〜〜前回までのあらすじ〜〜

ある組織のスパイとして進入したちゃんは、どうやら即座に発見され、アジトの中枢へとつれてこられた、ピンチを脱出したものの、次に彼女の前に現われるは、生き別れの師匠さま! プリンセスホールドをガシッ! とやられて、どうする、ちゃん!

…………だめだ落ち着こうとしてるのに、すっごいテンパっちゃってるよ私! どどどどどどどうしよー!! なんだようスパイってぇ!


第17話  ミッションインポッシブル! 3




「………何を、している」

ゆっくりと、深い声で、手塚先生は眉間に皺を寄せつつ(あれ、いつも寄せてる?)、聞き覚えのあるセリフをいった。ただ今私はぎゅ、ど抱っこされつつ、ど、どしようこれ! 取りあえず「え、エヘヘ☆」と、誤魔化してみると、クワッ! と手塚先生の瞳が、通常の二倍の大きさに開かれた!(え、マジでちょっと怖いんだけど!)

(きっと)何かの考えがあってここへと私を連れて来たであろうサルを見た。……だめだなんかムンクのさけびしてやがる!

(ここは、正直に、話した方が、いいか、も?)

手塚先生なら、そう私を初等部へと連れて行ってくれた手塚先生なら、力を貸してくれる気がする! ……と、意気込んだとき、頭の中で、「すきやき」が通り過ぎた。よく考えたら、あの文字、掲示板に貼っているといったが、流石に無断ではる訳にはいかないだろう。そう、中等部の先生に、許可をとっているに違いない(そうなのか真知田ちゃん!)

暖かく、ぽかりと私を抱きしめていてくれる、この腕が、一瞬、ひやりと冷えた、気がした。
(……中等部の教師は、みんな、敵…?)
ぎゅ、と手塚先生の腕を掴む。「な、何をいきなり掴む」どうしよう、どうすればいい。「聞いているのか」ああ頭が割れそうだ「おい」それでも、それでも私は前へと進む! 「無視をするな」
(ごめんなさい、手塚、先生)


一瞬、パチリ、と先生と目線が合った。多分、私が泣きそうになっていたのを見てだと思うけど、ビックリしたように、一瞬目を見開いて、手の力がゆるむ。そこで私はナイスタイミング! とばかりにぐいぐい下へと力を入れた!
すたーん! 自分の足で地面に立つって、素晴らしい!


「お、おい」「ごめんなさい先生!」
そのまま反射的には、私にとばされた腕を、思いっきりひっぱって、避けようとして、手塚先生の股の間(キャ☆)を通った! 力一杯その方向へ向いた所為で、先生が掴んだはずの私の服が、先生の指の間からするりと抜けて、走り出したとき、ズッダーン! と後ろで大きな音が聞こえる。一瞬だけ後ろを振り向くと、先生が背中からの形で地面とぺったりくっついているのが見えた(ご、ごめん先生!)(でもそんなバランスの悪い状況でひっぱるからだよ!)
「ぶぶぶぶぶちょぉおおおーーー!!!」「ちょ、大丈夫ッスか、大丈夫ッスかぁ!」「ヒイ! 変な体勢になってるー!!」


……走り続ける私。けれども後ろから聞こえてくる声に、…あれ、もしかしてこれ一大事? 一大事? 超一大事になってる? ……なんか怖いので、気分的に足を上げ下げするスピードアップ! ちょこっと疲れるけど、一刻も、はやく、この場を抜け出したい。変な事が起こる前に! 「みんなあのガキを掴まれろ締め上げてやる!」「「「「おーーーーー!!!!」」」」………
マジで!? (だ、だからはやく逃げたかったの、に…っ!)(なんか微妙に、やめようよ! とかいう声が混じっているのが幸いだ)


いちはやく私の隣に、ぴったりとくっついたのは、部長の近くにいた、桃城ってヤツだ。ツンツンした髪の毛がちゃ、チャームポイント! かも!
「いけねぇーな、いけねぇーよ」(なななななんだこのひと!)「ガキがこんなトコに来ちゃダメだぜ」
ふふん、と余裕の表情で隣で走るこの男を見ると、無性にむかつく! なんだよコッチは一生懸命なんだぞ小学生なめるんじゃねぇ!
すいー、と桃城の手が、私の襟首をねらった瞬間だった。桃城の手が向かう方向と反対方向に、私はぐるりと回り込んで、桃城の懐に入り込む「…え?」ははん、時既に遅い、とはこの事だ。しっかりと軸足に力をこめて、右足を振り上げる! ガスッ! チーン☆ くりーんひっと!(男はそこねらったら痛いんだよね!)

うおおおお、と声にならない声を上げながら、股へと手を伸ばして、へなへなと座り込む桃城。ずしゃ。いつもなら、勝利! とVサインの一つもあげたいところなんだけど、時間がない!


ズダダダダ! って、たくさんの人の足音が聞こえた。ビクリ、と反応する体。逃げなきゃ隠れなきゃ、はいどこに!?
一瞬視界の右端にチラリと見えた、ふさふさと緑に生い茂る、樹木。よっしゃ! と木に足をかけて、するすると上へとあがる。ちょこっと足場は不安定だが、全然問題ない(私すげー!)


「へへへーざーんねーん! 俺も木登り得意なんだにゃー!」
(ひい! 次は猫っこかよ!)

頑張ってするする上へと上っても、ちらりと下を見ると、外側に髪がはねてて、絆創膏をぺたっ、と頬に貼った男の子が、私の倍以上のスピードでするすると登る。確かに、得意っていうだけあって、凄い! けれども私は負けてはいられないのです!

「ふんぬぅー!!!」
「うわ凄いスピードあがった!」
「うりゃー! こんじょー!」
「すげー! マジすげー! がんばれー!」

(あ、なんか敵に応援される私ってなんなんだろう!)
ある程度まで、ぐるぐると登っていって、丁度太い枝へと足をかけた。右腕と、右足に力をいれて、グラグラする体をなんとか支えてぐるりと回る(下から、あぶないよー! って声が聞こえた)

お腹と、あご辺りが、ぴったり枝にくっつく形になって、さながら、なまけもの逆バージョン。ぐいぐいと重力の関係でひっぱられて、押しつけられるお腹がちょっと痛いけど、ダイジョーブ!
枝を足で掴むと、ブルブルと筋肉が震えた。……う、ちょっと、しんどい。

「おーい、あぶないよ! おりてこーい!」
「にゃんこ先輩、人には、ゆずれぬ、もにょが(か、かんだ!)」
「(にゃんこ? っていうか今かんだ)あぶないよん?」
「ゆずれぬ、ものが!」
「(あ、言い直した)…でもあぶないよー!」

なんか激しくバカにされてるような気がしてきて、下にミンミンゼミみたいな感じで、ぴたっと大きな木にくっつくにゃんこ先輩を睨んだ! そしたらどーしたのー? といわれた。ううう、睨み通じず、気づかれず!

「そろそろ降りてきた方がいいよん、ホントにあぶないから!」
「く、いわれなくても、だっしゅつほうほーを…っ! ………あれ」
「うん?」
「おりれない」
「にゃー!!!???」


問題発生どうしよう。






もう下には、テニス部の皆様が大量に集まっていらっさしゃる。「がんばれー!」「菊丸先輩あの子おろせないんですかー!?」「さっきのメチャクチャ痛かったっつーの!」

最初の返事にはありがとう。次の返事には、枝が細くてムリ。最後は桃城。ざまーみろ! 
へっへーん! と笑ってやろうとしたら、枝がぎしぎしいってムリだった。ちょっと怖かった(ひいいいいい!)

ちろり、と下を見てみる。ちょこっと小さめな形になっているテニス部軍団と、ぺとーっと木にはっついて、なんとかしようとオロオロしているにゃんこ先輩。ぞわりと来る恐怖感もなく、むしろ「私はおまえらより高いとこにいるんだぞすげーだろ!」と叫びたい(でもさけばない!)(えらい)
けど、一歩足をおろそうと木に体を巻き付けようとしたら、足が短くて届かなかった! ぎゃは! おちる!

「おーい、きみ、やっぱダメ? 降りれない?」
「にゃんこ先輩、ひとにはできることと、できない、ことが」
「それはもういいよ」

どどどどどうしよう! このままじゃ埒があかない! 夕日がくれても、今の状況のまま変わらず木の枝にくっつく私を考えたら、寒気がしてきた。な、なみだがでそう!


一瞬、なぜだかテニス軍団が、しーん、と静まりかえった。なんだ、と思って下を見たら、茶色い髪をした人が(顔がよく見えない)ちょこちょことこっちに歩いてくるのが見える。「…あれ、なにしてるの?」「え、あのう、先輩委員会だったんじゃ」「そんなのさっき終わったよ」………なにしてんの。

状況説明が終了したら(なんか説明の単語に、あのばかが、とか入ってた気がする!)(むかつく桃城)茶髪の人が、「ふーん」と一言つぶやいて、私の丁度真下へと移動した。なんだなんだ、と部員の声が聞こえる。私も心の中でいわせてもらおう。なんだなんだ!


「あのさ、君」

君、といわれて、だれだろう、と考えて。あ、もしかして私じゃね?
なるべく体勢を変えないように、「はい!」と返事した。ちょっと声が裏返った!

「もう、落ちたら?」







死亡フラグ?








「ちょ、先輩そりゃないでしょ、たしかにちょっとムカツクヤツだけど!」(桃城むかつく)「うええええー!? ひひひひどいよ元々酷いヤツだと思ってたけど酷すぎるー!」(にゃんこ先輩いいひと)「………お前にまかせる」(て、手塚先生なんか色々放棄した!?)「「「ひひひひひでー!!!」」」(三人組うるさい)
なんか名前のしらない人たちが、それぞれその茶髪先輩にぎゃーぎゃー文句をいう。……う、ちゃん涙がでそう。あんたたち、意外といいひと達だったんだね?(それがちょっと表にでないだけで)

茶髪先輩は、「ちがう」と一言。それで私にむかって、「君、いつまでも降りれないのは、嫌でしょ?」淡々と言葉をはいて、最後にね? と首を傾げるのが見えた。なんだか返事を期待している風に見えたので、私は小さな声で、ぼそりと「……おりれないの、いや、です」

うん。だったら。茶髪先輩が、ぐ、と手を開いて、さながら王子様みたいに、して
「ほら、おいで」


よいしょ、と私は身を乗り出した。下で、「あああああぶなーい!!」って声がいっぱいかさなって聞こえる。けれどもなんだか遠い場所で叫ばれてるみたいだった。

ギシギシギシ。枝がきしむ音が聞こえた。ほんの少しずつ大きくなるその音に、やばいぜそろそろ終了だ、といわれてるみたいだ。「いきます」


とんっ、と右足に力を入れて、私は宙へと飛び出した!



飛び降りる事は、全然怖くない。だって、もっと高いところから、私は飛び降りた事がある。けれどもそこでだって、救いはあった。ゆーしに会った。ゆーしに、助けてもらった。
(べつに、いつも助けがあるとは、おもってないよ)
けれども、信じるぐらいは許されるんじゃないだろうか。



落ちる。落ちる。ゆっくり落ちる。
空気がびゅんびゅん私に当たって、「わー!」と叫ぶみんなの声が聞こえて。
空がどんどん遠くなる。地面がどんどん近くなる。
ゆっくりと、ゆっくりと近くなって、私はぎゅ、と目をつむった。


ぼすり、と音がした後に、ゆっくりと優しい声がして、「おめでとう」といわれた。その後ゆっくりと頭を撫でられた。くすぐったくて、「や、やめてください」という言葉と、「ありがとう、ございます」…たぶん、今私の頬はまっかだと、おもう。

「ううん、礼には及ばないよ」「へ」「やっと、捕まえたから」
甘く響く声に、ビクリとなった。ゆっくりと、ゆっくりと、頭を撫でられる。…………あれ、なんか、ヤな予感が、する、ぞ?


そろりそろりと視点を上へとむける。ゆっくりと、ゆっくりと、茶髪先輩と、目が、あった。

「……………………い、いとめ、やろう」
「あのときは、すっごく痛かったよ」

やばい目が笑ってない。

「あ、あの、放していただけると、すっごく、うれし」
「え? 逃 が さ な い よ 」


「い、イヤーーーーーーーー!!!!!!」
なんか、目が、ひらいた!










「それで、中等部まで忍び込んだと」

無駄にメガネが逆光している先輩がガリガリと何かをノートに書き込んでいる。……多分、私が洗いざらい話した事を、メモってるんだろうけど。

汚い部室の中に、押し込められて。理由を聞かせてもらおうか。というか、もう事情聴取の勢いに、な、なきそう(だってこのメガネこえーもん!)
大量に押し詰めるレギュラー陣(らしい)。唯一の良心、たまご先輩が、「かわいそうだろ、もう少し優しく聞いてあげてくれよ」といっている。……うう、いいひとだー!(タカさん、って人もいいひとっぽかったけど)(でもいきなり、バーニーング! って、叫ばれた)(だまされた)

「別にいいと思うのが。自分の作品を展示されているだろう」
「そういう問題じゃないんです。ヤなんです! なんで手塚先生には分からないかな!」

しーん、と、嫌な間が、ひらいた。

「………手塚せんせい?」
「なにいってるんですかにゃんこ先輩」

もっかい、しーん、と、なった。なんだか色々とみんながボソボソ小声でお話しているのが聞こえる。「なるほどそうだな」(逆光メガネ)「納得だよね」(にゃんこ先輩)「コラコラ本人に失礼だよ」(糸目先輩)「バーニーング!」(一人だけ小声じゃない!)

「あの、変なこと、いいました?」

また、妙な間が、一瞬開いた。けれども一人、糸目先輩が、すっごくいい笑顔で(いつもいい笑顔だけど)、ぽん、と私の肩に手を置いてきて、

「いいや。とっても素敵だと思うよ」
何が


「………お、おまえら」
視界の端っこで、ぶるぶると震える手塚先生が見た。顔を真っ赤にして、今ならメガネも手でひねりつぶせそうな感じだ。ぐ、ぐ、と何度も手を握って、深呼吸している。どうしたのかな、体調でも悪いんだろうか。「……手塚、せんせい?(どこかシンドイんですか?)」……………ぷっつーん(あれ、変な音聞こえたぞ)


「グラウンド、ごごごごごじゅっしゅ!」
「(あ。舌回ってない)…せんせー?」
「(くっ!)グラウンド、100周!」
「「「「「「(増えた!)」」」」」」


なぜだかその後、私も強制的に走らされる事になって、死ぬかとおもった(つか、むりだろ!)
そしたら木陰でぐーすか眠るえちぜんりょーまを発見した。
すっごくむかついたから、顔にラクガキしようと思ったのに、マジックがなかった!
(あああああああもうなんなんだちくしょおおおおお!!!!)


100周なんて到底むりだったので、へろへろになるまで走ったら、ゆるしてくれました。
そのときの手塚先生の顔が、「あ、しまったやりすぎちまった!」って顔でした。だったらお願いだからはやく止めてくれよ! といおうとして、「ありがとうございます手塚先生」っていったら、「残り79周がんばれよ」と応援されました(………あれ?)


もう疲れすぎて、すきやきとかどうでもよくなったです。




  


2007.08.24