01We got to like each other
「なぁ、テンガちゃんって可愛いよなぁ」
でれっと鼻を伸ばした男に、私は思いっきりパンチをかましてやりたくなった。けれども拳を握りしめるだけで確かに奇麗で美人なテンガさんを見つめながら、自分自身ほけーっと見つめ、「うん、そうだねぇ」と語尾を緩ませた。
「だろう、ヒックスめ」と毒づく金髪の彼の隣をゆっくりと歩きながら、なんで私は、と半分泣きそうな気分になったのだった。
私は暫く前にこの世界に落ちた。落ちた。それ以外の何物でもない。パチリと目を覚ませば、まったくもって知らない光景が広がっていたのだ。あんまりにも混乱して事態をきっちりと捉えることができずにひぃひぃと泣きだした。
だってみなさん、見事に帯刀してらっしゃるのだ。ちょっと待ってくれ警察にでも出頭なのかと思いきや、追いかけられたのは私一人だった。なんでだいったい私は何をしたってんだ。意味がわからん。
でも皆さん随分必死の形相だった。こっちも死ぬ気で逃げて逃げて逃げまくって顔中を泥だらけにしながらも転がり込んだ目の前に、おそらく彼がいた。
金髪の、イケメン兄ちゃんは女の子だからという理由で私を助け、無償で手当してくれた。
あのときは本当に本当に感動したものだけれど、この男、シーナはただのナンパ男だったらしい。女の子を見れば鼻を伸ばし、ひょいひょいとかけ寄りぶん殴られてしかしめげない。
呆れを通り越して何やら尊敬してしまいそうだけれど、私はこの男に助けられた。
そして現在半無理やりな形で連れてこられた反乱軍だか解放軍だかしらないが、戦争をしている真っ只中に身を置かせてもらっている。
(冗談じゃない)
純日本人な私にとって、戦争なんて知ったことか。そりゃあ理由があってするのかもしれないけれども、私はこの国に何の感慨もない。それよりも追いかけられまくった怒りの方でいっぱいだ。
命の恩人だかなんだか知らないが、こんなナンパ男、どこかへと放ってひょひょいと逃げてしまえばよかったのだ。
最初は失敗してしまったが、今ならなんとかできる。きっと、たぶん、勝手は分かった。
けれども何で私はそれをしないのか。
「あー、ナナミちゃーん、げんきー?」
隣でシーナがぱたぱたと元気よく手を振りながら、このアホめ、軍主の姉へと激突してやがる。今日も可愛いねぇ、なんていうものだから、ナナミさんは「やっだー!」とかなんとか可愛らしく頬へと手をあてて、恐ろしく速い拳をシーナの顔面へとぶちこんだ。見てて痛い。
けれどもシーナはめげない。イケメン顔を必死に作り上げながらも「ナナミちゃんったらいいパンチぃ!」とかがんばってる。でも足震えてる。
(………ああああもおおおお)
なんでだろう、私は。
そして今度はまた「リィナさーん!」 ばちいいいん! 「あらごめんなさいシーナさん」
イケメンなのに、あいつはなんでこんなにも扱いが悪いのだ。
頬に奇麗な紅葉を作りながらもいやあ美人はいいなぁ、と私の元へと戻ってきた男は、私に対して一回たりとも可愛いなんていった事はない。そりゃあ、この城にいらっしゃる美人で美少女でおまけに男(主に石版をいっつも守っている美少年とか)にも負けているような容姿の私だけれども、一回くらい、言ってくれてもいいんじゃないだろうか。
もう長い間、彼と一緒にいるのだ、一回くらい。可愛いなー、は。とか。想像したら寒気したけど。
(なんで私は)
「どうしたんだよ」
飄々としたそいつの顔を見ながら思った。
(なんで私はこんなのに惚れているんだろう)
俺は女の子を一人拾った。一番初めはなんつー小汚い餓鬼なんだと本音を言わせてもらえばそう思ったのだけれど、洗ってみればなんとか見られるようにはなったし、びくびくとした震え具合もいつの間にかなくなり、その子は屈託なく笑うようになった。
俺は女の子が大好きだ。甘くてやわらかくて男にはないものを持っているしまぁ肉欲的にも精神的にも大好きなのだ。世界中の女の子が大好きだといえる自信はないけれど、大抵の可愛い女の子が大好きだ。だからどうしても体が反応し、イイオンナにはにっかり顔が笑ってしまう。「ワカバちゃーん!」 がごおおおん!!
は一体何が気に入らないのか、むっとした表情のまま、「それじゃあ仕事があるから」とパタパタと手をあおぎ、さっさと俺へ背を向けた。「おーい、レストランで飯くうっていってたじゃん」「いらない」
最初のびくびくっぷりはどこへ行ったのか、とため息をつく反面、こっちを見てくれないだろうか、と少し思う。なんとなく、に笑ってほしいのだ。にっこり笑ってくれれば、なんだかきゅんとする。
もしかしてこれって、と認識したときにはこっぱずかしくてたまらなかった。今更どうやって相手に接しろというのだ。他の女の子と同じように甘いセリフを甘いマスクの上に乗せればいいだけだとわかっているのだけれど、想像するだけでも死んでしまうほど恥ずかしい。
それにもし、俺が可愛いよの一言でも乗せれば、はきっと思いっきり眉を寄せるだけだろう。きもいなんて呟かれた日には、確実に再起不能だ。まだ思いっきりぶん殴られる方がいい。
どうすりゃいいんだろう、とこの百戦錬磨のシーナ様が他の人間に聞くことも笑える話だし、プライドが許さないし、そもそも俺は自身に何を求めたいのかという話だ。
つまりはアレか、ちゅーか。ハグか。えっちなことか。
うんまぁそうかなぁ、と否定できない性に思わず頭をこくんと落としてしまいそうになるけれども、しょうがない。けれどもだ。
俺が女の子を追いかけているときは、思いっきり冷めた目でこちらを見ているし、そんなこと、興味のきの字もないのではないかとアーアとため息をつきたくなる。
もっと他の簡単に簡単な恋愛をさせてくれる女の子に惚れておけばよかったのだ。何でこんな素性も何もわからないしらけた女の子に惚れてしまったのか。
実は俺って不器用なヤツだぜアンチキショウと言葉を心の中で呟き、目の前の女の子の肩へぐいっと手を当てた。
「いーじゃんよー、俺がおごってやるしさー」
「いらない。シーナ邪魔だからあっちいって」
「邪魔ってなんだよ失礼な女だな!」
「目ざわりなんです消えてくださいー!」
「アアアこの野郎素敵無敵なシーナ様がめざわりだとオラオラオラー!」
「あたたたたたちょ、こめかみグリグリだめ、だめ、あうとー!」
「ぐりぐりぐりぐりぐりぐりー!!」
「ひぎゃあああああああ」
とりあえず、今日も仲がいいねぇはっはっは、と茶色い髪にどこぞの猿のような輪っかを頭に付けた軍主がにこにこと笑いながら駆け抜けていく。
その後ろでは鬼のような形相をした軍師が陸上走りで駆け抜けた。コノヤロウまちやがれ逃げんなチクショウ。やなこった。
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シーナ連載書いてる&求めている方いらっしゃるんでしょうか。需要0ですか。でもあったら嬉しいどすこいどすこい。
ところでシーナ×アップルは、公式………? うむ?
上記カップリングおせおせの方は申し訳ありません、ちょっとそこは、見ない、フリで………
執筆日 2009.01.16