02Return the library the book
「、どこ行くん?」
どこから現れたのか、目の前にひょこっと顔を覗かせた男、ナンパ男シーナに、「図書室」と私はぶっきらぼうに言葉を返した。そんな言葉を吐いた後に、必要以上にぶさいくになっていた顔をぐいぐいと本を持っていない手の甲でひっぱり、ほんの少しだけ、泣きそうな気分になった。
もうちょっとさ、愛想よくすればいいのに。「マジで、俺も行っていい?」 にかっとくったくなく笑うシーナに、「え、い、イヤ!」 いや、別に、嫌じゃないけど、反射的に。
愛想よくすればいい、と思った瞬間の返答に、ちょっと自分自身愕然としそうになった。泣ける。こんなんだからダメなのだ。案の定、シーナはむっとした顔をした。そのあとに、「あーそー」とツンとした声で斜め上を向き、くるりと踵を返した。(い、いやいやいや)一緒にいたいんですけど! なんて思いっきり自分の中で叫んでいるくせに、そんなことを思いっきり言う勇気もなくて、自分のつま先をじっと見つめた後、シーナと同じく反対を向いた。
つかつかつか。廊下を歩いて図書館へと目指していく最中、誰かが私の前を追い越した。明るい金色の髪の毛はあいつだ、シーナだ。なんだこいつ。ツン、とした表情をしたままでつかつか歩く。こっちに声さえ掛けやしない。(……怒ってるのかな) そりゃあ、怒るだろう。一緒に歩けて嬉しいくせに、物凄く嫌だった。いや、嬉しいけど。
イヤ! ですって。どう思います。嫌ですって。
一応戦時中な訳だから、一緒にいれる時間なんてたかがしれてる。だからこそ、そんな時間の中で、なるべく一緒にいつつ、俺の好感度でもなんでも上げてやろう、と考えてるのに、どうにも上手くいかない。イヤですって。俺嫌われてるのかも。いや拾ったのは、俺だし。流石に嫌われては、でも普通、好いてるやつに、嫌なんていうか? いわねぇよなぁ。
希望的観測は空しくなるからやめておく。イヤ! と叫ばれた垣根を飛び越えて、俺はつかつか図書館に向かっていた。後ろにはがいる。今、何考えてんだろう、こっちに一言もありやしない。なんでこいつここ来てんの? とか思われてるんじゃないだろうか。っていうか思ってるよな。違うし、俺だって、図書館に用あんの。別にに関係ないし。そんな顔をしてつかつか歩く。おお、俺恥ずかしいやつ。
無駄に後ろの視線が気になりながら、いつの間にか図書館についていた。司書のお姉さんは相変わらず美人だなぁ、とニヤリ思わず顔がゆるんでしまった瞬間、からの冷たい視線に気づいた。やばい。
やっぱ、シーナ、最低
一瞬そんな声が聞こえた気がして、ぴたりと体を止まらせた。ぎちぎちと鈍い動きで顔を動かしてみれば、何でもないような平然とした顔で、本棚へと向かっていくの姿がある。それはそれで、ないだろう、もっとさぁ、なんかさぁ、こうさぁ、とか思いつつ、しょうがねぇと俺もの後へと続いた。あ、これ、ストーカーっぽい。あほか。
一瞬、ふと振り返ったは、やっぱり冷めた目をしていて、まるで、なんか、こう、
シーナ、ウザイ
と言われてるような気分になる。無駄にぐさっときた。
もう俺かえろっかな、と思ったけれども、それをしたら何のためにここまでやってきたんだよ、と自分自身に問いかけたくなる。
本を選び終わったは、椅子にすとんと腰かけて、じっと文字を追っていた。そんなこっちの様子なんて知るかコノヤロウという態度に、俺はものすごく疑問に思った。(って俺のこと、どうかんがえてんだろ)
別にどうとも思ってないけど。そんな風に答えるの姿がありありと浮かんできて、うわぁ! と泣きたい気分になった。すげぇリアル。
とりあえず、これ以上嫌われないうちに、帰ろうか、としょんぼり背中を向けたとき、「シーナ」彼女の声が聞こえた。「すわんないの」
「え」と俺はパチクリ瞬きを繰り返した後に、百戦錬磨な自分の感覚にそって、「座る」とすかさず頷いた。俺すげぇ。飄々とした顔をしたふりをして、よいしょとの隣の席に腰掛けて、「何よんでんの?」と無意識ぶってひょいとの手の中の本を覗きこむ。「別に」とどうでもよさげに返事をする彼女に、とりあえず今だけ満足しとこう、とうんと頷いた。
(あー、、やっぱ普通にかわいいよなぁ。惚れた弱みってやつなのかね)
(シーナ近い、近い、シーナ近いから! このイケメンめ!)
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執筆日 2009/08/31