目だ。「絶対?」「ぜったい!」
ううーん、とは唸った。「それならしょうがないかな」 よしよし、と彼女は口元を笑わせて、両手をぱちん、と叩いた。「さあさあ」 行ってらっしゃい。


くるくると、自分の体が落っこちる。きゅっと体育座りみたいな座り方をして、顔を上に、下に、どんどん回っていく。近づく。世界が近づく。髪の毛がはためいた。ばたばた、と白いワンピースの裾が暴れる。なんでだろう。ちょっとずつ胸がいっぱいになった。会える、会わなきゃ、はやく、もう少し。

手を伸ばした。



     じんたん!」














2012.12.21
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