今更ながらに、時々思う事
彼からの気持ちを一つ
「、さん。今日は一緒に、帰りません、か」
俺ってなんて情けない。情けない情けない。取りあえずこの頃の俺は、一日に軽く二桁はこのセリフを口にすると思う。ぶるっと震えた指先と、ほんの少し裏返った、声に、ごくりと唾を飲んだ。
けれどもこんな情けない俺の言葉にも、さんはにっこりと笑って「うん、でも私、今日は掃除当番だから、ちょっと待ってもらわなきゃ駄目だよ?」「ぜ、全然、いい!」
ホント? とにっこりとまた微笑まれると、俺の奥の方で、何かが、かーっと熱くなる。じゃあさっさと終わらせてくるからまってて! と鞄をぱっと掴んで、すっかり取り残された俺は、ふう、と軽く息をついた。
(さんって、俺の事、すき、なんだよな)
カチッコチッ、と針の進む音を聞く度に思い出す。あの時、彼女はしっかりと、この教室で俺に好きっていって、俺もうん、といって。
(…………今、俺はなんなんだろう) 確かにいった。確かに返した。じゃあ俺は、あの子と、付き合って、
「………………そりゃないよな」
もしかして。俺と、さんの‘好き’は、違うのかもしれない。うっすらとそう考えると、胸の奥の方が、ズキズキとする。(俺って、)いや違う、(俺と、さんって、)
「なんなんだろう」
「なんでもないわよ」
ビクリと体が飛び跳ねた。思わずキョロキョロと辺りを見回して、背中にかけておいた鞄の紐を、ぎゅっと握る(だってこのクラスで、俺はさん以外と、話した事なんて、まったく、)
未だにキョロキョロさせていると、「ちょっと無視すんの、真田一馬」なんて、どこか怒ったように(いや事実怒ってるのかもしれない)低い声を、ずんっと出して。
ばんばんばんっと何回も叩かれた机の手から、すすすと視線を移動させる。細い手から、肩口にかけて、そいで首もと。そのまま俺の視線は、ぴたっと止まった。その女子の制服を見つめる事ぐらいが、俺の限界だった。そしたら、その女子が、「ちょっと真田一馬、あんた人と話すときは目くらい見なさいよね」
それとも、しっかり顔を見て話せるのは、限定なの、アンタ。 明らかに、嫌みの口調を含んだソレに、イラッとする気持ちと一緒に、ソイツの顔をジロリと見る(大抵のヤツは、これで俺の目つきが悪いとかなんとかいいやがる)
ふんっと鼻で笑ったソイツを見て、正直コイツ、誰だったっけ、と考えた。いや同じクラスだろうし、どっかで見たことがある。取りあえず、はっと気づいた事は、さんといつも一緒にいる、クラスの女子だった気がする。
「あのさ、ほんっといい加減にしてよね真田一馬。ちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃないわよ」
「(………何かあらぬ誤解をかけられている)別に、のってない」
「乗ってるわよ。何、アンタの態度いい加減にしてよ。アンタはをふったのよ。ふった。意味分かる?」
またバンバンバンッと机を叩いた音が、未だにざわつく教室の音に吸い込まれる。何が、といわれた言葉がぐるりと頭の中を回って、「え」とマヌケなぐらい小さな音しか出す事が出来なくて。
「好きっていわれて、はいそうですかって返して。それがふった以外の何になるのよ」 あの子はぽやぽやしてて、そんな事いわないけど、アンタ見ててすっごいイラつく。
ギロリと射抜かれたような視線に、なんだか、頭をハンマーでぶん殴られたような気分になった。
(大変だ、俺とさんは、告白してふった関係になっているらしい)
(え、それって、まずくね?)
1000のお題 【647 少々お尋ねしますが・・・】

2007.11.26
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