すきです。
真っ直ぐ真っ直ぐ、あの子は俺をみた。
彼からの現状(?)報告
さんが隣の席だったのは、たった一ヶ月の事だった。席替えなんて毎月あるし、毎回同じ子が隣になる訳じゃない。こっそり。こっそり。俺はこっそりともう一回彼女ともう一回となりになれますように! と寝る前に布団の中に入ってずっと考えてたのに、俺は一番端の廊下側。さんは一番端の窓側。合計6列分離れた席を見つめて、(……せめて同じ班に入れますようににしときゃよかった)と考えた。変な欲なんて出すからカミサマってのに裏切られる気がする。
でもよくよく考えたら、ちょっとだけ進歩した俺は、さんと話すときなんて朝席に座るとき「おはよう」「うんおはよう」なんて会話一つだけ。ときどき何かの弾みで話す事があったけど、そんなに長くは続かない。もともと俺は口べたな上に、女子と話すことなんてないし、ましてや相手がす、…すきな女の子なんだから、結人みたいに巧みな話術を発揮できる訳でもない(ものすごく当たり前だ)
だから。こんなに席が離れてしまった今も、あんまり関係ないんじゃないか、なんて思えてくる。………だって、おれさんと話そうとしたら、心臓バクバクして死にそうになる(ああでも朝の挨拶が、一番の楽しみだったのに)
「……おれって、なんでこんなダメなんだ」
肝心なトコでいつもこうだ。ついでにいうと、思わず洩れてしまった声が、あり得ないぐらいなさけない。なさけない!
ため息と一緒に、ゆるゆるとさんの机をじっと見つめた。もちろん自分の席にぺったりと顔をくっつけて、こっそり、こっそり(誰にもばれないように)
彼女がいない、ぽつりとした席でも、なんだか見てたらどきどきする。なんだよ俺おとめかよ!
心の中で、(さん)それだけ考えるだけで、もの凄く幸せな気分になる。(なんだこれありえねぇ)(さん)…下の名前、なんだっけ(うそだ、ちゃんと知ってる)……なん、だっけ(俺、知ってる)
「」
「あれ、真田くん?」
「……………(あれ)」
コンコン、と頭をぶったたいて、机にふせってた顔を上げた。一瞬白くぼやっとした視界になって、ゴシゴシ目を服のそででぬぐう。「あれ真田君、ねてた?」とくすくす笑い声と一緒に声が聞こえた。(ちがうけど)「……うん、寝てた」「早く移動しないと、チャイムなっちゃうよ」
ああこのこ、さんだ、と頭の中でしっかり認識して、彼女は自分の席へと戻って、机の中をごそごそといじる(そうか、教科書か)……すっかり忘れてたけど、そうか、次、移動教室じゃん(だから誰もいないのか)
黒板の上の方のアナログ時計を見つめて、かちかちと音のなるソレは、長い針がもうあと五周もしたらチャイムが聞こえてしまうはずだ(違う、この時計は一分早いから)あと、六周か。
俺もさんにならって机の中をごそごそ。筆記用具とノートと教科書と、下敷きはめんどくさいからいいかと思ったけど、ノートに書いた字が汚くなるのがいやだったから、持って行く事にした。
ひょい、と机に向けてた顔を上に上げると、さんがひょっこりと立っていた。「早く行こう」とにっこりと笑いかける彼女は、あれもしかしてこれ、一緒に行こうって意味じゃね。みたいな。(時計の針は、あと四周しか残ってない)
「………走れば、間に合う、かな」
「うん多分大丈夫」
「……ん」
何で俺ってヤツは、彼女と話すとき、妙な間がてんてんてん、とついちまうんだろう。謎だ。今世紀最大の、……とはいわないかもしれないけど、謎だ。俺的にいうと、こんな間なんてさっさと取り去って、その代わりに他の言葉で埋めて、もっと彼女と話したい。これって俺なんか間違ってる? そんな訳ない。
がったんと俺は席を立って、(あと、三周)うつむきがちに教室を出ようと、ドアに手を掛けた。「真田くん」彼女の声が、後ろで聞こえて、「…………なに」(だからなんで俺、こんな間が出来るんよ)
ちらりと見たさんは、まっすぐ俺を見つめてて、一瞬俺はビクリとなった(まっすぐ見れない俺を見透かされてるみたいだった)
「真田くん」 もっかいいわれた。なに、と。今度は間を開けずに、答えられた。
「すきです」
ぱんっ、と頭の中がはじけそうになって、いや多分はじけたけど、どんどん真っ赤に俺の顔がそまってって、(だってすっげー熱い)にっこり、とさんは、俺が消しゴムを落としたとき、拾ってくれた、あの時と同じような笑みをしてて、……え、なに、今俺なにいわれたの、すき? 誰が、誰がだよ、さんが、俺? え、俺? 俺がすきじゃなくて、え、なにが、なにが、なにが?
それだけだから、とさんが言って、ドアに手をかけようとしたとき、俺これなにかいわなきゃだめなんじゃね、と頭の中で、ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる回って、
「うん」 俺も、
俺も、っていおうとしたきに、さんが、すっごくいい顔で、にっこりと笑って、
ぱっくり開いた口は、なんでだか声が出なくなって、「ありがとう」と「気持ち聞いてくれてありがとう」
ガラリと開いた扉から、さんはするりといなくなってしまった。
ヘタヘタヘタっ、と抜けた腰に、バシリと机の脚を両手で持って、ばさばさ飛んでいった教科書とノートと、筆記用具と、下敷き達。
多分真っ赤な俺の顔は、まだぐるぐる頭の中で色々渦巻いてて、
(何コレさんが俺をすきで、俺はさんがすきで、あ、あれ、え、え、これって)
りょうおもい?
(でも俺ってばしっかり返事が出来なかった訳で)
(でも返事はした訳で、あれ、これって一体どうなってんの?)
1000のお題 【311 脳が飽和状態】

2007.10.07
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