Dona Dona

おまけ編 1

*本編完結後 / 三人称

ラビがへたれた。そんなラビもいい。という方はスクロール。




は、結局また、こっちへと来てしまった。元の世界でおとなしくしとけばいいものを、己の欲望につっぱしり、やってられるかコンチクショー! と叫びまくったあげく世界を越えた女。個人的にもありえねー、と思いつつ、現在彼女は、再び教団の食堂にて働いていた。

相変わらず教団の中にて世界を越えた不思議女という認識は変わらないのだけれども、せっかくの労働源は使うべきだと思いっきりが主張したからだ。色々とふっきれたらしい。


「ラビさん、ごはんおいしーですね」

言葉の方も相変わらず、時々妙な発言をしてしまったりするものの、この頃はなんとか形へとなってきた。そんな事が彼女自身嬉しいのか、にこにこと隣に座るラビに向かって「たべますか?」とちょいとフォークをつきだし、その先にはたこさん(ウィンナー)が突き刺さっていたのだけれども、ラビにとっちゃたまったもんではない。

「い、いや……」 思いっきり声をうわずらせながらも、ラビは頑張って首を振った。そうですか、と彼女は残念そうにぱくりとくちにたこさん(ウィンナー)を口に運ぶ。


現在、ラビは微妙な心境にあった。
いなくなったと思っていた少女がまた目の前に現れ、こんにちは、ラビさん! とラビの鳩尾へとごすっと頭をアタックしてきたあの日は忘れられない。ところでもうちょっと上手に抱きつく事ができないのだろうかあの子は。感動なんて一瞬ぶっとんで、痛みに悶えました。とても激しく。

ラビは、まぁなんといいますか、の事が好きだった。もちろん女の子として。そんな事を自覚して以来微妙に挙動不審なのをなんとかせんと俺がーんば! と頑張ったあげく、ちょっと先走って告白なんてものもしてしまったのだけれど、如何せん、よくわからない。

「はい、私も、ラビさんすき」

とはにかんだ彼女の表情は忘れられず、マイメモリーに保存している。記憶力のいい自分最高。
ところで、これってかなりいいお返事なんじゃないだろうか。これってオッケーって感じなんじゃないだろうか。つまりはおつきあいヒャッホウってやつなんじゃないだろうか! とかハイテンションになる事が出来なかった。

ラビは彼女が隣でもくもくとお子様ランチを咀嚼している姿を見て、ハー、とため息が飛び出た。お子様ランチが似合う女の子。かわいいな。俺ストライクゾーン広いんです。いやいやそういう事ではなく。

(………ホントに、わかってんのかねー、このお嬢さん)


もしあの状況で、アレンが「僕さんの事すきですよー」なんていえば、この子は「わたしもですー」とかいっちゃうんじゃないだろうか。もしリナリーが「私の事だいすき!」といってしまえば「わたしもだいすきですー!」といったんじゃないだろうか。もしあの状況で神田が「俺のこ」無理だ想像できない。もしコムイがあの場で「ボクリナリーのことがす」想像がずれてきた。

そんな訳で、これってどういう状況なん? と青少年は頭を悩ませていた。

さっきのたこさんウィンナーだって、あーんは激しくおいしい状況だった。がぶっと食べてやりたかった。本人ごとがぶっとやっちゃいたい。やっていいっすか。でも後で嫌われても困る。

うぐう、うぐう、と下手な生殺しよりも酷い業況に、ラビは頭を悩ませていて、その隣では少女が美味しそうにハンバーグを食べていた。ああかわいいなぁ、お子様ランチが似合う女の子。
「うわあ、ラビさん、なにするですか!」「はっ手が勝手に!」「たべてるとちゅーにて、頭なでなでやめてください!」「………スミマセン」





あーあー、なんなのコレ? とか思いつつ、ラビは室長、コムイ・リー、リナリー・リーの兄へと呼ばれたの後をひょこひょこついていた。
ラビは別に暇人じゃあない。これでも忙しい。やらなきゃならない事はたんまりとあるのだけれど、エクソシスト業の方は、ついこの間大きな仕事を終えたばかりであって、暫くは暇だ。もう一つのお仕事の方は、パンダジジイが現在お出かけのため、取りあえず日課となっている世界情勢の確認だけだ。


重い扉を開けながら、参上した空間は、相変わらず忙しない。インクの匂いとコーヒーの匂いと男どもの汗その他の匂いが入り交じり、ラビは「うっわくっせー」と毎度の事ながら呟いてしまう。けれども彼らだって頑張っているのだ。好きでこんな匂いになった訳ではない。

地面へと散らばる書類を、踏みつぶさないようにとラビとは慎重に歩き、部屋の中心部へと位置するコムイ室長の下へと彼らは移動した。
何故だかとっても優雅に彼はコーヒーを啜っていて、周りの研究員が泣いている。頑張れ、男ども。ラビ密かなエール。


「あっれラビくんも来たのー?」 とコムイは相変わらず朗らかといえばいいのか天真爛漫といえばいいのか、明るい声を上げた。ラビは「やっぱ来ちゃいかんかった?」と首をかしげ、部屋の前で待っていよう、とくるりと背中を反転させた。
その瞬間ラビの服の裾を、ぎゅうっとが握りしめた事に気づき、ほんの少し嬉しくなりながらも、「俺外でまってっから」とにっこりと微笑む。はじい、とラビを上目に見詰め、こくりと頷いた。

けれどもコムイが「あー、いや別にいいよラビくんがいても」とパタパタと手を横へと振ったものだから、先ほどまでの会話はまったくの無意味となる。


「あの、なにですか、ひつちょさん」
ー、室長だって」
「う、盲点、しつちょう、さん」
「……、ちょっと言葉の使い方が違うさー」

こくりとが首をかしげれば、コムイはうんと頷き、「たいした事じゃないんだけどね」と言葉を続ける。「一応、定期的に血液検査でもしとこっかなーって」

教団に置いて、の存在はとくに重要視されていない。イノセンスが関わっているかもしれない、わからない調べ済みの事項よりも、イノセンスが関わっているかもしれない、まだまだ未調査の物体の方が多量に存在するからということと、実際異世界という言葉自体が確定されておらず、本人の主張のみだ。
それだけではベッドに括り付けられても問題がない状態なのだが、何分エクソシスト総本部、懐が広い。しかしそれ以上にも何故何もしらない日本人がこの地へといるのかという不可解な点と、クロス・マリアンが関わっているかもしれないという事項など、所々の懸案事項があるため、目下調査中という名目で停滞中だ。


血液検査、という言葉に、はほんの少し顔を歪めた。小学校の判子注射にて泣きわめくタイプに違いない。そんな彼女の様子に即座に気づいたオレンジ頭は、「だいじょーぶさ、ちくっとするだけするだけ」とよしよしと頭を撫でる。しかしラビは分かっていない。注射嫌いは、そのちくっとが嫌なのだ。

コムイはそんななど気にもせず、散らばった机の上から、ガサガサとあさりはじめる。注射器でも探しているのだろうか。
は、「あー、いやだー、いやだー、さっさとおわれーおわれー」とぎゅう、と固く目を瞑っていた。その為の、悲劇だった。



積み立てられたコムイの机の上に置かれた、一つの瓶が、ころりと転がり落ちた。不用心にも、開かれていた蓋部分が、彼が机をいじくる振動でずれ、ついには瓶自体バランスを崩し、ばしゃりと異様な色合いを放ちながら、真っ白い書類を染め上げる。そして、しっかと目を瞑っていたの頭にも、おもいっきり降りかかった。ばしゃり。


本人、何が起きたのか理解ができなかった。なんか背筋が冷たいッス。その程度にしか考えていなかった。けれどもぐんぐんと変わる目線に、パチパチと瞬きを繰り返し、隣へと立つ青年を見上げる。彼は、驚いたように目を見開き、「ちょ、コムイ、これって      



その散々にも散らばった書類の中で、ぽつりと小さな少女が、サイズの合わない服を着つつ、パチパチと瞬きを繰り返していた。明らかに見覚えのある風貌に、けれどもサイズが違います。
彼女はたらりと舌ったらずに、「………ここ、どこ?」 日本語で、呟いた。



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2008.12.23

お約束は制覇しておくべきだと悪魔が囁きました。



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