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大変だ。が、小さくなってしまった。 え? なにこれどういうこと? マジで? うっそマジで? きょとんとした瞳のまま、ぐるぐると混乱をするラビを差し置き、コムイは飄々とした顔のまま、の小さな手のひらをちょいと引っ張る。 小さな黒い瞳をくるくる回しながら、「ちょっと待ってねー」とにこにこと人のよさげな笑みをひっさげて、汚い机の上から、「見つけた見つけた」と小さな箱を取り出す。ぱかり。 「…………!」 「はいはいおとなしく」 「(ぶんぶんぶんぶんぶん)」 「こ、コムイ、なんか思いっきり首振ってるさー?」 「うんでもほら先に血液検査しとこうと思って。ほーら、ちくっ!」 ひたり。細いの腕へとつきたてられた銀の針に、はぎょろりと目をひんむく。「いたくなーいいたくなーい」 そんな陽気なコムイの声も消えさるほどに、ピタリと時は止まった。 「ぴぎゃああああああああ!!!!!!」 「うおわぁ!」 マジ泣きする子どもを目の端に、「ほーら終わった」とすっきりした表情で、親指をぐっと立てるコムイは、とりあえず子どもの敵だなと、ラビはうっすらと考えた。 何を根拠にか、「ダイジョーブダイジョーブ、そのうち元に戻るって」 注射器片手に軽いテンションのコムイのセリフを思い出しながら、ラビは自室にて、出張中のブックマンの服をちょいと失敬し、へと服を渡した。 彼女はずるずると引きずる彼女には大きすぎるサイズの服を無言で脱ぎ始め、そんな光景を見つつ、色気もなんもあったもんじゃないなぁ、と好きな女の子の裸を見つめつつラビは思った。流石にこんな小さい子にどぎまぎしてしまっては、犯罪者だろう。思わずぬるい目つきで、ラビはと目線が合うように、ちいさくかがみこむ。 チャイナチックな服を着替えるには少々手間がかかるらしく、ラビはそっとの着替えを手伝おうと、背中のボタンへと手をつけた。ぷちぷち聞こえる音に、ああ色気もなにも、略。なんて思ってしまって、僅かに溜息が出てしまう。できることならもうちょっと大人なときにこんなことをしたかったものだ。 しっかりと着込んだ服に、「えらいさー」といつもとテンションで、髪の毛をぐしぐしと撫でてやろうと手を出せば、子ども特有のまんまるい瞳をギロリと三角にして、はビシリとラビの手をはたき落す。なんでだ。 もう片方の手を、へと伸ばす。びしり。伸ばす。びしり。伸ばす伸ばす。びしりびしりびしりびしり! まるでカンフー映画のように、両手チョップの体勢でラビを見つめると、同じく似たような体勢でじっと見つめる青年一人に、いったいどうしたものか、と流石のラビも頭を抱えた。はこちらのことをすっかりと忘れてしまったのだ。 とういうか、注射がいけなかったのかもしれない。コムイをちょっと恨む。 ときどき呟く少女の声は聞きなれない発音に、ラビはすっかりとお手上げ状態になってしまった。せっかく小さななのに、懐いてもくれやしない。警戒心バリバリな姿は、まるでどこぞの猫のようだ。これがあと十年くらいたてば、になるんだもんなぁ、と考えると、とても不思議な気持ちになる。 かくなる上は。 「ー」 こっちおいでー。クッキーやるさー。 餌でつってみる。ぴくり。との体が震えたような気がした。いける。これはきっといける。「おいしいさー、食べなきゃ後悔するさー」 じゅるり。クッキーを、ひょいと右へと移動した。の瞳が移動する。左。移動する。いける。ラビは確信した。 な? と自分的に極上の笑みを浮かべながら、ラビはいそいそと近寄った。刺激することのないように、あせらずゆっくりと近づき、片手には、取り出したクッキーを。ゆっくりゆっくり。 手を伸ばした。 びしり。 「あっちいけ! ゆうかいはんの、にんじんめ!」 きしゃあと毛を逆なでるように叫ばれたセリフは、ラビに理解できるはずもない。 BACK HOME NEXT 2009/02/19 |