お箸を握りしめて、もぐもぐとご飯を口の中につっこんでいる私に、にこにことした表情をしていた彼が、
「あのさ、佐助くんの事、お母さんっていっていい?」
と私が呟いた瞬間、もの凄く嫌そうな顔をして「何いってんの?」といわれてしまった。
story01
事の始まりは簡単だった。さんのお母さんってどんな人? とクラスメートがなんともなしに尋ねてきたものだから、ううんと、と私は首を傾げた後に、あれ私のお母さん? と自分自身に疑問を持ってしまった。おかあさん。そういわれれば思いつくのは女性なはずなのに、私の脳内には茶髪の明るい男の人が思い浮かべてしまう。隣の家の少年は、いつの間にか大学生になっていた。
「だからね、佐助くんの事お母さんっていっていいかなぁって」
「その会話で、なんでそうなっちゃうのか俺様理解できないよ」
だいたいのホントの方のお母さんが泣いちゃうじゃない。とただ今父母そろって単身赴任中の両親を思い浮かべる。
私が高校を卒業するくらいには戻ってこれるっていってたけど、あんまりにも長い間あっちに居るため、なんとなくこの家に家族全員がそろっているのが想像できない(もちろん、お正月とか、お盆とかには顔を合わせるけど)
「佐助お母さん」
「やめてよ、俺それホントヤなんだから」
自分が作ったご飯を佐助くんは本当に不機嫌そうに口の中に放りこんで、とっても美味しいのに寄せられた眉間があんまり美味しくないのかと勘違いしてしまいそうになる。「じゃあ佐助お兄ちゃん?」「それもヤだ」
佐助くんはひらひらとお箸を泳がして、(いつもだったら私に行儀が悪いって怒るくせに)「あのね、は佐助くんでいいの」ととっても真顔でお茶を飲み込んでいた。
取りあえず今のところ、佐助くんにいう事に間違いはないので、私がうん、と頷くと、佐助くんもうん。という。
てんてんてん、と暫くの間があって、さっきまでの会話と不機嫌を忘れたかのように、「洗濯物ちゃんと干しときなよ」と佐助くんは呟いた。
どちらかというと私は忘れっぽいので、佐助くんは家を出る前にいろんな事を確認する。忘れないよ、とあんまり胸を張っていえない事がもの凄く寂しい。
「ねぇ佐助くん」
「なぁに」
「あのね」
ほんの少し食卓から体を乗り出して、「さんのお母さんってどんな人?」と訊かれた、私の答えを思い返した。
思い出したのは茶髪の男の人で、一人称が、何だか時々俺様で、面倒見がよくって「かっこいいひと」
「やっぱりなんでもない」
「いいなぁ、格好いいお母さん」とうらやましがる友人を思い出すと、ほんの少し笑ってしまった。くすくす右手を口元へつけて肩を揺らしていると、佐助くんは「変な俺の姫さんだね」とゆっくりと私の頭を撫でたのだ。
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おそらく鈍遅更新
2008.08.08