ビリビリビリ


第1話  神様プリーズトリップを!



壊れてしまった機械の、電子音が聞こえる。激しい爆発音を、す、と黒い髪の、風紀委員と書かれた腕章を持つ少年が駆け抜けた。息をのむような周囲の空気に、一人少年は鼻をフンッとならすと、いつの間にやら持っていた指輪を、手の中で遊ばせる。「これ、いらない」 何を、一体。誰かがもらしたマヌケな声が聞こえた。もしかしたら、その場全ての人の声だったのかもしれない。「さぁ、おりておいでよ。そこの座ってる君」

睨み付ける     合わさったような視線に、少年は、肩へと羽織った学ランを、風に遊ばせながら、低く、淡々と聞こえる声で、いった。

「サル山のボス猿を咬み殺さないと、帰れないな」














「イヤアアアア! 格好良すぎるー!!」

鼻血が出る、一歩手前で、バタン! と本を勢いよく閉じた。ごめんよ了平くん! キミが表紙だっていうのになんていうか、私には
刺激が強すぎる。やっぱり雲雀はかっこいい。咬み殺す! いわれたい。トンファーで殴られたい。ネット通信で購入してしまったトンファーを見つめて(もちろんの事ながら、使ったこともないし使えない)心の中で叫んでみた。かみころす! 誰が聞いているかわからないので、堂々と叫べない事が口惜しい。

ふー、とため息を一つついて、辺りを見返した。茶色い箱(っていうか段ボール)が所狭しと積み上げられていて、「ふおおおお」と思わず感嘆の息を出したくなる。

「いや、ふおおおお、じゃないでしょう」
ガツン!

「いったー! ちょっとお母さんなにすんのよ!」
「いい年こいた高校生が、なに漫画なんかで興奮してんのよ」
「漫画なんか、漫画なんかといったね!?」
「アンタがいったのよ、一人暮らししたいって。さっさと荷物つんで頂戴」

もう一発、がつーん! と頂いた頭への衝撃に、一人段ボール箱の中に沈み込んだ。そうなのだ、今週からどっか遠い所へと単身赴任するファーザーについて行くとマザーが。そんなもんにアタイついていけない! 一人暮らしでフィーバーしますから! と、私が。新しい住居へとの準備に(なにやらこの家は他の人に貸し出すとかで)もそもそもそ。


思わず荷物を詰めながらおっとリボーン発見! と読み返してから数十分。そして殴られたかわいそうな私。またお母様の機嫌をそこねちゃいけないと段ボールの中にこれも詰め込みんだ(あああ、雲雀かっこいーなー)あろう事なら、幼少時の雲雀のお世話をして、ついでに雲雀を先輩といって、お隣の家から一緒に登校したいものだ。え、夢が詰まりすぎてるって? そんな文句もかみころす!

黒いマジックを取り出して、きゅぽんっと蓋を取る。さてさて、この段ボールには、なんて書いてやろうかしら(愛しのリボーンがつまってんだから、あっちに引っ越しても、一発で分かるように、目立たせないと!)「よし!」

「神様へ、雲雀くんとのトリップライフ、よろしくね!」


でかでかと書いた文字は、隠そうにも、隠しきれない感じだった「ふふふ」これで一発、まるわかり!(私の欲望もだけど)

「ちょっと、用意出来たの? って何ソレ、神様へひば」
「イヤアアアアア! 読まないでぇえぇえぇえ!!!」

(人並みに、羞恥心はあるんだから!)(うふ)






「まったく、アンタってホント変な子ねぇ」

ぶるるんぶるるん。車の中の静かな振動に身を任せて、ただ今会社へと色々整理が忙しいらしいお父様に変わって、私&荷物を運ぶ母をチラリと見てみた。すみません変な子で。でもそんな変な子に育てたのはお母さんよ! なんていえやしない。ぶっちゃけ未だにさっきのショックから、私は抜け切れていない(テンションにまかせた行動は禁物だね)
もうちょっとで着くわよ、と聞こえた母の声に、アイアイサー。案外でかいマンションを見て、「お母さん、なんかリッチっぽいよ…っ!?」何コレ大丈夫なの、と勝手に動く私の口は、多分天性の庶民気質だ(アハ!)

「ここのマンション経営してる人が、お母さん達の知り合いなのよ。だから下手なトコよりも安くつくの」

へぇ、それっていいのかな、とか思ったけど、とりあえず気にしない事にした(寧ろラッキーじゃん)ゆっくりとなっていくスピードに、お、止まるのか。と思って、最後に一つ、大きく揺れた。


ピシリ



「あれ」
なんか今、反転した。や、なんか反転した。揺れた一瞬、体ごと大きくバウンドした。

「何ボーとしてんのよ、さっさと行くわよ」

明けられたドアの向こう側で、私と似たような顔のお母様が、目をつり上げてこっちを見ていた。あれ、なんださっきの、気のせいか。そうか、気のせいか。
俗に言う、立ちくらみってやつかな、と熱中症どころか風邪すらもまともにひかない健康児はそうおもっといた「あ、おかーさん待ってー」
(………あれ)
一歩踏み出した足の、感覚が妙なのも、立ちくらみってヤツの所為なんだろうな、とおもっといた。

先に部屋の方を見ときましょ、というお母さんの発言に、よく分からないので頷く。取りあえず無駄に豪華なここのマンションは、ちゃんと他の人が入れないように、番号をうちこまないといけないタイプらしいなんていう名前だったっけこれ)。安心した、妙な所で手を抜かれてるんじゃないかと実はちょっとドキドキしてたんですよね!
調子扱いてエレベーターを使って、お目当ての階まで上る。チンッ! まるでオーブントースターができあがったときみないな音が聞こえて、4と書かれた数字に、ぞっとする(1階とかなら楽なのに!)

、あんた一人なんてホント大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」

まがって一回、二回。どうやら私の部屋となるらしいドア(、と書かれた表札が、妙に誇らしい)に、お母さんは鍵を差し込む(最初ぐらい、私だっていいのにさー)(まぁ、これから何回もするんだし、いっか)そのとき、お母さんは、ぼけーっと後ろに突っ立ってた私をちらっと見た。

「ご近所付き合い、大切にしなさいよ」

あいよオッケー。コクコク。頷いた。
取りあえずお隣さんの名前だけでも確認しとこう。右側のプレートを、見ようとした時だった。

がちゃん、と開けられたドアからは、とっても綺麗なお姉さん。ぱちっ、と会った目を、そらそうとして、お姉さんの足下ぐらいに、ちっちゃい男の子がいる事に気づいた(あ、すっげぇかわいい)(……姉弟、じゃないですよね)
子どもながら、きゅ、と細められた目尻に、かわいい、と思うよりも、かっこいい、とか思ってしまう(……あ、この子なんか雲雀に似てる)


「あ、お隣に越してきた方ですか?」

真っ黒な長い髪が美しいお姉さんは(でも多分人妻だろうな!)男の子の手をぎゅ、と握ってとっても綺麗に微笑んだ。私と、鍵をガチャガチャと開けるのに苦労していた母さんは、思わずマヌケにも口をポカーン、とあけた後で、「あ、はいそうです!」 と、母さん。

「やっぱりそうなんですか」
「ああでも、ここに越すのは娘一人で……、挨拶」
「あ、すみません、えと、です」
「こんにちは、私となりに住んでいる    

お姉さんの足下の男の子が、小さな声を上げて、「かあさん」といった。え、なにそのボイスごっつかわいい! お姉さんは、ふ、と優しく微笑んで、「大丈夫よ」……なんだろう、この男の子、人見知りとかだったりするんだろうか(やっぱし、この子似てるなぁ)(人見知りは、ないだろうけど)
改めて、お姉さんは、にこっと私たちに向かって微笑んで、いった。


「隣に住んでいる、雲雀です。こっちは息子の恭弥」
よろしくおねがいしますね


今なんつった? と思った思考の中で、母さんが、ほらあんたも! といってくる。ぐるぐるぐる回る思考の中で、ぺこりと頭を下げた「よろしく、おねがいします?」
「しっかりした娘さんですね。高校生ですか?」
「いいええ、中二になったばかりの、まだまだ子どもですよ」

なんか母さんが言っている。ぐるぐるぐる。パチリ、と少年と目線があった。ふん! すぐにそらされてしまった目に、一人ショックをうけて、お隣さんのプレートは、やっぱり雲雀だな、と思った。(っていうかお母さん、私高校生じゃなかったっけ?)(かみころすー!)


 


2008.01.01