Dona Dona

おまけ編

ラビがあんまり出てきません。完結した直後のお話です。
アジア支部の李桂が中心です。原作で李桂がリナリーにストライク! している描写がありますが、多めに見てやるよ……! という方はどうぞスクロール。




学校の屋上で、気づいたらまたこっちの場所にいた。もっかい会いたい。ひつちょさん。リーバーはんちょ。アレンさん。リナリーさん。神田さん。ジェリーさん。そして、ラビさん。
会いたい、会いたい、会いたい。そんなことで頭がいっぱいになってしまった私は、ぽとんと落ちた先にいた赤髪さんにお願いしたのだ。「もっかいドナドナしてください!」 あの場所に、連れて行って。




赤髪さんは、「おーなんだ、お前あのときのチビジャリか。なんでこんなとこにいるんだ」と予想以上に軽い台詞で、私がなんとも説明できず、もごもごとしていたら、「まぁいいか」と頷いた。まあいいらしい。そして私の首根っこをちょいっと掴んで、「こいつが金の代わりだ」「え? マジでいいのお嬢ちゃん」「お、おー! よろしーです!」

ビシッ! と私が片手を垂直に挙げると、赤髪さんと、金返せと叫んでいた男の人はうんうん、と一緒に頷いた後、ガシッと握手をした。なんとなく感動的な光景だ! と私はパチパチと両手をうってみた。
こうして、私の二度目のドナドナ(売られちゃった人生)が始まり、またラビさんに会える、会える、会えるぞ! と胸をどきどきさせていたのだが。





「…………ここ、どこですかね」

明らかに何かが違う。
なんかこう、前にいたところは周りが崖で、大きな塔がそびえたっていた。「……ち、ちがう……?」 ちがう。明らかに違う。ここはなんていうか、洞窟の中にいるような感じだ。この間が上に向かっているとしたら、ここは下に向かっている感じなのだ。ちょっぴり上達しているはずの英語で、私は私を連れていく男の人に話しかけてみた。「あ、あの、ここ、ちがてません、か?」 ねぇねぇ。

男の人はふいっとこっちを向いて、首を傾げた後、「ンー、シエンザイ パー ディエン イーク!」 ………! ぜ、全然わからん……!

英語じゃない。どう考えても英語じゃない。なんだろうこれは、中国語……? いや適当に言いました。ごめんなさい。わかんないよ! もうインド語とかかもしんないよ! 頑張って英語をスキルアップしたというのにこれはない。まさかこれ以上のスキル向上を求められるとは思わなかったですよここここのやろー!

目指せグローバル化、そしてここにも弊害が。
なんだかよくわからない台詞を自分の中でぐるぐるさせて、私は一人黙々とおしゃべりになる案内人さんの後をぽてぽてと歩いた。もうなんだかわからないので、話しかけられたら「にーはお!」と言ってごまかすことにさせてもらった。「ウォーウァーラ」「にーはお!」「ニーナ?」「にーはお!」「……アーパイウー?」 気の所為か馬鹿にされた気がします。


とりあえず、私また売られちゃったんだよね? と確認したいのに言葉が通じない。このもどかしさは久しぶりだ。取りあえずお仕事をさせていただけるのならば、お皿洗いがいいです! お皿洗いなら慣れてるよ! パーフェクトだよ! と手をいっぱいふって主張しても届かず、ぐいっと私に押しつけられたものは、バケツと雑巾だった。

(…………言葉が伝わらないって、もどかしいね……)

いやもう、本当に。

渡された真っ白いエプロンを胸に、私はきゅっきゅっきゅーっと廊下のお掃除を開始した。雑巾を見てみる。おお、汚い。汚いぞ。バケツにごしごし雑巾を入れてみる。綺麗になった。よしよし、ふくぞ。ごしごし。おお、また汚くなった。うむうむ……ごしごし。「……なんてはまってる場合じゃないよ……!」

予想以上にお掃除が楽しくて、そこら一帯をぴかぴかにしてしまったのも後の祭り。おおえらいえらい、というように(多分)同僚さん達からほめられてよしよし、よしよしと頭をなでられた。じゃあこっちもよろしくね、と指をさされればやるしかないではないか。ラビさん、どうしましょう。私ちょっと楽しいですこれ!

「うおらー!!」

端から端まで雑巾がけを楽しんでいると、がつんっと誰かの足に頭がぶつかった。その誰かさんは、「ワッ!?」と驚いたような声を出して足をふいっと上に投げる。そしてその投げた足は私の顎に見事にヒットした。「あうっ!?」 いたい。

うー、うー、うー、と顎を押さえてころげまわっていると、「トイプチー! ブーヤォジン マ?」とお兄さんは私の肩をさすってきいてくる。「う、う、いたい、ます……」思わず英語で答えると、お兄さんは(というか、私と同じくらいの男の子かもしれない)「……あ? 英語か? わり、マジ大丈夫か?」と聞きなれた言葉(とは言ってもやっぱり英語だけど)でしゃべってくれた。

「だいじょぶ、ます……。あなたは、大丈夫ますか?」
「おう。ビックリしただけ。結構勢いよく蹴っちゃったよなほんとマジ勘弁な。悪い!」
「あ、あの、あんまりはやくだめ、しゃべっちゃわからない、です!」
「あん? イギリス人じゃねーの? まぁどう見てもアジア系だもんな。でもチョンコーレンじゃないのな。あ、リーペンレンとか?」
「へ、ちょ、りーぺん?」

なんだかペラペラものすごい。ラビさんも多分普段は早口な人だろうけれど、こうなってみると私に合わせてゆっくりしゃべってくれていたことがよくわかる。とりあえずヒヤリング能力を限界まで押し上げて、私は男の人の言葉を聞いた。男の人は「中国人か、日本人かって聞いたんだけど?」と言いなおす。おお、わかったぞ、今のはものすごくわかったぞ! 「わ、私! 日本人!」「お、そっかー」

俺日本語はわかんねーからなぁ。お、蝋花……は、無理か。シィフならわかるかもっ! とやっぱり早口で、なんだか人の名前が出たのかな? ってことくらいしかわからなかった。男の人は、床にへたり込んでいる私の手をぐいっと持ち上げて、「新しく来た掃除屋さん?」「え……えと、はい……?」「おっこれからよろしく!」

ピシッと人差し指と中指をくっつけておでこ辺りからひょいっと飛び出す、カッコつけたようなポーズをする。私は思わずくすっと笑ってしまって、日本語じゃないけれども言葉が通じることにものすごく安心して、「はい!」と元気よく挨拶した。

「あ、あの、私、、じゃなく……えっと、です!」
「おう。だな! 俺は科学班見習いの李桂。若いもんどーしよろしくなぁー!」

そう言って、李桂さんはぐいっと親指を突き出した後、白い白衣をぱたぱたとはためかせて、「じゃーな!」と手をふりつつ消えてしまった。取りあえず私も一生懸命手を振った後、あ、ここがどこか李桂さんに聞けばよかった……! と気づいたときにはもう遅い。
李桂さんみたいに、英語も大丈夫だよーって人が他にもいたらいいなぁ、と周りから聞こえてくる、(おそらく)中国語に耳を傾けて、せっかくだから中国語も話せるバイリンガルを目指そうかな、とちょっと前向きに考えた後、バケツの水かえに没頭したのだった。



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2011.01.10
アジア支部は中国語を話してるだろうけど、アレンと普通に話してるから英語もいけるはず……! と判断。




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